ネーデルラント地方は、
17世紀初頭に南北に分裂しました。
南部はスペイン支配下のフランドル。
北部はプロテスタント国のオランダです。
フランドルでは宗教画や祭壇画が求められ、
オランダでは市民層に好まれた
身近なテーマの絵画が描かれます。
まずはこの時代の作品の
画像を確認していきましょう。









✓マニエリスム
⇒16世紀半ば~
✓バロック
⇒16世紀末~18世紀初頭
フランドル・バロックの特徴

フランドルはスペイン支配下にあり、
プロテスタントによる聖像破壊運動後に
再興を進めるための祭壇画などが多く
注文されました。
この国で押さえておきたい画家は
ピーテル・パウル・ルーベンス
(1577~1640)です。

ルーベンスはイタリアでカラヴァッジョ、
古代彫刻、ミケランジェロなどの作品を
学んでおり、彼の作品からはそれらの
造形表現の影響がうかがえます。

登場人物が螺旋を描く
ダイナミックな構図は、
対抗宗教革命が求めた
信者の感情に訴えかける情動的な
ものでした。
彼の作品は人々をカトリックの信仰に
導く大きな役割を果たしました。
ギャラリー画

17世紀の富裕層たちは、
競って珍奇な美術品などを収集
しました。
そこに新たなジャンルとして
誕生したのがギャラリー画です。
画像の作品は美術品の収集室の
様子を描いたもので、
このジャンルの代表作の1つです。
ちなみにこの作中に描かれた
美術品には既に失われているものもあり、
歴史資料としても重要です。
専門画家の誕生

17世紀のフランドルでは
風景や動物、花などを
専門に描く画家が登場します。
大きな工房を経営していた
ルーベンスは専門画家を
大量に雇って効率的に制作にあたり、
時には専門画家同士の
共同作品も生まれました。
画像のような花の絵は花卉画と呼ばれ、
高価で入手困難な花を描くことで
その姿を保存しました。
オランダ・バロックの特徴

17世紀初頭に独立したオランダは
プロテスタントの国でした。
それにより宗教画の礼拝は禁止されましたが、
市民の現実感覚を反映した美術が
人気を博しました。
風俗画や静物画、肖像画などです。
この国で押さえておきたい画家は
ヨハネス・フェルメール(1632‐1675)と、
レンブラント・ファン・レイン
(1606‐1669)です。


オランダ絵画では必ずしも
教養人を相手にするとは限らないので、
身近なテーマや見ためのわかりやすさ
が重視されました。

上はフェルメールの有名な作品。
フェルメールは上流市民層を
描いた作品が多いことで有名です。
集団肖像画
富を築いて成功した市民たちにとって、
肖像画を描いてもらうことは一種の
ステータスにもなりました。
オランダでは個人の肖像画だけでなく
公的な集団肖像画も多く制作され、
主に市民隊や団体、理事・評議会の人物たち
が描かれました。

画像はフランス・ハンスが
制作したもので、
1人だけ遅れてきた団員をみんなが
迎えるという演出が施されています。
また、レンブラントの代表作「夜警」も
集団肖像画です。

彼の作品は光と影の演出が際立ち、
肖像画というより物語画のような
印象を受けます。
まとめ

✓ネーデルラント地方は17世紀初頭に南北に分裂
✓南部フランドルではカトリックの求めるダイナミックな宗教画やギャラリー画が人気だった
✓北部オランダでは風俗画や風景画、肖像画が多く制作された
次回はロココ美術を解説します。
✓フランドルとオランダ
✓カトリックとプロテスタント
✓宗教画と身近なテーマの絵画