初期キリスト教美術とは?特徴や代表作を解説【西洋美術史④】

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記事の要約
  1. 迫害を受けたキリスト教
    →皇帝を認められないから
    →羊や魚など間接的に絵を描いた
  2. 313年キリスト教公認
    →聖堂建築が盛んに
    →バシリカ式や集中式

 

初期キリスト教美術は
ローマ帝国が発展していく中で
密かに生まれました。

この頃の美術は残っている作品が
とても少ないことでも知られています。

原因は以下の通り↓

  1. 迫害を受けていたから
  2. 信者の大半が貧困層だったから
  3. 偶像崇拝思想が強かったから

ですが313年にキリスト教が
ローマ帝国で認められると
迫害されることが減って、
聖堂建築が盛んになり、
美術作例が増えていきました。

まずはこの時代の作品の
画像を確認していきましょう。

the Good Shepherd sheep blessing bread symbol of jesus basilica Basilica di Santa Pudenziana


美術史年表

ローマ美術⇒B.C.27年~

初期キリスト美術⇒2世紀末~
ローマ帝国東西分裂⇒395年
ローマ東西の美術が確立しだす
⇒5世紀末頃

ビザンティン美術⇒5世紀末~



初期キリスト教美術の特徴

 

地下墓地

ローマ帝国は皇帝を崇拝する国家でした。

一方、帝国内で発生したキリスト教は
キリストこそが神であり、
皇帝を崇拝することができません。

加えて人種など関係なく
誰でも信者になれることから、
ローマ政府はキリスト教を
不安因子と見なします。

そうしてキリスト教は帝国から
迫害を受けることになりました。

そのため教徒達はカタコンベに
弾圧者たちの目をごまかすため、
間接的に絵を描きました。

 

善き羊飼い
「善き羊飼い」3世紀後半

↑の「善き羊飼い」は
カタコンベ地下墓所によく描かれたもので、
羊の信徒を導く羊飼いとしての
キリストと解釈されます。

 

sheep blessing bread
「パンを祝福する羊」4世紀後半

↑の作品では羊=キリストとして
描かれています。

しかしなぜキリストを人の姿ではなく、
羊や羊飼いとして表現したかですが、
以下の理由があげられます。

  1. 直接的な表現は偶像崇拝にあたる
    偶像崇拝とは?
  2. 「私は善き羊飼いである」という
    キリストの記述が聖書内にある

 

symbol of jesus

他にもキリストを魚として
描くこともありました。

  • イエス
  • キリスト
  • 神の
  • 救世主

という5つの頭文字をとると
ギリシャ語でイクトゥス(魚)
意味する言葉になることが理由です。

キリスト教公認

 

Constantine I
コンスタンティヌス1世の頭像

313年、皇帝コンスタンティヌス1世
キリスト教を公認します。
信者たちを弾圧するより仲間にした方が、
国が強くなると考えたからでした。

当時最大の統治国家である
ローマで公認されたことは、
宗教をヨーロッパ全土に
布教できた大きな要因です。

ちなみにこの頃の肖像彫刻は、
威厳や偉大さを表現するために
デフォルメされているのが特徴です。

↑の頭像では勇敢さを表現するため、
目が大きくデフォルメされています。

 

公認後のキリスト美術

公認後は迫害が減り、暗号化された絵も描かれなくなりました

聖堂建築

 

Basilica of Santa Costanza
サンタ・コスタンツァ聖堂

キリスト教が公認されると
聖堂建築が盛んになります。

最初期の聖堂建築は多くの信徒が
集まる典礼の場所として、
古代ローマの集会施設として用いられた
バシリカ式プランが採用されました。

 

basilica-construction
バシリカ式プラン
basilica
バシリカ式内観例

バシリカ式プランとは↑のような
3廊で長堂式の建築様式を指します。

 

一方、皇族の墓廟や洗礼堂には
集中式プランが使われました。

 

central-building-construction
集中式プラン
central-building
集中式内観例

集中式プランとは↑のような
円形や多角形を基本とする様式をさします。

アプシス

 

赤枠部分がアプシス

キリスト教聖堂で最も重要な主題が
描かれる場がアプシスです。

 

Basilica di Santa Pudenziana
サンタ・プデンツィアーナ聖堂のアプシス

サンタ・プデンツィアーナ聖堂の
アプシスは現存する最古のアプシス装飾です。
中央で金色の衣を着たキリストが、
右手で祝福のポーズをとっています。

ドーム

 

「正教派洗礼堂ドーム装飾」450-460年

↑はイタリアラヴェンナにある
集中式聖堂ドーム部分の装飾です。
キリストがヨハネから洗礼を受ける場面が
描かれています。

受洗者は頭上のキリストと同じように
水中に身体を沈めて俗世の生を捨て、
キリスト教徒となります。

まさに洗礼という再生と復活の
儀式に対応した装飾です。

まとめ

 

the Good Shepherd
まとめ

✓キリスト教は皇帝を崇拝できない
宗教だったため、迫害を受けていた

✓迫害を受けていた時期は、
羊や魚など間接的にキリストを描いた

✓キリスト教が公認されると
聖堂建築が盛んになった

次回はビザンティン美術を解説します。



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