なぜ丸出し?「民衆を導く自由の女神」ドラクロワ/山田五郎オトナの教養講座④

サムネ

 

記事の要約

✓今をテーマにしたロマン主義

✓裸で描くことで実在しないことを説明

✓非実在ヌードの逆転解釈

 

この記事は
山田五郎さんのYoutubeチャンネルである
「山田五郎オトナの教養講座」より、
動画の内容を文字に起こして
解説していくものです。

第4回目のタイトルは
【なぜ丸出し?民衆を導く自由の女神】

今回は世界史の授業などでも
みたことがある、ドラクロワの
有名作品についてです。

まだ動画をみてない方は
是非ご覧になって下さい。

 

 

文字の方が理解しやすい方は
ぜひ最後までお付き合いください。


戦場で丸出しの謎(1:08~)

 

民衆を導く自由の女神
「民衆を導く自由の女神」(1830年)

ドラクロワの代表作である
民衆を導く自由の女神」。

あなたはこの作品は
なにを描いたものか知っていますか?

フランス革命?
いいえ、違います。

フランス革命は1789年に起きた革命です。
一方この作品の制作年は1830年
ですのでこの絵は、フランス7月革命
描いた絵になります。

当時のフランスは革命に次ぐ革命で、
政権が何度も変わるほど激動の時代でした。

1789年のフランス革命では
王政が廃止され、共和政が始まりました。

次にナポレオンが台頭し、
帝政を開始しますが1814年に失脚し、
再びフランスは王政となります。

政権の流れ

王政⇒共和制⇒帝政⇒王政(王政復古)

しかし王政復古で王位についたルイ18世は、
時代錯誤もはなはだしい政治を行ったため、
国民の不満は再び強まりました。

そこで今度は国民によって選出された王、
ルイ・フィリップを王位に就かせようと
巻き起こった革命がフランス7月革命です。

ロマン主義とは?(3:08~)

 

ウジェーヌ・ドラクロワ
ウジェーヌ・ドラクロワ

この作品を描いたドラクロワは
ロマン主義の代表的な画家とされています。

ではロマン主義とはどんな意味
なのでしょうか。

ロマン主義の語源はロマンス語から
きているとされます。

その昔、ヨーロッパでは
公用語としてラテン語が使われていました。

ラテン語

古代ローマで使われていた言語。ヨーロッパで学術・宗教用語として広まった

そのラテン語が各地域で
訛っていったことによって、
現在のイタリア語やフランス語、
スペイン語などに派生したと
いわれています。

そしてロマンス語とは、
ラテン語の訛り言葉そのものをさします。

現在のヨーロッパでは公用語(文語)は
ラテン語が使われており、
口語としてはロマンス語が使われています。

日本でも公文書は漢文で、
ひらがなは和歌などの恋愛を歌う際に
使われたりしますね。

日本でもヨーロッパでも、
恋愛などをえがくときには共通して
口語が使われます。

そこからロマンス語(口語)を使うような
物語をロマンティックとよんだりします。

 

ホラティウス兄弟の誓い
古典的な絵(ダヴィッドの作品)

美術界では、ラテン語(文語)のような
しっかりしたものを古典主義といいます。

古典主義

古代ギリシャ・ローマの文化や芸術を理想とする思想のこと

そしてロマン主義とは、
古典主義に対抗して新しい美術を
目指した運動を意味しました。

ロマン主義の特徴は?

 

次にロマン主義の特徴ですが、
ロマン主義と対局に位置する
新古典主義の作品と比べると
特徴が掴みやすいです。

まずは今回の作品(ロマン主義)↓

民衆を導く自由の女神

次に新古典主義の画家、
アングルの「ホメロス礼賛」↓

ホメロス礼賛

 

2つを比較すると、
決定的に違う部分がいくつか
あります。

まずはテーマです。

新古典主義の作品では
ホメロスというギリシャ時代の詩人を
テーマにしています。

一方のドラクロワの作品は
1830年の7月革命がテーマです。

実はそれまでの西洋絵画で
最近の出来事をテーマにすることは
ほとんどありませんでした。
(肖像画や風景画は除く)

