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ヴェネツィア絵画とは?特徴や代表作を解説【西洋美術史⑬】

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記事の要約
  1. ヴェネツィア絵画の特徴
    →北方の影響
    →紙ではなくキャンバス
  2. 中部イタリアとの違い
    →ディセーニョとコロリート
    →色彩による質の描き分けを重視
  3. 大胆な筆致やこすれ
    →感情に訴えかける
    →バロック美術に影響

 

15世紀後半からヴェネツィアには
北方からの油彩画技法が伝えられ、
フィレンツェなどの中部イタリアとは
異なる特徴をもつ絵画が発展しました。

まずはこの時代の作品の
画像を確認していきましょう。

Our Lady of the Ranch storm Venus of Urbino flora Annunciation

Andrea Mantegna
アンドレア・マンテーニャ
Antonello da Messina
アントネット・ダ・メッシーナ
Giovanni Bellini
ジョヴァンニ・ベッリーニ
Giorgione
ジョルジョーネ
Tiziano Vecellio
ティツィアーノ


美術史年表

北方ルネサンス⇒15~16世紀
宗教革命⇒1517年~

マニエリスム⇒16世紀半ば~

ヴェネツィア絵画の形成

 

Venice

12世紀以降からヴェネツィアは
東方貿易を振興しました。

また造船技術を育成することで
海運業に必要な大型船の生産を組織化し、
海上都市国家として富を築きます。

しかし15世紀後半になると
オスマン・トルコと争ったり、
新海路発見に伴って貿易の中心が
大西洋沿岸地域に移動するなどしました。

ヴェネツィアにとって、
15~16世紀は国家の繫栄と衰退の
両方を経験した時期でしたが、
芸術活動は最も輝いた時代でした。

アンドレア・マンテーニャ

 

dead christ
「死せるキリスト」1490年代

まず15世紀後半の北イタリア絵画の
中心的役割を担ったのが、
ヴェネツィア近郊のマントヴァで活躍した
アンドレア・マンテーニャです。

 

St.Sebastian
「聖セバスティアヌス」1480年頃

マントヴァには彫刻家ドナテッロの作った
彫刻が遺されていたことや、
古代遺跡などが豊富にあったことから、
マンテーニャはそこから彫刻のような
人体表現を学んでいきました。

 

Andrea Mantegna
マンテーニャの胸像
マンテーニャ
  • 生きた年代
    →1431~1506年頃
  • 代表作
    →磔刑
    →夫婦の間の装飾など
  • なにをした人?
    →北イタリアのマントヴァで活躍した画家。15世紀後半の北イタリア絵画の中心的役割を担った

アントネット・ダ・メッシーナ

 

Our Lady of the Annunciation
「受胎告知の聖母」1470年代

ヴェネツィア絵画に
大きく貢献したもう1人の画家が
アントネット・ダ・メッシーナです。

 

St. Jerome in His Study
「書斎の聖ヒエロニムス」1460年頃

ナポリでネーデルラント絵画を学んだ
アントネットは1475~1476年に
ヴェネツィアを訪問しており、
油彩画技法を用いた細密描写など
北方様式をヴェネツィアへ伝えました。

北方ルネサンスの特徴や代表作を解説

 

Antonello da Messina
アントネット・ダ・メッシーナ
アントネット
  • 生きた年代
    →1430~1479年
  • 代表作
    →受胎告知の聖母など
  • なにをした人?
    →油彩画技法などの北方様式をヴェネツィアへ伝えた人物

ヴェネツィア絵画の特徴

 

Our Lady of the Ranch
ベッリーニ「牧草地の聖母」1500‐1505年
  • アンドレア・マンテーニャ
  • アントネット・ダ・メッシーナ

この両名の遺産を受け継いで
ヴェネツィア絵画の基礎を築いたのが
ジョヴァンニ・ベッリーニです。

光と色彩の複雑な描写で
情緒溢れる絵画を生み出しました。

そしてこのベッリーニの工房から
輩出されるのが、

  • ジョルジョーネ
  • ティツィアーノ

という2人の天才でした。

ヴェネツィア絵画は↑の2名によって
大きな進展を遂げたといっても
過言ではありません。

 

