美術史では1620~1670年頃を
盛期バロック美術と呼んでいます。
この時代のイタリアでは
対抗宗教革命も一段落し(教会の勝利)、
カトリック教の権威を表現する美術が
目立ち始めます。
まずはこの時代の作品の
画像を確認していきましょう。








✓マニエリスム
⇒16世紀半ば~
✓バロック
⇒16世紀末~18世紀初頭
目次
イタリア・バロックの特徴

対抗宗教革命の一環として注力された
海外布教にも成果があがり、
カトリック教では「教会の勝利」を
視覚化するための豪華で装飾的な芸術が
栄え始めます。

初期バロック美術は上画像のような
劇的な構図や明暗強調の際立ちが
特徴的でした。
一方、1620年以降の盛期バロック美術は
2つの大きな流れ(特徴)があります。
それは、
- 絵画、彫刻、建築の融合(総合芸術)へと向かう、ダイナミックで流動感あふれる様式への流れ
- 古典主義へと向かう流れ
の2つです。
それぞれに代表作があるので、
確認していきます。
コルトーナ「神の知の勝利」

まずはピエトロ・ダ・コルトーナ
(1596~1669)の「神の知の勝利」です。
こちらは盛期バロック美術の
ダイナミックで装飾的な特徴をもつ作品で、
ローマのバルベリーニ宮殿の
天井画として描かれました。
クワドラトゥーラを駆使して
天井(建築)と絵画の境界を曖昧にし、
見るものを演劇的空間に誘います。

ボッツォ「聖イグナティウス・デ・ロヨラの栄光」

次はアンドレア・ボッツォ(1642~1709)
が手掛けた聖堂の天井画です。
こちらもコルトーナと同様、
装飾的な総合芸術を特徴とする作品です。
引用:美術覚書
このようなバロック建築特有の、
描かれた対象が建築物の境界を越えて
はるか上空へ続くような視覚的効果を
イリュージョニズムと呼んだりもします。

用語の確認

ここまで紹介したように
バロック美術の特に天井画は、
だまし絵のように2次元のものを
3次元的に見せる描き方が特徴です。
だまし絵のことはトロンプ・ルイユとも
呼ばれ、最近ではトリック・アートと
呼ばれることも増えてきました。

また、建築空間表現で用いられる
だまし絵のことをクアドラトゥーラと
よびます。
更に狭義に、バロック建築(天井画)での
クワドラトゥーラをイリュージョニズムと
表現することもあるので、
興味のある方は覚えておくとよいでしょう。
2次元のものを3次元に思わせたりする
技法のことをだまし絵という
- トロンプルイユ
→だまし絵のこと
(近年はトリック・アート) - クアドラトゥーラ
→特に建築空間での表現法のこと - イリュージョニズム
→狭義にバロック時代の天井画で
用いられた視覚的効果のこと
アンドレア・サッキ「神知の寓意」

こちらはアンドレア・サッキ
(1599~1661)の作品。
古典主義的な様式へと
向かう流れの代表作です。
イリュージョニズム的表現が
抑えられているのがわかるかと
思います。

ベルニーニ「聖女テレサの法悦」

最後は建築×彫刻による総合芸術の
代表的作品です。
ベルニーニ(1598~1680)により
制作されました。
若い頃から彫刻の才能を
発揮していたベルニーニは、
ギリシャ・ヘレニズム時代の彫刻に
興味を示していました。

その関心は大理石に
数多く刻まれたドレイパリーや
皮膚の表現にみられます。
また、建築にも長けていた
ベルニーニは礼拝堂の設計も行い、
見事な建築と彫刻の融合、
神秘的な空間を演出しました。
ちなみに「聖女テレサの法悦」は
カトリック教が特に力を入れた
テーマの1つでもあります。

まとめ

✓1620年以降のイタリア盛期バロックでは大きな2つの芸術的流れがあった
✓1つは絵画、彫刻、建築の融合(総合芸術)へと向かう、ダイナミックで流動感あふれる様式への流れ
⇒コルトーナやベルニーニなど
✓もう1つは古典主義へと向かう流れ
⇒アンドレア・サッキやプッサンなど
次回はスペインでのバロック美術を解説します。
✓ダイナミックで流動感のある様式
✓イリュージョニズム
✓彫刻や建築が融合した総合芸術