北方ルネサンスはアルプスより北にある
ヨーロッパで巻き起こった芸術運動です。
ルネサンスと名前がついていますが、
イタリアのそれとは全く異なります。
まずは作品の
画像を確認していきましょう。










✓15世紀(初期ネーデルラント派)
⇒ファン・エイク、パティニールetc…
✓15世紀(ドイツ)
⇒アルブレヒト・デューラーetc…
✓15世紀末~16世紀
⇒ボス、ブリューゲル(父)etc…
目次
北方ルネサンス美術の特徴

ネーデルラントやフランス、ドイツ語圏の
国々で起こった15~16世紀の芸術運動を
北方ルネサンスと呼んでいます。

ネーデルラントとは今でいう
オランダやベルギーのある地域のことです。
この場所はかつてのゲルマン民族が
住んでいた場所でもあります。
イタリアのルネサンスは古代文化の復興を
意味していましたが、北方での復興的活動は
あまりありませんでした。
そこでルネサンスという言葉で
一括りにできないと判断されたことで、
北方ルネサンスという別の表現を
使うようになったそうです。
北方ルネサンスの大まかな特徴は
以下のようになります。
- 写実的
- 油彩画による細密描写
- 宗教的な主題をより身近に
⇒世界風景(後述)
ではここから代表的な作品と共に
詳しくみていきましょう。
クラウス・スリューテル

クラウス・スリューテル(1350~1405)
はオランダの彫刻家です。
彼の彫刻は量感を備え、
立体的なドレイパリー、表情に個別性が
あるなどの写実性が確認できます。
この写実的なこだわりがその後の
ネーデルラント芸術の基盤となっていきます。
ロベルト・カンピン

初期ネーデルラント派の
ロベルト・カンピン(1375~1444)は
スリューテルのような現実世界に
基づいた表現や量感のある人体を描きました。
初期ネーデルラント派とは、
15~16世紀にかけてネーデルラントで
活躍した画家や作品群のことをさします。
カンピンの写実的で細密な描写は
ヤン・ファン・エイクにも継承されます。
ヤン・ファン・エイク

ヤン・ファン・エイク(1390~1441)は
油彩画技法を完成させた人物として有名です。
油彩画技法とは顔料を油で溶かした絵具で
描く方法のことで、ぼかしや重ね塗り、絵具を
混ぜ合わせることもできました。
後にヴェネツィアにも伝わり、
多大な影響を与えた技法です。

こちらの作品はファン・エイクの代表作です。
彼の卓越した技術がみてとれます。
中央にある鏡に施された細密描写は圧巻です。

ヒエロニムス・ボス

宗教的な主題に幻想的で謎めいた表現を
組み合わせた作品を作ったのが
ヒエロニムス・ボス(1450~1516)です。
この画家の最も優れた作品の1つが
三連祭壇画です。

まず外翼には旧約聖書の「創世記」が
描かれています。
左上に神様が描かれており、
大地に海、植物が描かれているので
天地創造3日目の場面だと思われます。
そしてこの扉を開くと、

左からエデンの園、快楽の園、地獄の
場面が描かれた作品が現れます。
この作品には謎めいた行為や動植物が
多数描かれています。
現在でもそれらの意味のほとんどが不明です。
とはいえボスもまた、ネーデルラントの
写実主義的な絵画の流れに属しています。
ちなみにボスは
イタリアのレオナルド・ダ・ヴィンチと
同時代の画家です。
ヨアヒム・パティニール

ベルギーの画家、
ヨアヒム・パティニール(1470~1524)は
世界風景と呼ばれる作品を描いたことで
有名です。
世界風景とは空から見下ろしたように広大な
風景を描いた絵のことで、パティニールは
その中に宗教的なモチーフを描くことで
宗教をより身近なものに感じさせました。

こちらはパティニールの別の作品。
ギリシャ神話が題材です。
この作品でもパノラマ的な風景が
際立っています。
パティニールは
北方ルネサンス風景絵画の先駆者とも
いわれています。

ピーテル・ブリューゲル

16世紀後半には
ピーテル・ブリューゲル
(父:1525~1569)が
風景画と風俗画の要素を掛け合わせた
絵画を生み出しました。
彼の作品にも先程の
世界風景の要素を感じます。

ブリューゲルはこちらの作品でも有名です。
この作品でも北方ルネサンスの特徴である
細密描写とパノラマ的な風景が
掛け合わさっています。

まとめ

✓ファン・エイクが油彩画技法を完成させた
✓パティニールは北方ルネサンス風景絵画の先駆者といわれている
✓北方ルネサンスは細密描写やパノラマ的風景画が特徴
次回はドイツのルネサンスを解説します。
✓イタリアとは異なる様式
✓細かな描写
✓パノラマ的な風景