Giovanni Bellini
ベッリーニの胸像
ベッリーニ
  • 生きた年代
    →1430~1516年
  • 代表作
    →牧場の聖母など
  • なにをした人?
    →ヴェネツィア派の第1世代。ジョルジョーネやティツィアーノを輩出した巨匠

ジョルジョーネ

 

storm
「嵐」1508年頃

ジョルジョーネは師である
ベッリーニの様式に加えて、
ダヴィンチが考案した
スフマートや明暗法を取り入れ、
感情表現や大気の奥深さを巧みに描きました。

また「嵐」という作品のように、
今まで背景に過ぎなかった風景を
画面全体に表現し、
風景と人物どちらが主役なのか
はっきりしない作品も生み出しました。

微妙な明暗により深い詩情のある風景は
風景画の先駆ともみられています。

 

Giorgione
ジョルジョーネ
ジョルジョーネ
  • 生きた年代
    →1477~1510年
  • 代表作
    →眠れるヴィーナス
    →嵐(テンペスタ)など
  • なにをした人?
    →風景と人物が一体となった絵画を描いた最初の画家。詩的な作風が多い。

ティツィアーノ・ヴェチェッリオ

 

Venus of Urbino
「ウルビーノのヴィーナス」1538年頃

ジョルジョーネの後輩にあたる
ティツィアーノ・ヴェチェッリオ

ジョルジョーネが描いた裸婦画をもとに、
「ウルビーノのヴィーナス」
生み出しました。

 

sleeping venus
ジョルジョーネ「眠れるヴィーナス」

その他にもいくつか
全裸の女性の横臥像おうがぞうの絵は制作され、
裕福な貴族に買い求められました。

油彩のやわらかな筆致を重ねて肌を描き、
まるで血の通ったような皮膚の質感を
表現しました。

 

Tiziano Vecellio
ティツィアーノ
ティツィアーノ
  • 生きた年代
    →1490~1576年
  • 代表作
    →ウルビーノのヴィーナス
    →受胎告知など
  • なにをした人?
    →ヴェネツィア派で最も重要な画家。筆使いと色彩感覚に特徴があり、次世代以降の西洋絵画にも大きな影響を与えた

ディセーニョとコロリート

 

flora
「フローラ」1515年頃

ヴェネツィアでは、
フィレンツェやローマのように
彩色の前に素描を行わず、
いきなり描き始めることがありました。

これは紙の代わりに用いられ始めた
キャンバスの研究が行われていたことも
関係しています。

 

中部イタリアでは、
ディセーニョ線素描によって対象の形を
把握することを重視していました。

一方のヴェネツィアでは
色彩を駆使しての対象の質を
描き分けることを重視しました。

こうした色彩方法を専門用語で
コロリートといいます。

つまりヴェネツィア絵画の
黄金時代が確立された背景には
コロリートの発展があり、
ティツィアーノの存在があったのです。

 

  • フィレンツェやローマ
    →ディセーニョを重視
    →その道の巨匠はミケランジェロ
  • ヴェネツィア
    →コロリートを重視
    →その道の巨匠はティツィアーノ

受胎告知

 

Annunciation
「受胎告知」1564年頃

↑はティツィアーノの「受胎告知」です。

彼はそれまでの受胎告知とは違い、
聖霊のハトを劇的に描いたり、
明確な輪郭線ではなく複雑な筆致や
絵具のこすれで表現しました。

このような表現は見る者の感情に
強く訴えかけるものとして、
宗教革命の気運と合致して受け入れられ、
グイド・レーニなどバロックの画家に
影響を与えました。

 

受胎告知とは?【基本を解説】

まとめ

 

Venus of Urbino
まとめ

✓北方の影響を受けて発展した
ヴェネツィア美術

✓色彩によって質感を描き分ける
コロリートが重視され、発展した

✓感情に訴えかける筆致や色は
後のバロックにも影響を与えた

次回は北方ルネサンスを解説します。

 

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