スペイン・バロックの代表作や特徴を解説【西洋美術史⑲】

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記事の要約
  1. スペイン・バロックの背景
    →エル・グレコ
  2. スペイン・バロックの特徴
    →対抗宗教革命に合致する宗教画
    →宮廷美術
  3. セビーリャ派
    →親しみやすく甘美な宗教画
    →ムリーリョが活躍

 

バロック時代のスペインは
イタリアのバロック様式を踏襲しつつ、
甘美な宗教画や宮廷美術が
発展した
ことが特徴的です。

まずはこの時代の作品の
画像を確認していきましょう。

Vision of St. John Christ embracing Saint Bernard Saint Francis Kneeling and Praying Immaculate Conception the end of world glory Las Meninas venus in the mirror

El Greco
エル・グレコ
Francisco Ribalta
フランシスコ・リバルタ
Francisco de Zurbarán
フランシスコ・デ・スルバラン
Bartolome Esteban Murillo
バルトロメ・エステバン・ムリーリョ
Juan de Valdes Real
ファン・デ・バルデス・レアル
Diego Velazquez
ディエゴ・ベラスケス


美術史年表

初期バロック⇒1590年代~1620年代

盛期バロック⇒1620~1670年代
・スペイン・バロック
フランス・バロック
フランドル/オランダ・バロック



スペイン・バロックの背景

 

スペイン

16世紀後半のスペインは事実上、
イタリアを支配する強国でした。

いち早く海外進出を遂げたスペインは
太陽の沈まぬ帝国としてヨーロッパの
政治と経済の中枢を占めていました。

また、ハプスブルク家に統合されて
厳格なカトリックの国でもあったスペインは
対抗宗教革命を推進しました。

よってこの時代のスペイン美術は、

  • 対抗宗教革命に合致した宗教画
  • ハプスブルク家に代表される宮廷美術

の2つの方面で発展を遂げていきます。

 

Annunciation
エル・グレコ「受胎告知」1596‐1600年

また、スペイン美術に貢献した人物として
エル・グレコが有名です。

ギリシャ出身のグレコは
イタリアに10年ほど滞在し、
ヴェネツィア派やミケランジェロ、
マニエリスムの作品から多くを学びます。

 

Vision of St. John
「聖ヨハネの幻視」1608‐1614年

その後スペインに渡ったグレコは
カトリックの総本山であるトレドで
宗教関係者や知識人の支持を得て、
神秘的な宗教画を多数手掛けました。

このことは、
ルネサンスの影響をあまり受けず、
美術発展に乏しかったスペインに
大きな発展をもたらしました。

 

El Greco
エル・グレコ
エル・グレコ
  • 生きた年代
    →1541~1614年
  • 代表作
    →受胎告知
    →ラオコーンなど
  • なにをした人?
    →イタリア美術を学んだ後にスペインに渡り、スペインの美術発展に貢献した画家。

スペイン・バロックの特徴

 

Last Supper
リバルタ「最後の晩餐」1604年

スペイン・バロックの
大きな特徴は以下の通りです↓

  • 明暗の強い宗教画
    →カラヴァッジョの影響
  • セビーリャ派の宗教画
  • ヴァニタス画
  • 宮廷美術
    →王の画家ベラスケス

スペインでは17世紀に入ると
バレンシア、セビーリャなど
文化の違う諸都市で美術が展開され、
各々の地で活躍した画家を
バレンシア派やセビーリャ派と呼んでいます。

ではここから、
代表的な作品や画家を解説していきます。

フランシスコ・リバルタ

 

Christ embracing Saint Bernard
「聖ベルナルドゥスを抱擁するキリスト」1625‐1627年

スペイン・バロックの出発点は
カラヴァッジョが完成させた明暗法です。

フランシスコ・リバルタ
そんな明暗法をスペインで確立した
最初期の1人です。

イタリアでのバロック様式を
スペインで広めた人物ともいえます。

 

Francisco Ribalta
リバルタの像
フランシスコ・リバルタ
  • 生きた年代
    →1565~1628年
  • 代表作
    →聖ベルナルドゥスを抱擁するキリストなど
  • なにをした人?
    →カラヴァッジョの明暗法をスペインで確立、広めた画家

フランシスコ・デ・スルバラン

 

