この記事は
山田五郎さんのYoutubeチャンネルである
「山田五郎オトナの教養講座」より、
動画の内容を文字に起こして
解説していくものです。
第6回目のタイトルは
【「夜警」不気味な少女の正体を追え!】
今回はレンブラントの
作品に迫ります。
まだ動画をみてない方は
是非ご覧になって下さい。
文字の方が理解しやすい方は
ぜひ最後までお付き合いください。
「夜警」不気味な少女の正体を追え!
![nightwatch](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2021/07/590px-The_Nightwatch_by_Rembrandt_-_Rijksmuseum-1-300x244.jpg)
オランダの画家、
レンブラント・ファン・レインの
代表作である「夜警」。
いまやオランダでは国宝とされ、
「オランダで1番大事な絵はなんですか?」
と現地の人に質問すれば
この夜警と答えるといわれています。
今回はそんな夜警に描かれている
ある少女に対する疑問です。
![Night-watchman state](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/08/573px-The_Night_Watch_-_HD-1-300x250.jpg)
ある少女とは
作品印部分の人物のことです。
![](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/08/1289px-The_Night_Watch_-_HD-1-151x300.jpg)
この夜警にはもともと
フランス・バニング・コック隊長と
ウィレム・ファン・ライテンブルフ副隊長
の市民隊という題名がありました。
中央左側がコック隊長で、
その右にいるのが副隊長です。
そして2人の周りを囲んでいるのが
火縄銃組合のメンバー達で、
街を見回る自警団的な役割がありました。
この作品は当時のオランダで流行した
集団肖像画とよばれるジャンルの作品です。
(今でいう記念写真のようなもの)
バロック美術とレンブラント
![](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2021/04/shell-1972980_640-1-300x200.jpg)
バロックとはゆがんだ真珠を
意味するポルトガル語です。
山田さんはルネサンスを丸だとすれば、
バロックは楕円だと表現します。
ルネサンスが調和のとれた安定した構図、
つまりは静とするならば
バロックは動きのある対比的な構図、
動であると。
また、バロック美術の
大きな特徴に明暗強調があります。
![Calling of St. Matthew](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2021/04/507px-Michelangelo_Caravaggio_040-1-300x284.jpg)
これはカラヴァッジョが生んだ技法で、
当時大流行したスタイルです。
レンブラントもイタリアに渡り、
カラヴァッジョのスタイルを学んでいます。
ちなみにこの明暗を強調する技法を
専門用語でキアロスクーロといいます。
キアロは光で、スクーロは影という意味です。
![nightwatch](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2021/07/590px-The_Nightwatch_by_Rembrandt_-_Rijksmuseum-1-300x244.jpg)
今作にもキアロスクーロが存分に
使われています。
ところがここで1つ
疑問がでてきます。
キアロスクーロにより
なぜ少女が目立つように
描かれているのでしょうか?
中央の隊長・副隊長に関しては
他のメンバーより身分も高く、
出資額も多いので目立つように
描かれるのは普通のことです。
ところが少女に関しては
肖像画のパトロンでもないでしょうし、
そもそも自警団と一緒にいるのも謎です。
これに関しては当時から
疑問視する声があったといいます。
![](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/08/1289px-The_Night_Watch_-_HD-1-151x300.jpg)
結論を先にいうとこの少女は
実在する人物ではありません。
以前の話と同様、この少女は女神です。
![](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/08/2759px-Nachtwacht-kopie-van-voor-1712-1.jpg)
少女の体には鶏が下げられています。
ここに少女が女神だと
判断するポイントがあります。
実は鶏の爪は火縄銃組合の象徴と
されているからです。
しかし疑問はまだ残ります。
なぜ集団肖像画で実在しない女神に
スポットが当たっているのかということです。
少女に対する考察
![Rembrandt](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2021/07/397px-Self-portrait_at_34_by_Rembrandt_rectangular_detail-1-248x300.jpg)
レンブラントは今作を描いている期間に
最愛の妻を亡くしています。
そこで夜警に描かれている少女は
その妻ではないかといわれています。
![Saskia van Eulenburg](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/08/562px-Portrait_of_Saskia_van_Uylenburgh_by_Rembrandt-1-1-234x300.jpg)
