美術はなぜ存在するのか?誰のためのものか

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記事の要約
  1. 美術が存在する理由
    →お金持ちのため
  2. その目的は?
    →権力誇示、資産保有、布教
  3. なぜ存在し続けられた?
    →宗教が大いに影響している

 

現代で美術・アートを見に行くとなれば
美術館・博物館・画廊など、
さまざまな場所が思い浮かびますね。

しかしそもそも美術はなぜ存在し、
なぜ存在し続けてこれたのか
疑問に思いませんか?

そこでこの記事では
美術が存在する理由として、
美術にはどんな目的があり
どんな価値があったのかなどを紹介します。



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美術はなぜ存在するのか

 

早速、美術はなぜ存在するのか
という問いに対してですが、
大きく分けて以下の理由・価値があります。

  1. お金持ちのため(権力誇示・資産保持)
  2. 布教のため

順番に解説していきます。

お金持ちのため

 

Nijo Castle

1つ目の大きな理由が
お金持ちのための美術です。

ここには個人だけでなく、
団体も含まれます。

現代でも美術やアートは
とても高価なものといったイメージを
持つ人もいるかもしれませんが、
それは大当たりです。

なぜなら昔から美術は
お金持ちと共に存在していたからですね。

そしてお金持ちが美術品を買う
理由の1つに権力誇示があります。

 

国内外問わず、
お金持ちは城や宮殿などの建設物に始まり、
豪華な内装や装飾でその権力を誇示しました。

そうすることで、

  • この人はなんて凄い人なんだ!
  • この人についていきたい!

と優秀な部下を集めて従わせる。
そんな効果がありました。

 

women's leisure
国宝「婦女遊楽図」

また、日本に限っていえば
屏風や襖絵なども美術の1つですよね。

あれも例えば、
権力を誇示するために大きな城を
建てたはいいが、ただの白い襖だらけの
内装だと見栄えが悪いというか、
重要な客人を呼ぶのに相応しくありません。

そこで有名な絵師に
「金はあるから、とりあえずカッコいい
屏風・襖絵を描いてくれんかね?」
と注文がいく流れですね。

 

Naram Singh stone monument
ナラム・シンの石碑

ちなみに権力誇示の美術でいえば、
その歴史は紀元前まで遡ります。

↑はメソポタミア文明の頃に作られた
ナラム・シンの石碑というもので、
戦争の勝利を記念した最古のものです。

 

次に資産保有の美術についてです。

昔はお金がデータ化されていないので、
全てお札や金・銀など、重さがある状態で
保有する必要がありました。

超がつくお金持ちとなれば
そんな大量のお金をどうやって
保有するのかも問題となります。

そこで役立つのが美術です。

 

salvator_mundi
サルバトール・ムンディ

例えば、↑はダヴィンチの作品で、
市場で約508億円で落札されたものですが、
大きさは約66㎝×45㎝しかありません。

その程度の大きさで500億を超える
価値があるのですから、
資産保有の点ではコンパクトですよね。

しかもこの類の一生に1度買うチャンスが
あるかどうかのような美術品の場合、
その価値が大きく落ちることはありません。
(盗難や災害などのリスクはありますが)

ですのでお金持ちにとって美術は
資産保有の立派なツールでもあったわけです。

世界で最も高い絵ランキング

 

お金持ちのための美術
  • 権力誇示
    →人を集め、従わせる効果
  • 資産保有
    →資産をコンパクトに保有できる

布教のため

 

crucifixion

西洋では文字が読めない人のために
聖書の内容を絵にして伝えた、
という話が有名です。

西洋絵画のルーツが布教のための
宗教画にあったりします。

ですので美術の存在理由の1つに、
「布教のため」というのが
当然入ってくるのですが、

これも見方を変えればお金持ちのためです。

 

rose-window

先ほど権力誇示の説明で、
豪華な内装や装飾を人々に見せて

  • この人はなんて凄い人なんだ!
  • この人についていきたい!

という説明をしましたが、
これと似ています。

つまり宗教団体を運営させるのにも
多くの信者が必要になるので、
豪華なステンドグラスや宗教画を見せて、
人々の心に訴えかけたのです。

布教活動の真の目的が誇示ではなく
信仰によって人々を救うことなので、
違うといえば違うのですが、
権力(お金)が集まる場に美術品を集めて、
人々を魅了するという点では似ていますね。

カトリックとプロテスタントの美術を解説

 

布教のための美術
  • 聖書の内容を絵にした
    →文字が読めない人に布教するため
  • 豪華なステンドグラスなど
    →人々の心に訴えかける

宗教の力と需要

 

crucifixion

さて、ここまでに美術は
主にお金持ちや宗教団体のもとに
集まってくる理由を解説しました。

次に解説するのは
なぜ存在し続けてこれたのかです。

 

まず皆さんに考えて頂きたいのは、
何百年前の美術品が残ってるって
とんでもなく凄いことだと思いませんか?

普段、美術館や博物館ですごく簡単に、
当たり前に目にしている美術品ですが、
実はとても有難ありがたいことなのです。

 

woman looking at a picture

そしてここに宗教の力が
大いに関わってきます。
(日本では仏教など)

ここまでは権力誇示など
買い手目線の見方でしたが、
次からは売り手アーティスト目線で見ていきます。

誰に作品を売りたいか

 

paint-a-picture

全ての芸術家とはいいませんが
多くの芸術家が作品制作するにあたり、

  • 有名になりたい
  • 後世に名を遺したい

と考えたりします。

有名になりたいに関しては、
お金持ちや宗教団体に売れば
自分の作品を多くの人に見てもらうことに
繋がるのでWin&Winとなりますね。

では後世に名を遺したい場合はどうでしょう?

これに関して言えば、
当時は宗教団体に売るのが
ベターだったといえます。

 

なぜなら宗教は基本的に
個人のお金持ちよりも権力者争いに
巻き込まれにくいからです。

その他、個人のお金持ちは社会情勢に
影響を受けやすい面もあったりして、
いつ作品が売りに出されても
おかしくない状況でもあります。

 

加えて宗教(教会や寺)は目に見えない力が
存在する場でもあります。

たとえ無宗教の日本人でも
神社にあるものを粗末にしたり、
壊したりすると罰があたりそうですよね。

そういった宗教の力は
自分の作品を安全に残すという面でも
大いに効果があったといえるでしょう。

 

美術が存在し続けてこれた理由
  • 宗教の力
    →権力者争いに巻き込まれにくい
    →社会情勢に左右されにくい
    →見えない力が働いている
  • 自分の作品を後世に遺す効果
    →もちろんこれだけではないが、効果は大きかった

まとめ

 

まとめ

美術はお金持ちのために
制作された(特に昔)

権力誇示や資産保持、布教のため

宗教は作品を遺す面でも
大いに効果があった

今回は普段美術館で作品を見ただけでは
なかなか想像できない美術の価値や理由を
解説しました。

さまざまな角度から美術を見るのも
新たな発見があって楽しいですよね。

最後まで読んで頂き、
ありがとうございました。

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