Saint Francis Kneeling and Praying
「ひざまずいて祈る聖フランチェスコ」1639年

フランシスコ・デ・スルバラン
修道士の像の画家として名をあげ、
多くの聖人や修道士の肖像画を
手掛けた画家です。

カラヴァッジョのような
明暗法からなる作品が多く、
スペインのカラヴァッジョとも
呼ばれることもありますが、
構図としては厳格で静的なのが特徴です。

 

Francisco de Zurbarán
スルバランのレリーフ
フランシスコ・デ・スルバラン
  • 生きた年代
    →1598~1664年
  • 代表作
    →ひざまずいて祈る聖フランチェスコなど
  • なにをした人?
    →スペインのカラヴァッジョとも呼ばれるスペイン・バロック期の画家。優れた宗教画や静物画を手掛けた

バルトロメ・エステバン・ムリーリョ

 

Annunciation
「受胎告知」1655‐1660年

スルバランの次世代、17世紀半ば頃から
セビーリャで活躍したのが
バルトロメ・エステバン・ムリーリョです。

ムリーリョもカラヴァッジョのような
明暗法が目立つ作品から出発しますが、
徐々に親しみやすく甘美な宗教画を
多く手掛けるようになります。

 

Immaculate Conception
「無原罪の御宿り」1678年頃

またムリーリョの大きな功績は、
マリア信仰の強かったスペインで
↑のような「無原罪の御宿り」の
図像を完成させたことです。

その背景にはスペイン経済の衰退や
ペストなどの感染症があり、
悲惨な社会状況の中で民衆が求めたのは、
厳格で教義に忠実な宗教画ではなく、
癒しを与えてくれる慈愛の表現でした。

一方ムリーリョの作品が支持を得だすと
スルバランのような厳格な宗教画は
時代遅れのようになり、
徐々に衰退していきました。

 

Bartolome Esteban Murillo
バルトロメ・エステバン・ムリーリョ
ムリーリョ
  • 生きた年代
    →1617~1682年
  • 代表作
    →無原罪の御宿りなど
  • なにをした人?
    →17世紀スペイン黄金時代を代表するセビーリャ派の画家。

ファン・デ・バルデス・レアル

 

the end of world glory
「世の栄光の終り」1671年頃

セビーリャには貧しい病人たちが
介護される聖堂がありました。

そこには
ファン・デ・バルデス・レアル
ヴァニタス画あります。

ヴァニタス画とは現世の富や名誉の
はかなさを示した絵のことで、
レアルの作品は徹底した
リアリズムで描かれています。

こうした作品には病に苦しむ人々を
慰め、励ます役割がありました。

 

Juan de Valdes Real
ファン・デ・バルデス・レアル
レアル
  • 生きた年代
    →1622~1690年
  • 代表作
    →世の栄光の終りなど
  • なにをした人?
    →セビーリャ派の画家でヴァニタス画が有名。

ディエゴ・ベラスケス

 

old woman cooking eggs
「卵を調理する老女」1618年

首都マドリードでは宮廷美術が発展し、
セビーリャ出身のディエゴ・ベラスケス
宮廷画家として活躍しました。

イタリアに滞在経験のあるベラスケスは、
古典的な構想や空気遠近法、色彩などを学び
帰国後にマドリードで40年間宮廷画家として
さまざまなジャンルの作品を残しました。

 

Las Meninas
「ラス・メニーナス」1656年

は代表作のラス・メニーナス

王女や女官たちが描かれており、
宮廷の人々が鑑賞者の方を
見ているかのような感覚に陥ります。

 

venus in the mirror
「鏡のヴィーナス」1648‐1651年

↑はカトリックの伝統が強い
スペインでは珍しい女神の裸婦像。

その背景には、
宮廷絵画には宗教的規約が及ばない
という特徴があります。

 

Diego Velazquez
ディエゴ・ベラスケス
ディエゴ・ベラスケス
  • 生きた年代
    →1599年~1660年
  • 代表作
    →ラス・メニーナスなど
  • なにをした人?
    →首都マドリードの宮廷画家として活躍した17世紀を代表する巨匠
  • その他の記事
    ラス・メニーナスを解説

まとめ

 

Las Meninas
まとめ

✓ギリシャ出身のエル・グレコが
スペイン美術の発展に貢献した

✓スペイン・バロックの出発点は
カラヴァッジョの明暗法

✓17世紀半ば頃からムリーリョのような
親しみやすく甘美な宗教画が支持を得た

✓マドリードでは宮廷美術が発展し、
ベラスケスは17世紀を代表する巨匠となった

次回はフランス・バロックを解説します。

 

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