バロック時代のスペインは
宮廷美術が発展したことが特徴です。
有名なハプスブルク王家は、
王宮装飾をヨーロッパ最高水準のもの
にしようと努めました。
また、イタリアの画家カラヴァッジョの
影響を受けた作品も多いです。
まずはこの時代の作品の
画像を確認していきましょう。










✓マニエリスム
⇒16世紀半ば~
✓バロック
⇒16世紀末~18世紀初頭
目次
スペイン・バロックの特徴

それまでのスペインはルネサンスの影響を
あまり受けず、美術面での大きな発展は
みられていませんでした。
そんな中、スペイン美術に多大な影響を
もたらしたのがエル・グレコです。
また、17世紀に入ると宗教画と宮廷美術の
2つの方面で発展をみせます。
エル・グレコの活躍

エル・グレコ(1541~1614)は
マニエリスムの画家として有名です。
イタリアに10年ほど滞在し、
ヴェネツィア派の色彩や
ミケランジェロの造形性を学んだ後、
マニエリスムの幻想的で引き伸ばされた
人体表現を習得しました。
その後スペインに渡り、
対抗宗教革命の拠点だったトレドで
神秘的な宗教画を制作しました。

美術面で大きな発展のなかったスペインに、
新たな美術の可能性を伝達しました。
リバルタ「聖ベルナルドゥスを抱擁するキリスト」

17世紀に入るとスペイン美術は
バレンシア、セビーリャ、マドリード
という歴史や文化が異なる都市で
展開していきます。
活躍した都市によってバレンシア派、セビーリャ派などに分類される。ちなみにリバルタはバレンシア派
スペイン・バロックの出発点ともなったのが
カラヴァッジョがイタリアで完成させた
明暗法でした。
フランシスコ・リバルタ(1565~1628)は
そんなカラヴァッジョの明暗法を
スペインで確立した画家の一人です。
徹底した写実性と明暗効果を用いて、
スペイン・バロックの迫真性を示しています。

ムリーリョ「無原罪の御宿り」

リバルタなどのバレンシア派は
17世紀後半になると衰退しますが、
セビーリャ派は17世紀全般を通して活躍し、
特に宗教画において優れた作品を残しました。
17世紀半ばから後半にかけて、
バルトロメ・エステバン・ムリーリョ
(1617~1682)がセビーリャの画壇に
君臨しました。
彼の大きな功績の1つは、
マリア信仰の強かったスペインで
「無原罪の御宿り」の図像を
完成させたことです。
当時のスペインはペストの流行により
人口の半分が失われていました。
そんな社会状況の中で民衆が求めたのは、
カトリックの教義(対抗宗教革命)に
忠実な作品ではなく、癒しを与えてくれる
慈愛の表現でした。
そのこともムリーリョの作品が支持を得た
理由の一つでしょう。

レアール「世の栄光の終り」

セビーリャには貧しい病人たちが
介護される聖堂がありました。
そこにはファン・デ・バルデス・レアール
(1622~1690)のヴァニタス画あります。
静物画の1つで、人生の空しさを表現している絵のこと
この図像は中世以降、
現世の富と名誉のはかなさを示すために
盛んに描かれたものの1つです。
レアールのヴァニタス画は徹底された写実性と
明暗の対比により劇的に描かれており、
バロック美術の特徴をみることができます。

ベラスケス「ラス・メニーナス」

レアールのヴァニタス画がある一方で、
首都マドリードでは宮廷美術が発展し、
セビーリャ出身の
ディエゴ・ベラスケス(1599~1660)は
宮廷画家として君臨します。
「ラス・メニーナス」には
マルガリータ王女や女官たちが
描かれており、宮廷の人々が
鑑賞者の方を見ているかのような
感覚に陥ります。
ベラスケスの卓越した着想が生んだ
イリュージョンです。
ちなみにこの絵は制作から200年後、
近代絵画の父マネを魅了することになります。

エレーラ様式

最後にエレーラ様式という
スペイン絶頂期の建築様式を紹介します。
16世紀から17世紀にかけてスペインは
大規模な建築物を各地に建築しました。
エスコリアル修道院はフェリペ2世の注文で
建てられたもので、聖堂を中心として
4つの中庭、周囲に王宮、修道院、学校など、
スペイン最大規模の複合建築物となっています。
長方形の四方には塔があり、
簡素な古典主義的形式は建築家の名をとって
エレーラ様式と称されました。
まとめ

✓マニエリスムの画家エル・グレコがスペイン美術の発展に貢献した
✓カラヴァッジョの明暗法や劇的な構図はスペイン・バロックにも影響を与えた
✓スペインでは宮廷美術が発展し、ベラスケスのような宮廷画家が登場した
次回はフランスでのバロック美術を解説します。
✓宮廷美術の発展
✓カラヴァッジョの影響
✓ヴァニタス画