新古典主義が衰退してきた頃、
自然の神秘的な光景などに興味を持ち、
より自由な表現を目指した人々がいました。
これをロマン主義と呼び、
19世紀の芸術の大きな流れと
なっていきます。
まずはこの時代の作品を確認しましょう。







ロマン主義の特徴

新古典主義では理性や合理性が重視され、
明確な輪郭線や対称性、
古代彫刻のような人体表現が特徴でした。
ロマン主義は対照的に
道徳よりも感情表現を重視した作品が
制作されていきます。
簡潔にロマン主義の特徴をいうと、
- 今のことをテーマにする
→フランスのジェリコーやドラクロワ - 多様な風景画
→イギリスやドイツ - 線よりも色彩を重視
→筆のタッチを残して動きを表現
となります。
ここからは国別の特徴を解説していきます。
フランス:テオドール・ジェリコー
フランスのロマン主義は
テオドール・ジェリコーと
ウジェーヌ・ドラクロワに
代表されます。
アングルなどに代表される
新古典主義が幅を利かせるなか、
まずはジェリコーが「メデューズ号の筏」で
フランス画壇に議論を巻き起こしました。

この絵は実際に起こった
フランス海軍の難破事件を描いたもの。
147人が漂流、救出されたのは15人という
国際的スキャンダルとなった事件です。
ジェリコーはこの絵を自主的に制作し、
それが世間の関心をよびました。
死に直面した極限状態を描いたこの作品は、
定式化した新古典主義の美術に
真っ向から対立するものでもありました。

- 生没年
→1791~1824年 - 代表作
→メデューズ号の筏など - なにをした人?
→ロマン主義の先駆者。彼の作品はドラクロワなどに影響を与えた
フランス:ウジェーヌ・ドラクロワ

ジェリコーの影響を受けたドラクロワは
1824年と27年のサロンでアングルと対決、
ロマン主義の画家として名を広めました。
新古典主義は理性で捉えた
線を絶対視するものでした。
それに対してロマン主義は
個人の感覚を直接的に反映する
色彩を重視します。
この美学的対立はフランス画壇を
二分する論争へと発展させました。

ドラクロワが1827年に出品した
「サルダナパールの死」は
模範的な古典様式であるアングルの
「ホメロス礼讃」と比較されました。

結果的にドラクロワは国立美術学校に
入会を許可されるまでになりますが、
新古典主義のアングルは
「私はこの愚かな世紀と決別したい」
と漏らしていたようです。

- 生没年
→1798年~1863年 - 代表作
→民衆を導く自由の女神など - なにをした人?
→19世紀フランス・ロマン主義の代表的画家。「ドラクロワ」は「ドラクロア」とも表記する - その他の記事
イギリス:ウィリアム・ターナー

この時代は市民階級の趣味を背景に、
新しい風景画が各国で発展します。
なかでもイギリスは
多様な風景画の最初の動きが
顕著に見られていました。

ウィリアム・ターナーは
歴史的風景画、地誌的風景画などに
多彩な才能を示した画家です。

後年は発展を遂げる蒸気船や汽車などの
近代風景にも目を向けており、
大気の揺らぎや光のきらめきなど
ときに幻想的な雰囲気を漂わせる
風景画を制作しました。

- 生没年
→1775~1851年 - 代表作
→グレート・ウェスタン鉄道など - なにをした人?
→19世紀のイギリス・ロマン主義を代表する画家
イギリス:ジョン・カンスタブル

19世紀のイギリス風景画家で
ターナー同様に代表的なのが
ジョン・カンスタブルです。

カンスタブルはありのままの
自然に忠実であろうとし、
穏やかな自然と人間の営みが融合した
叙情豊かな風景画を制作しました。

- 生没年
→1776~1837年 - 代表作
→乾草車など - なにをした人?
→19世紀イギリスを代表する風景画家。コンスタブルと表記することもある
ドイツ:フリードリヒ

ドイツでもロマン主義者たちによる
風景画制作が盛んになりましたが、
イギリスとは大きく異なる解釈でした。

カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ
は山上から見下ろした雲海などの
広大な風景を好んで描きました。

さらに彼は自然の中に
超越的なものを見いだし、
静謐な風景世界を創造しました。

- 生没年
→1774~1840年 - 代表作
→氷の海など - なにをした人?
→ドイツ・ロマン主義を代表する画家。宗教的含意をふくむ風景画によって知られている
スペイン:フランシスコ・デ・ゴヤ

啓蒙思想に疑念を向けたロマン主義は
理性だけではとらえきれない
人間の内面にも強い関心を寄せました。
人が持つ不安や恐怖、狂気は
ときにグロテスクな幻想として描かれます。

スペインのゴヤは最晩年、
自身の別荘に14点の壁画を描きました。
「黒い絵」といわれるシリーズは
いちように不吉で醜い主題が
荒々しい筆致で描かれています。

その背景にはスペイン独立戦争などで、
人間にひそむ醜さや愚かさを目にした
ゴヤの主観的な視点が投影されています。

- 生没年
→1746~1828年 - 代表作
→我が子を食らうサトゥルヌスなど - なにをした人?
→スペイン最大の画家と謳われる。宮廷画家として活躍していたが、晩年は黒い絵シリーズを制作した
まとめ

✓ロマン主義は新古典主義と対照的に、
道徳よりも感情表現を重視した
✓イギリスやドイツでは
多様な風景画が流行した
✓理性だけではとらえきれない
人間の内面にも強い関心を寄せた
次回は写実主義の美術を解説します。





















→フランス・ロマン主義
→イギリス:ターナー
→ドイツ:フリードリヒ
→スペイン:ゴヤ