西洋美術を鑑賞するうえで、
美術と宗教の関係を
理解しておくのは重要です。
そこでこの記事では、
カトリックとプロテスタントの美術
について解説します。
カトリックとプロテスタントの美術
![bible](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2020/06/bible-2110439_1280-300x200.jpg)
1517年にルターが起こした宗教革命は、
カトリックからプロテスタントという
新教の分離へと発展させました。
プロテスタントは聖書に
記されていることだけを信じ、
旧約聖書にある偶像崇拝の禁止を基にして
イコンや聖遺物崇拝を禁止しました。
反対にカトリックはプロテスタントに
対抗する形をとり、人々を信仰に導くため
鑑賞するものを引き付けるような
ドラマチックな表現を追求しました。
カトリックの美術
![](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2020/07/church-windows-2217785_640-1-300x175.jpg)
宗教革命が起きた時代に
カトリック教が占めていた国は、
イタリア、スペイン、フランス、フランドル
などがあります。
カトリックの美術に特徴的なのは
鑑賞者を惹きつけるような
ダイナミックな構図や明暗の強調、
デコールムです。
![Calling of St. Matthew](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2021/04/507px-Michelangelo_Caravaggio_040-1-300x284.jpg)
↑はイタリアのカラヴァッジョが
描いた「聖マタイの召命」です。
それまでの宗教画とは違い、
明暗が強調されたドラマチックな表現を
しています。
![Ascension of Christ](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/07/640px-Peter_Paul_Rubens_-_Raising_of_the_Cross_-_1610-1-300x218.jpg)
次にフランドルの画家、
ルーベンスの「キリスト昇架」です。
イエスの十字架をまさに持ち上げようと
する場面を劇的に描いています。
このような表現法は文字が読めない信徒たちに
キリストや聖人が行った奇跡を信じさせ、
宗教心に訴えかける目的がありました。
無原罪の御宿り
![Immaculate Conception](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/07/502px-Bartolome_Esteban_Perez_Murillo_005-1-209x300.jpg)
カトリック美術のもう1つの特徴に、
イエス以外の聖母や聖人も崇拝の対象で
あったことがあげられます。
↑の「無原罪の御宿り」はカトリックが
プロテスタントに対抗するため、
特に力を入れたテーマの1つです。
これはイエスだけでなく、
母のマリアも神の意志によって
原罪を免れて生まれた存在である
とする考え方です。
人は生まれながら罪深い存在とする考え方のこと
聖テレサの法悦
![Ecstasy of Saint Teresa](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2021/04/480px-Estasi_di_Santa_Teresa-1-200x300.jpg)
さらにカトリックは
幻視や法悦、殉職などのテーマを好み、
信徒にそれをみて共感してもらうこと
を狙いとしました。
バロック時代の建築は曲線や楕円形を多用し、
派手な内部装飾が特徴的です。
この時代のイタリアで有名な芸術家
にベルニーニがいます。
彼の代表作の1つ「聖テレサの法悦」は、
16世紀スペインカトリック教会の修道女
聖テレサの神秘体験をテーマにしたものです。
礼拝中に忘我の域に達するまで高揚すること
プロテスタントの美術
![十字架](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/07/cross-g62eccb219_640-1-300x198.jpg)
プロテスタントが占めていた国は、
ドイツやオランダがあります。
プロテスタントの国では
しばしば聖像破壊が起こり、
多くの美術品が破壊されました。
そのためプロテスタントの国では
宗教画の割合が低くなり、
別のテーマの絵画が増えていきました。
肖像画
![smiling knight](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/07/591px-Cavalier_soldier_Hals-1624x-1-246x300.jpg)
↑の「微笑む騎士」はオランダの画家、
フランス・ハンスの作品です。
貿易で栄えたオランダでは、
市民や商人が絵を買うことが増えました。
それに伴いわかりやすく身近なものを
テーマにした絵画が発達し、
肖像画もその中のジャンルの1つです。
![Banquet of the Citizens of St. George in Haarlem](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2021/07/640px-Frans_Hals_-_Banket_van_de_officieren_van_de_Sint-Joris-Doelen-1-300x158.jpg)
こちらもハンスの作品です。
オランダ絵画で特徴的なものに
集団肖像画があります。
ギルドと呼ばれる職業別の組合から
注文されることが多かった集団肖像画は、
商業で栄えた当時のオランダを象徴する
ジャンルの1つといえます。
風俗画
![woman pouring milk](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2021/07/417px-Johannes_Vermeer_-_De_melkmeid-1-261x300.jpg)
プロテスタントの国では
日常生活のありふれた事物を
テーマにした風俗画も多く描かれました。
↑の「牛乳を注ぐ女」は
精緻な筆致で風俗画を描いたことで
有名なフェルメールの作品です。
このように、絵画の注文主が
教会から市民に変わったことで、
家庭に飾るのに適した親しみやすい
テーマが確立されていきました。
まとめ
![](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/07/bible-g844e9a0ea_640-1-300x211.jpg)
✓カトリック教はビジュアルで
信徒に訴えかけた
✓カトリック美術の特徴は
ダイナミックで劇的なこと
✓プロテスタントの国では
宗教画以外のテーマが発展した
今回は美術と宗教、
特に宗教革命以降の動向を
解説しました。
美術は宗教の他にも政治や経済、
社会とも密接に関わっています。
興味のある方はぜひ他の記事も
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→聖母マリアも信仰の対象
→宗教画の需要は減少
→風俗画や集団肖像画が人気