古典主義では歴史画のように
昔のことをテーマにすることが多いので、
最近のことをテーマにしただけでも
ロマン主義は革新的でした。

次に筆のタッチです。

古典主義では筆のタッチを
残さないよう滑らかに仕上げるのが
常識とされていました。

しかしロマン主義では
筆のタッチを残しています。

3番目に構図です。

古典主義の構図は
背景や人物たちが三角形かつ左右対称に
まとまっています。

歴史画や神話画ではこのような
安定してみえる構図を採用するのが
普通でした。

ホメロス礼賛

ところがロマン主義では
そのような安定した構図は
使っていません。

それはロマン主義では、
動きをだすような構図
しているからです。

民衆を導く自由の女神

筆のタッチに関しても
動きを表現するために
あえてタッチを残しています。

まさに、
古典主義の作品がだとすれば
ロマン主義は

ロマン主義がいかに
それまでの西洋絵画の規範となっていた
古典主義と対局にあるかがわかります。

 

ロマン主義の特徴
  1. 今のことをテーマにしている
  2. 筆のタッチを残している
  3. 構図で動きをだしている

ロマン主義のもう1つの特徴(10:08~)

 

実は今回の作品には
ドラクロワ本人が描かれています。

作品左側にいる銃を持った人物です。

民衆を導く自由の女神

勇敢な男性のように描かれていますが、
ドラクロワは革命に参加していません。

つまり盛っているわけです。

実際に起きた今の出来事をテーマに
描くロマン主義ですが、
忠実に事実を描くわけでもありません。

この点もロマン主義の特徴といえます。

そして今回の話のテーマである、
胸を丸出しにしている中央の女性。

この女性こそ実は、
最大に盛っている部分なのです。

丸出しの女性は誰?(10:42~)

 

民衆を導く自由の女神

胸を丸出しにしている女性は
マリアンヌと呼ばれる架空の人物です。

マリアンヌはフランスでは
自由の象徴であり、フランスの象徴
とされています。

自由の女神

アメリカにある自由の女神も
アメリカが独立した際にフランスから
贈呈されたもので、マリアンヌです。

しかし実際の革命を描いた作品で、
架空の女神を描くのはややこしい気もします。

しかし当時の人には
マリアンヌの存在を知らなかったとしても、
丸出しの女性が架空の人物であることが
すぐにわかるポイントがあるのです。

ヌード=架空の人物(12:09~)

 

ヴィーナスの誕生

そのポイントこそ、裸であることです。

西洋絵画ではギリシャ神話のヴィーナスなど、
実在しない人物だから裸で描いてもよいという
暗黙の了解が存在しました。

これを山田さんは
非実在ヌードといいました。

そしてその暗黙の了解は
いつの頃からか逆転をして、
裸で描いているから実在しない人
という解釈に変わります。

 

非実在ヌードの逆転

実在しない人だから裸で描く
ではなく、
裸だから実在しない人

ルーベンスによる作品の例(13:55~)

 

ピーテル・パウル・ルーベンス
ピーテル・パウル・ルーベンス

フランドルの画家、
ルーベンスの作品にも非実在ヌードの
解釈を逆転させた作品があります。

それがこちらの作品です。

摂政マリーの至福
「摂政マリーの至福」

これはマリー・ド・メディシスという
フランス国王の母を描いた作品です。

中央に君臨する女性がマリーですが、
胸が丸出しです。
しかもこの時マリーは存命で、
架空の人物ではありません。

国王の母を胸丸出しで描いて大丈夫なのかと
不安になりますが、ルーベンスはマリーを
女神として讃えるために丸出しにしました。

 

丸出しの理由

女神だと分からせるため

まとめ

 

民衆を導く自由の女神
まとめ

✓ロマン主義の特徴は今の出来事をテーマにしたこと

✓西洋絵画には架空の人物なら裸で描いてよいという暗黙の了解があった

✓裸だから架空の人物であるという逆転の解釈を利用した

今回はロマン主義の特徴と、
非実在ヌードがポイントでした。

ちなみにロマン主義の後には
写実主義の時代が到来し、
「盛って描くこともダメ」という
考え方が広まります。

時代によって変わるのも
西洋絵画の面白いところですね。

次回はミュシャについてです。

 

サムネ