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ロココ美術とは?特徴や代表作を解説【西洋美術史㉒】

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記事の要約

18世紀のフランス

装飾的で曲線を多用

繊細で軽快な美術

 

ロココとは装飾用語の
ロカイユに由来するもので、
18世紀にヨーロッパで流行した
室内装飾、絵画、工芸、服装に
至る様式をさします。

17世紀にみられていた
布教を目的とした儀式的で、
国王を称える厳格な古典様式とは違う
軽快かつ優美な貴族趣味の様式です。

まずはこの時代の作品の
画像を確認していきましょう。

Palace of Versailles Pilgrimage to the island of Cythera the_swing prayer before meals

Antoine Watteau
アントワーヌ・ヴァトー
Jean Honoré Fragonard
ジャン・オノレ・フラゴナール
Jean Simeon Chardin
ジャン・シメオン・シャルダン


美術史年表

ロココ美術の背景

 

rococo art

ルイ14世が1715年に亡くなると、
オルレアン公フィリップ2世が
まだ幼いルイ15世の摂政となり、
時代は享楽的な貴族文化へと変化します。

ルイ16世の時代(1774~1792)には
王権と教会の力は後退し始め、
代わりに貴族と新興上流市民による
軽快で自由奔放なロココ様式が好まれました。

 

poet's inspiration
プッサン「詩人の霊感」

ロココが盛んになった理由の1つに
アカデミー内での色彩論争があります。

色彩論争とは、
アカデミーで理想とする画家は

  • 素描のプッサン
  • 色彩のルーベンス

のどちらにするかという論争です。

結果的にこの論争は
色彩派が勝利を収めます。

このことは、それまでとは
違った表現や解釈を受け入れる風潮
生じたことでもありました。

具体的には以下のことが
変わっていきました。

  • 表現方法
    →厳格さは緩み、彩色は豊かに
    →フランドルやヴェネツィア派の
    彩色が取り入れられた
  • 主題の傾向
    →親しみやすく日常的なもの
    →ただし庶民ではなく、貴族の日常

一方で物語画を優位とする
絵画のヒエラルキーは変わりませんでした。

 

アカデミー/アカデミックな美術とは?

ロココ美術の特徴

 

Palace of Versailles
ヴェルサイユ宮殿 鏡の間

ロココの特徴は室内装飾のロカイユが
由来になっていることからも伺えます。

金色に輝く漆喰に連続するアーチ。
曲線の装飾や湾曲する天井などです。

 

Palace of Versailles
ヴェルサイユ宮殿 王妃の寝室

絵画と装飾が融合したロココ様式は
ヨーロッパで熱狂的な流行を生みました。

それまでの古典的様式との違いは
以下のようになります。

  • 古典様式
    →直線や左右対称
    →安定感のある構造
  • ロココ様式
    →曲線や連続アーチ
    →優美で装飾的

 

The Embarrassing Proposal
ヴァトー「困った申し出」1715‐1716年

絵画においては
以下の画家が活躍しました。

  • アントワーヌ=ヴァトー
  • ジャン=オノレ=フラゴナール
  • ジャン=シメオン=シャルダン
  • トマス・ゲインズバラ(イギリス)

順に解説していきます。

アントワーヌ=ヴァトー

 

Pilgrimage to the island of Cythera
「シテール島への巡礼」1717年

初期のロココ絵画を代表する画家が、
アントワーヌ=ヴァトーです。

ヴァトーは「シテール島への巡礼」で
人物たちの優雅な身ぶりと衣装の軽やかさを
表現し、屋外での男女の語らいを描きました。

この作品でヴァトーは
アカデミーへの入会を果たします。
また、ヴァトー入会に際して、
雅宴画がえんがという新しいジャンルが
新設されました。

雅宴画とはヴァトーの作品のような
屋外で談笑する当世風の衣装で着飾った男女の
集いを描いたものです。

 

アントワーヌ・ヴァトー
アントワーヌ・ヴァトー肖像

ジャン=オノレ=フラゴナール

 

ジャン・オノレ・フラゴナール
ジャン・オノレ・フラゴナール自画像

ロココを代表するもう1人の画家が
ジャン=オノレ=フラゴナール
(1732~1806)です。

彼の代表作「ブランコ」は
18世紀フランスの軽薄で非道徳的な
貴族社会を映し出しています。

 

ブランコ
「ブランコ」1767年

この作品ではブランコに乗る貴婦人の
スカートの中を男性が下から覗き込むという
場面が描かれています。

ヴァトーの雅宴画がより
奔放的で官能的に描かれています。

ちなみに右奥に描かれているのは
貴婦人の夫で、
若い男性は愛人だとされています。

今の日本人の感覚からは
理解しがたい作品かもしれませんね。

静物画と風俗画

 

銀のゴブレットとりんご
銀のゴブレットとりんご

18世紀のフランスでは
上流市民の中に
美術愛好家が増えていきました。

バロック時代のオランダでもそうでしたが、
上流市民(=貴族や宗教関係者ではない)が
顧客になってくると、
知識が必要な絵ではなく、静物画や風俗画など
日常生活を映し出したものや、わかりやすい
が求められるようになりました。

フランドル・オランダのバロックを解説

パトロンで振り返る西洋美術史

 

その需要に応えた代表的な画家が
ジャン=シメオン=シャルダン
(1699~1779)です。

彼はフランスの中流家庭の日常を
描き出しました。

 

食前の祈り
「食前の祈り」1740年

画面前景で祈りを唱えている子供は
女の子の格好をしていますが、男の子です。

当時、男児の死亡率が高かったので
魔除けのような意味合いを込めて
男児に女の子の格好をさせることがありました。

 

ジャン・シメオン・シャルダン
ジャン・シメオン・シャルダン自画像

まとめ

 

Pilgrimage to the island of Cythera
まとめ

✓18世紀のフランスでは享楽的な貴族文化が栄えた

✓ヴァトーは新たな絵画のジャンル、雅宴画を生んだ

上流市民層には静物画や風俗画が好まれた

次回は新古典主義の美術を解説します。

 

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