フランス・バロック美術の特徴は
厳格な古典主義です。
フランスはカトリック国家ですが、
王政の中で厳格な古典主義が
推し進められたので、
イタリアでのバロック美術とは
異なった傾向を示しました。
まずはこの時代の作品の
画像を確認していきましょう。







✓マニエリスム
⇒16世紀半ば~
✓バロック
⇒16世紀末~18世紀初頭
フランス・バロックの特徴

17世紀のフランスでは絶対王政が整備され、
そのなかで美術の国民的様式が生まれました。
カラヴァッジョなどの影響を受けた
作品もありますが、
宮廷的雰囲気が強かったので
その影響は地方に限られています。
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール

イタリアのカラヴァッジョのような
明暗対比で作品を描いたのが
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール
(1593~1652)です。
しかしカラヴァッジョの明暗対比が
インパクトのあるものだったのに対し、
ラ・トゥールの明暗対比は静寂で
神秘的な雰囲気を醸し出しています。

ラ・トゥールは夜の画家とも呼ばれ、
内省的で禁欲的精神を描くために
明暗対比を用いられたとされています。
シモン・ヴーエ「富の寓意」

17世紀前半のパリでは
シモン・ヴーエ(1590~1649)
が活躍しました。
ヴーエは1614年にローマへ行き、
カラヴァッジョやカラッチから
イタリア・バロック美術を学び帰国しました。
その後ヴーエはルイ13世の首席画家として
王宮の装飾や教会の作品を制作しました。
「富の寓意」は女性の寓意像「富」を
鮮やかな色彩で表現しています。

ニコラ・プッサン

ニコラ・プッサン(1594~1665)は
イタリアの古典主義に貢献した画家ですが、
出身はフランスです。
プッサンは1624年から亡くなるまで
ローマで活躍しましたが、
1640~1642年の間だけパリへ戻り、
「アルカディアの牧人たち」を制作します。
プッサンの一時帰国は
フランスの古典主義に大きな影響を与えました。

「ソロモンの審判」

プッサンは生涯にわたり聖書や神話画、
物語画を描きました。
古典美術やルネサンスの巨匠たちを規範とし、
構図とディセーニョ(線素描)を
重視する制作を行いました。
「ソロモンの審判」では左右対称の構図に
正確な線描と明快な色彩表現を使い、
古典主義的理想美の世界を描き上げました。
プッサンの高い技術と
学識に裏打ちされた作品は、
後に登場する王立絵画彫刻アカデミーの
規範とされました。
クロード・ロランの風景画

クロード・ロラン(1600年代~1682年)は
プッサン同様、フランス出身のローマで
活躍した画家で、生涯にわたり
風景画を描き続けました。

彼の風景画はカラッチ一族のような
理想的風景画を継承しており、
後のウィリアム・ターナーなど、
近代風景画に影響を与えました。
まとめ

✓絶対王政下のフランスでは厳格な古典主義が求められた
✓フランス出身のニコラ・プッサンの作風はアカデミーの規範とされた
✓クロード・ロランは理想化された風景画を描き続けた
次回はフランドル・オランダでのバロック美術を解説します。
✓王政の中での厳格な古典主義
✓プッサンの古典的絵画
✓クロード・ロランの風景画