対話型鑑賞とは/新たな視点/アートを楽しむ鑑賞法

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記事の要約

☑対話型鑑賞を解説

☑能動的な美術鑑賞

☑脳を鍛える効果あり

 

対話型鑑賞という美術鑑賞法があります。

子供向けの教育プログラムとして
発展した鑑賞法ですが、
私は大人こそやるべきものだと
考えています。

簡単に言うとこの鑑賞法は↓

☑知識に頼らない鑑賞法
☑作品をよくみる/考える
☑洞察力や思考力が鍛えられる

現代アートのような
思考するアートでは、
どこをみればいいかわからない
なにを考えればいいかわからない
という方もいます。

わからないことからは
逃げたくなるものです。
しかし、
知っておくだけで
役に立つこともあります。

今回はそんな一助に
なるべく、
対話型鑑賞を解説します。





対話型鑑賞とは?

 

絵画鑑賞をする女性

対話型鑑賞は1980年代に
アメリカのMOMA
(ニューヨーク近代美術館)
で開発されました。

英語ではVTSとも呼ばれます。
(Visual Thinking Strategies)

やり方を簡潔にまとめると↓

①作品を見る
②作品からどんな直感(イメージ)が得られたか言葉にする
③何故、その直感が得られたのか。その原因を作品から探し出す
④他人の意見を聴く(複数人の場合)

こんな感じです。
簡単そうに感じますか?
実際は慣れるまでに少し時間が掛かります。

ここからは各過程を
詳しくみていきます。

①作品を見る

 

向き合う

最初は作品をじっくり眺めます
(10分以上が推奨されています)。

10分ってかなり長いですよね。
でも本当に10分みるつもりで
じっくり鑑賞して下さい。
意識してみないと
この鑑賞法の効果を上げることが
できません。

あと、美術館で行うなら
1つ注意点があります。

それは作品の横にある
キャプション(解説文)
作品名を見ないことです。

それを知ってしまうだけで、
固定観念が入って
純粋な鑑賞ができません。

円
出典:山田書店

例えばこんな作品があったとします。

この作品をじっくり鑑賞する前に
作品名が「目玉」だとわかったら、
もう目玉にしか見えなくなってしまいます。
(実際の作品名は目玉ではないです)

ですので、キャプションや作品名をみるのは
控えます。

じっくり見るのが難しい

社会

実は現代の人が最も苦手とする部分
このよくみることだとされています。

そんなわけがないと思いますよね。
人は常に目を使っていますから。

こんな話があります。

先程のMOMAで、来館者が1つの作品を
鑑賞するのに費やす時間の平均を
調査しました。
すると平均10秒前後という
結果が出ました。

また、MOMAで行われた
ギャラリートークの参加者の調査では、
参加者はプログラム終了後ですら、
その内容をほとんど覚えていなかったようです。

つまり多くの人が
作品を見ているものの、
作品の内容はほとんど覚えていないのです。

視覚からの情報量の話

美術館

もう1つ興味深い話があります。

ある研究によると、
人間が五感で受け取る外部の情報量は
1秒間に約1100万ビットとわかりました。

そして、その内の
約1000万ビットを視覚から受け取っています。

しかし、人間が1秒間に認識できる情報量は
1~16ビットといわれています。
つまり人間は、
受け取る情報量の大半を認識できていません。

ということは多くの人が
作品から情報をほとんど
得られていないということになります。

科学的にも、多くの人が
作品を眺めているだけ
証明されているのです。

②作品からどんな直感(イメージ)が得られたか言葉にする

 

思ったことを話す

作品をじっくりみた
次は直感を言葉にするステップです。

ここでは直感を言葉にする練習を
してみましょう。

次の画像からあなたは
どんなイメージを抱きますか?
(今回は練習なので
じっくり見なくてよいです)

VTS

どうでしょう?
私の直感は冷たい。寂しい。抑制。

もう1つやってみます↓

VTS

どうでしょう?
私の直感は賑やか。混沌。風。

抽象的な絵でも
直感は得られるはず。
どんな直感でもいいので
それを言語化することが大切です。

(私は形容詞のような言葉が
多いですが、例えば2枚目画像で
旗を振っているのように、
具体的な言葉でも大丈夫です)

③何故その直感が得られたのか。その原因を作品から探し出す

 

VTS

次は考えるプロセスです。

ここでは何故そう感じたのか?を
追求していきます。
その際にポイントとなるのが
事実と解釈です。

まずは事実と解釈の違いについて
解説します。

事実

事実とは、
他の誰が見てもそう判断できること
を指します。

先程の画像を例に考えてみます。

VTS

この画像で誰が見てもそうだと
判断できるのは、

☑水滴(液体)のようなものが点在している
☑何色かの色が滲んでいる。混ざっている部分もある

このような部分ですね。
これをVTSでは事実と考えます。

解釈

次に解釈とは、
鑑賞者によって捉え方が違うもの
を指します。

例えば、
私はさっきの画像で
人の手だと
感じた部分があります↓

VTS

しかしこれは
全員同じではないはずです。

私の友人は人の手ではなく
猫の手に見えていましたし、
顔だと思った部分は
ただのタイヤ痕だと言ってました。

もちろん他にも見方はあります。

VTSではこのように
事実と解釈を分けて考えることが大切です。

事実
⇒誰がみてもそう判断できるもの、
客観的な事柄
解釈
⇒鑑賞者によって捉え方が違うもの、
主観的な事柄

では事実と解釈をふまえて
直感の原因を探ります。

私は画像から
冷たい。寂しい。抑制
というイメージを抱きました。

VTS

私がそう感じた理由を
解釈で答えると↓

・水滴が雨のように感じた⇒冷たい
・人の手や顔が見える
⇒向こう側で閉じ込められていると感じる
寂しい・抑制

となります。

今度は理由を事実で答えます

・水滴のようなものがあるから⇒冷たい
・色が滲んで黒っぽい部分や擦れているような部分がある⇒寂しい・抑制

事実で捉えると
少しおかしな感じがしますね。

きっと読者さんの意見は
私と違うはず。
違う部分を比較するのも
面白いです。

④他人の意見を聴く

 

対話型鑑賞

複数人いる場合は
同じ作品に対して何を感じたか、
グループディスカッションすることで
感性・価値観の違いや多様性
感じることが出来ます。

1人で行う場合も直感を
言語化するプロセスが
とても重要です。

対話型鑑賞の効果

 

VTS

対話型鑑賞のような
見方や考え方を実践することで、
観察力批判的思考力言語能力など
が鍛えられることが実証されています。

この鑑賞法は真剣にやると、
けっこう疲れます。

何作品も行うことは
出来ないかもしれませんが、
しっかり向き合うことで
脳を鍛えることに繋がります。

まとめ

 

VTS

☑解説や作品名をみずにじっくり鑑賞、なにを感じ取ったかに意識を向ける

☑事実と解釈に分けて、作品から得た直感の原因を探っていく

☑複数人で行う場合は多様性を感じることが出来る

☑脳の複合的な能力を伸ばすことが実証されている

直感から始まり、
なぜそう感じたかを事実と解釈に
わけて考える。

そうすることで作品に対して
自分なりの解釈、答えをもつ
ことができます。

絵画や写真、現代アートまで
どんな作品にも活用できるので
是非、実践してみて下さい。