ポン=タヴァン派とは
19世紀後半~20世紀初頭にフランスの
ポン=タヴァンという地で活躍した
芸術家グループを指す言葉です。
ポスト印象派のエミール・ベルナールや
ポール・ゴーギャンの影響を
受けているのが特徴です。
また、同時期にゴーギャンの影響を受けた
ナビ派というグループもいます。
まずはポン=タヴァン派/ナビ派の
作品画像を確認していきましょう。
![Brittany women in the meadow](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/05/603px-Emile_Bernard_1888-08_-_Breton_Women_in_the_Meadow_Le_Pardon_de_Pont-Aven-1-300x239.jpg)
![Ghost after sermon](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/05/608px-Paul_Gauguin_137-1-300x237.jpg)
![Talisman](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/05/560px-Serusier_-_the_talisman-1-234x300.jpg)
![september afternoon](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/05/image-1-300x180.jpg)
![Two Dogs on Deserted Street](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/05/561px-Two_Dogs_in_a_Deserted_Street_Pierre_Bonnard_c1894-1-234x300.jpg)
✓印象派
⇒1860年~
✓ポスト印象派
⇒1890年頃~
ポン=タヴァン派とは?
![](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/05/499px-France_location_map-Regions_and_departements-2016.svg-1-300x289.png)
ポン=タヴァンはブルターニュ地方、
フィニステール県のコミューンです。
1862年にパリからカンペール行きの鉄道が
開通するとブルターニュ地方への観光客が
増え始めます。
1866年にはフィラデルフィアから来た
アメリカの画学生もポン=タヴァンに集まり、
次第に画家の間で有名な地となっていきました。
![Gauguin](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/06/PaulGauguinblackwhite-1-251x300.jpg)
1886年7月にはポスト印象派で
有名なゴーギャンも同地を訪れています。
この頃、ゴーギャンは勤め先をやめて
画業に専念することを決意し、
喧騒を避けて素朴な暮らしを求めていました。
![](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/05/596px-Lautrecx07-1-248x300.jpg)
そして同じくフランス・ポスト印象派の
画家であるエミール・ベルナールも
ポン=タヴァンを訪れます。
1886年に2人は出会いますが、
その時はほとんど会話をする機会が
なかったそうです。
ところがその2年後の1888年の夏。
2人はポン=タヴァンで再開し、
本格的な制作活動を開始します。
![Brittany women in the meadow](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/05/603px-Emile_Bernard_1888-08_-_Breton_Women_in_the_Meadow_Le_Pardon_de_Pont-Aven-1-300x239.jpg)
↑はその頃にベルナールが
描いた作品です。
ベルナールは日本の浮世絵のような
色面を輪郭線で囲むクロワゾニスムという
様式を生みだしました。
![Ghost after sermon](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/05/608px-Paul_Gauguin_137-1-300x237.jpg)
ゴーギャンもベルナールの作品から
着想を得て「説教の後の幻影」という
作品を描いています。
ポン=タヴァン派の特徴
![Watermill at Pont-Aven](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/05/587px-Paul_Gauguin_039-1-300x246.jpg)
ゴーギャン、ベルナールを中心として
活動したポン=タヴァン派には
以下の特徴があります。
- 対象を忠実(写実的)に描かない
- 画家の感情を反映させて制作する
- 純色を大胆に用いる
- 遠近法や陰影を使わない
- 明確な輪郭線かつ平坦な色面で描く
これらは総合主義と呼ばれます。
特徴の⑤は先述した
クロワゾニスムのことですが、
総合主義という言葉はクロワゾニスムと
ほぼ同義で用いられることもあります。
印象派への反発でもあった
![Impressionist and Syntheticist groups](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/05/Affiche_Volpini-1-300x214.jpg)
ポン=タヴァン派は1889年に
パリ万博博覧会の片隅で
「印象主義および総合主義グループ」と
自称する展覧会を開きます。
印象派と共に開催したような展覧会ですが、
実際は印象派への反発的ニュアンスを
秘めていました。
![Impression/sunrise](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/06/619px-Monet_-_Impression_Sunrise-1-1-300x233.jpg)
ゴーギャンは印象派を次のように
批判したようです。
彼ら(印象派)は、自分たちの眼の周囲のみを
探し回っていて、思想の神秘的内部に
入り込もうとしない。
それは完全に皮相的で、完全に物質的で、
媚態だけから出来ているような芸術である。
そこには思想は住んでいない。
ゴーギャンは総合主義をもとに
絵画に思想的・哲学的内容を
盛り込もうと考えていました。
そんな彼にとって印象派は
至極表面的な芸術に
感じたのかもしれません。
ナビ派とは?
![Paul Seruzier](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/05/Serusier-picture-1.jpg)
ゴーギャンとベルナールが
ポン=タヴァンで再開した1888年。
同地でゴーギャンに絵の指導を受けた
ポール・セリュジエという画家がいました。
彼はパリの私立系美術学校である
アカデミー・ジュリアンの学生監であり、
アカデミーで教わる表現とは大きく違う
ゴーギャンの教えに衝撃を受けました。
![Talisman](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/05/560px-Serusier_-_the_talisman-1-234x300.jpg)
↑はゴーギャンの指導を受けた後、
パリへ戻ったセリュジエが描いた作品です。
彼はゴーギャンの教えを
アカデミー・ジュリアンの仲間たちと共有し、
共鳴した学生たちとナビ派を結成しました。
ちなみにナビはヘブライ語で「預言者」を
意味しており、芸術界の新たな新風となる
想いが込められていました。
ナビ派の特徴は?
![september afternoon](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/05/image-1-300x180.jpg)
ナビ派もポン=タヴァン派と同じく
反印象派的な思想があります。
また、ヘブライ語をグループ名に
用いることからもわかるように、
メンバーのほとんどがカトリック信者でした。
![Two Dogs on Deserted Street](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/05/561px-Two_Dogs_in_a_Deserted_Street_Pierre_Bonnard_c1894-1-234x300.jpg)
そんなナビ派の作品は芸術の神秘性を
主張するものが少なくありません。
その他、ナビ派の特徴には
以下のようなものがあります。
- 対象を忠実(写実的)に描かない
- 二次元の平面における線の要素を強調
- 日本の浮世絵版画の影響を受けている
→ピエール・ボナールなど - 神秘主義的な側面もある
→メンバーの多くがカトリック信者
一部ポン=タヴァン派の特徴とも
共通していますね。
![Pierre Bonnard](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/05/Pierre_Bonnard-1-212x300.jpeg)
ちなみにナビ派を代表する画家、
ボナールにはこんな言葉があります。
絵画とは小さな嘘をいくつも重ねて
大きな真実を作ることである。
まとめ
![Ghost after sermon](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/05/608px-Paul_Gauguin_137-1-300x237.jpg)
✓ポン=タヴァン派の特徴はクロワゾニスム
✓ゴーギャンがセリュジエに指導したことがナビ派誕生のきっかけ
✓ポン=タヴァン派もナビ派も、反印象派的な思想があった
ちなみにゴーギャンはポン=タヴァンで
過ごした後に南フランスのアルルに移ります。
黄色い家であのゴッホとの共同生活を
始めるために…
ゴッホとのエピソードはコチラをどうぞ↓
→ゴーギャンとベルナール
→色面を輪郭線で囲む
→ナビ派結成のきっかけ