アートがわかると世の中が見えてくるのレビュー

 

記事の要約

日本の美術・伝統の歴史

✓知られざる日本美術の裏側

感性よりも理解することから

 

見ようとしなければ、
見えないものばかり。
見える目を手に入れられるかどうかは
皆さんの努力次第なのです。
前崎信也

この記事ではIBCパブリッシング出版の
『アートがわかると世の中が見えてくる』を紹介し、レビューしたいと思います。



アートがわかると世の中が見えてくる

 

アートがわかると世の中が見えてくる
概要

出版社
IBCパブリッシング
発売日
2021/1/28
著者
前崎信也
本の長さ
207ページ

著者である前崎信也さんは
京都女子大学生活造形学科の准教授で、
工芸文化史や文化情報学を専門にしています。

アートがわかると世の中が見えてくる
というキャッチーなタイトルですが、
その内容は現代で芸術を知りたい人が
ぶつかる壁や、その壁の存在理由を
さまざまな歴史と共に解説してくれるもの
になっています。

日本の文化芸術に関わる講演や執筆など、
幅広い分野で活躍されている前崎さんが語る
日本美術の歴史や現状はどれも教育機関では
伝えることができないものばかりで、
大変興味深い内容です。

美術がわかるということは感じることではない

 

美術を学ぶ

「私には感性がないので美術のことが
全然わからないんです」

本の冒頭は上の言葉から始まります。

前崎さんが授業で生徒から
よく耳にする言葉だそうです。

また、前崎さんが授業の中で
「文化財は未来に遺すべきですか」と生徒に
聞くとYESと答える人が大半なのに対し、
「自分は文化財を遺すため何かしてますか」と
問うと大半がNOと答えるそうです。

続けて、
「なぜ大切なのに何もしないのですか」の
問いには興味がない、高価すぎるといった
答えが目立つそうです。

私もそうですが、
きっとこの記事を読んで下さっている方も
生徒たちに共感できるのではないでしょうか?

前崎さん曰く、このように考える人が
今の日本に多いのは現代まで続く
さまざまな美術界の壁や、芸術文化の
伝え方に問題が
あるからだそうです。

この本のポイント

 

では日本の美術界に存在する壁とはなにか?

この本ではそれらについて
日本の美術・伝統の誕生から
わかりやすく紐解いてくれます。

大見出しは以下のとおりです。

  1. 美術は誰のものか
  2. 作られた日本美術史
  3. 美術を支える科学技術とエリート
  4. 日本文化としてのお茶の話
  5. 美術館が建った理由
  6. 一般人に厳しい美術館・博物館
  7. 美術の見方

この本では
日本が独自の美術・文化を強化し、
「文化大国日本」を造り上げるまでに
至った経緯から始まり、
それらは時代と共にどう変化したのか、
現状はどうなのかまでを解説しています。

日本の美術界の歴史を知れば
なぜ美術を学ぼうとする人が少ないのか、
なぜ美術館は一般人にとって難解であるか
などもわかります。

言葉として適切でないかもしれませんが、
「日本の美術界の闇」が多く
語られているようにも感じました。

 

「日本の美術品は安い。でも、誰も買わない」
これが、日本国民が信じる
文化大国の現実なのです。

上位のレビュー

 

☆4以上のレビュー

まさにタイトル通り、「世の中が見えてくる」一冊でした。美術が世の中で果たした役割やその変化がとてもわかりやすい言葉で解説されており、さらりと読めます。美術って敷居が高いし、よくわからないと思っている人にもおすすめですが、個人的には経済産業省の補助金政策による弊害の下りがとても考えさせられる内容で、霞ヶ関の役人さんにも是非読んでもらいたいと思いました。
アート思考など、ビジネスとアートを繋げるような内容の本は増えましたが、こちらはそもそもなんのために日本美術はあるのか、芸術の役割とは何か、ということをとても分かりやすい言葉で解説している本。すらすらと読めますが、内容は濃く、初めて知る情報もたくさん載っていました。文化や芸術に興味がある人なら読むべき本ですね。

 

☆3以下のレビュー

美術史に関する記述は平易で、確かにアート好きになってほしいという方向性には違和感がありません。美術史というよりもアートに対する筆者の思いを綴るというエッセイ的な要素が強い内容だと受け取りました。

オススメしたい人

 

今回の本を特にオススメしたい人は
以下のような方です。

  1. 日本美術や伝統の歴史を知りたい方
  2. なぜ芸術が大切なのかを知りたい方
  3. 美術界の裏側を知りたい方

前崎さんは本の中で
「伝えたいのは感性を磨くことでは
ありません」と明言しています。

その内容通り、この本は多くの一般人が
感じている「美術には感性が必要」という
想いに寄り添うものではなく、
まずは日本の美術ってどんなものか理解しよう
という著者の想いが込められているように
感じました。

ですので、
感性を磨きたいという人は
他の本にしておきましょう。

まとめ

 

アートがわかると世の中が見えてくる
まとめ

日本の美術・伝統の歴史がわかる

なぜ美術は難しいのか、ハードルが高いのかがわかる

✓感性を磨くのではなく、まずは理解すること

気になった方は
ぜひ手に取ってみて下さい。