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キュビスムと未来派の特徴や代表作を解説【西洋美術史㉛】

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記事の要約

さまざまな視点を1つに組み合わせる

✓新しい表現は様々なものに応用された

✓近代の速さや重さを表現した未来派

 

20世紀を代表する革新的な芸術運動に
キュビスムがあります。

キュビスムの特徴は、
1つの絵画作品の中にいくつもの視点から
とらえた空間のようすを描いたことです。

また、キュビスム誕生の後には
未来派とよばれる前衛芸術運動も
始まりました。

まずはこの時代の代表作の
画像を確認していきましょう。

アビニヨンの娘たち レスタックの家 パリの街 戦闘中の装甲列車 空間における連続性の唯一の形態

パブロ・ピカソ
パブロ・ピカソ
ジョルジュ・ブラック
ジョルジュ・ブラック
ロベール・ドローネー
ロベール・ドローネー
ウンベルト・ボッチョーニ
ウンベルト・ボッチョーニ


美術史年表

キュビスム
⇒1907~
未来派
⇒1909~1924年頃
抽象美術
⇒1910年頃~

キュビスムの特徴

 

マ・ジョリ
ピカソ「マ・ジョリ」1911‐1912年

ある対象を取り巻く空間のようすを
さまざまな角度から見て、それを1つの
画面にまとめながら描く。

それがキュビスムの特徴ですが、
それは「写実」を目指すルネサンス以降の
伝統的絵画とは根本から異なりました。

しかし、私たちが普段見ている空間は
全て3次元的であり、それを正確に
把握しようとするキュビスムは
必ずしも「写実的ではない」とは
言い切れないかもしれません。

パブロ・ピカソ

 

パブロ・ピカソ
パブロ・ピカソ

この方法を始めたのは当時パリにいた
若い画家たちでした。

とくに1907年に制作された
パブロ・ピカソ(1881~1973)の
「アヴィニョンの娘たち」は重要です。

 

アビニヨンの娘たち
「アヴィニョンの娘たち」1907年

この作品はキュビスム初期の頃の
作品ですが、ピカソがキュビスムの
初期段階に入っていったのには
あるキッカケがあったといわれています。

以下の2つです↓

  1. プリミティブな美術との出会い
  2. セザンヌの影響

 

飢えたライオン
ルソー「飢えたライオン」1905年

プリミティブとは「原始的」や
「非西洋的」といった意味合いがあります。

それまでの西洋の伝統が
「写実」や「自然の模倣」だとすれば、
アフリカやオセアニアで制作された美術には
それらへのこだわり・制限といったものが
全くなく、逆にそれがヨーロッパ圏の
芸術家たちの大きな刺激となったのでした。

 

二人の裸婦
「二人の裸婦」1906年

ピカソもそんなプリミティブな美術に
注目した人物の1人です。

アヴィニョンの娘たちと前後して、
ピカソは数多くの人体や頭部を
プリミティブな美術からの影響を受けて
描いていたことがわかっています。

 

リンゴとオレンジのある静物
セザンヌ「リンゴとオレンジのある静物」

2つ目はセザンヌからの影響です。

ポスト印象派の1人とされている
ポール・セザンヌは複数の視点から
見たものを1つの画面に描いた作品を
残しています。

そうした経緯を経てピカソは
アヴィニョンの娘たちを完成させますが
当時その作品を評価する仲間はほとんど
いませんでした。

 

セザンヌのリンゴはなぜ落ちない?

ジョルジュ・ブラック

 

ジョルジュ・ブラック
ジョルジュ・ブラック

キュビスムの誕生に関わる
もう1人の画家は
ジョルジュ・ブラック(1882~1963)です。

ブラックもピカソのアヴィニョンの娘たちを
見ることができた画家仲間でしたが、
彼はピカソのその意義をすぐには
理解できずとも、斬新な方法に衝撃を
受けていました。

 

レスタックの家
「レスタックの家」1908年

その後、南フランスのレスタックに赴いた
ブラックは一連の風景画を描きます。

これらの作品はパリで発表されますが、
批評家の1人に「風景や家をキューブに
してしまっている」と批判されます。

このことがキュビスムという名がついた
発端といわれています。

ロベール・ドローネー

 

ロベール・ドローネー
ロベール・ドローネー

ピカソ、ブラックによって始まった
キュビスムに衝撃を受けて、
その方法を応用した人物が
ロベール・ドローネー(1885~1941)です。

先の2人が人物や郊外の風景、静物に興味を
示したのに対し、ドローネーはパリの風景を
テーマに選びました。

 

パリの街
「パリの街」1910‐1912年

高層な建築が並ぶ街を
人々が速度を上げて行き交う。

ドローネーはそんな20世紀初頭に
現れた風景を、時間や視点を組み替えて
描くキュビスムにうってつけだと
感じたのでした。

 

エッフェル塔
「エッフェル塔」1911年

未来派の美術

 

車の力強さ
ルッソロ「車の力強さ」1912‐1913年

20世紀初頭の急速に変化していく
都市・社会のなかで野心的な芸術運動が
イタリアで生まれました。

1909年に詩人マリネッティによって
発表された未来派宣言により
誕生したのが未来派です。

未来派のテーマは過去の芸術の徹底的破壊
機械化により実現された近代社会の速さです。

それらを彼らはキュビスムを応用した方法で
作品化しました。

 

戦闘中の装甲列車
セヴェリーニ「戦闘中の装甲列車」1915年
空間における連続性の唯一の形態
ボッチョーニ「空間における連続性の唯一の形態」1913年

未来派宣言の中には彼らの芸術運動の
主旨をよく示している言葉があります。

「機械掃射のなかを疾走する自動車は、
サモトラケのニケより美しい」

そして未来派宣言の5年後、
第一次世界大戦が勃発。

機械掃射は現実の風景となるのです。

 

ウンベルト・ボッチョーニ
ウンベルト・ボッチョーニ

まとめ

 

アビニヨンの娘たち
まとめ

さまざまな視点を組み合わせて描くのがキュビスム

ピカソ、ブラックから始まり様々な表現に応用された

✓未来派のテーマは過去の芸術の破壊、機械化された近代社会の速さ

次回は抽象絵画を解説します。

 

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