こちらがその妻の肖像画。
たしかに面影があります。
妻のサスキアは裕福な家庭に生まれ、
早くに両親を亡くしたため
多くの遺産を継いでいました。
レンブラントはそんなサスキアと
結婚することで、
以下のものを得たといいます。
- 持参金
→遺産 - 市民権
→アムステルダムの市民権 - セレブ人脈
→サスキアの叔父が有力な画商だった
レンブラントにとってサスキアとの
結婚こそ出世のキッカケでした。
また、レンブラントは
そんなサスキアを溺愛したそうです。
![Saskia as Flora](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/08/568px-Rembrandt_Harmensz._van_Rijn_086-1-237x300.jpg)
こちらはサスキアに
ギリシャ神話の花の女神フローラの
コスプレをさせて描いた肖像画。
山田さんは昔の画家で、
妻にコスプレをさせて描いたものは
ラブラブな証拠と語っています。
理由はこの時代の肖像画は
注文を受けて描くのが普通なのに、
(仕事でもないのに)妻の肖像画を
何枚も描いているからだとか。
![Rembrandt and Saskia as the Prodigal Son](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/08/568px-Rembrandt_-_Rembrandt_and_Saskia_in_the_Scene_of_the_Prodigal_Son_-_Google_Art_Project-1-237x300.jpg)
こちらは夫婦揃っての肖像画です。
まさにイケイケですね。
しかしそんな2人にも
不幸なことがありました。
それは長男、長女、次女と
子どもを授かっても
生後間もなく亡くなったことです。
そして夜警の制作中に次男を出産しますが、
今度はサスキア自身が返らぬ人となります。
そんなこともあり、
レンブラントは作中に
サスキアの面影ある女神を
描いたのではないかと考えられています。
愛する人の面影を託した姿
転落の始まり
![nightwatch](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2021/07/590px-The_Nightwatch_by_Rembrandt_-_Rijksmuseum-1-300x244.jpg)
今作はオランダの宝であると同時に、
レンブラントの人生を転落させる
きっかけとなった作品でもあるのを
ご存知でしょうか?
転落させた理由の1つ目が
「やりすぎた」ことです。
![Banquet of the Citizens of St. George in Haarlem](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2021/07/640px-Frans_Hals_-_Banket_van_de_officieren_van_de_Sint-Joris-Doelen-1-300x158.jpg)
そもそも集団肖像画は描かれる人
全員から出資してもらう作品なので、
身分による目立ち度合いの強弱はあれど
各々の顔ははっきり描くのが普通です。
ところが夜警では
キアロスクーロのやりすぎによって
全く顔が見えない人物がいます。
出資者側からすれば
納得いかないのも無理はありません。
2つ目の理由は赤ん坊を残し、
サスキアが亡くなったことです。
そこでレンブラントは
乳母を雇いますが、
彼はその乳母とデキてしまいます。
これが3つ目の理由です。
しかも彼は別のお手伝いの女性とも
デキてしまい、乳母の方から
婚約不履行で訴えられます。
一連の騒動は裁判に発展し、
レンブラントは敗訴。
多額の慰謝料を支払うことになりました。
そこに追い打ちをかけるかのように
オランダの景気が悪くなり、
仕事自体も減っていきました。
![Rembrandt Huis Museum](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/08/540px-Rembrandthuis_Amsterdam-1-225x300.jpg)
レンブラントはサスキアと共に
ローンで豪邸を建てていたのですが、
そのローンも支払えなくなり差し押さえ、
破産宣告も受け、貧民街へと
引っ越すことになりました。
![nightwatch](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2021/07/590px-The_Nightwatch_by_Rembrandt_-_Rijksmuseum-1-300x244.jpg)
よってまさにこの夜警は
レンブラント絶頂期の作品であり、
転落のはじまりでもあった作品でした。
山田さんは動画終盤、
バロック美術の特徴にふさわしく
画家自身も明暗対比したと語っていました。
最高傑作であり、転落のきっかけ
まとめ
![Rembrandt](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2021/07/397px-Self-portrait_at_34_by_Rembrandt_rectangular_detail-1-248x300.jpg)
✓夜警の制作中に
愛妻のサスキアが亡くなった
✓作中の少女はその妻を
描いたものと考えられている
✓最高傑作であり、
転落のきっかけとなった作品
今回はレンブラントについてのお話でした。
有名な作品でしたが、
知らない背景がたくさん語られていましたね。
次回はモネの作品についてです。
→オランダの国宝
→実在しない
→亡き妻の面影
→絶頂と転落