ポン=タヴァン派/ナビ派とは?

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記事の要約
  1. ポン=タヴァン派の中心メンバー
    →ゴーギャンとベルナール
  2. クロワゾニスムが特徴
    →色面を輪郭線で囲む
  3. ゴーギャンがセリュジエに指導
    →ナビ派結成のきっかけ

 

ポン=タヴァン派とは
19世紀後半~20世紀初頭にフランスの
ポン=タヴァンという地で活躍した
芸術家グループを指す言葉です。

ポスト印象派のエミール・ベルナール
ポール・ゴーギャンの影響を
受けているのが特徴です。

また、同時期にゴーギャンの影響を受けた
ナビ派というグループもいます。

まずはポン=タヴァン派/ナビ派の
作品画像を確認していきましょう。

Brittany women in the meadow Ghost after sermon Talisman september afternoon Two Dogs on Deserted Street


美術史年表

印象派
⇒1860年~
✓ポスト印象派
⇒1890年頃~




ポン=タヴァン派とは?

 

矢印あたりがポン=タヴァン

ポン=タヴァンはブルターニュ地方、
フィニステール県のコミューンです。

1862年にパリからカンペール行きの鉄道が
開通するとブルターニュ地方への観光客が
増え始めます。

1866年にはフィラデルフィアから来た
アメリカの画学生もポン=タヴァンに集まり、
次第に画家の間で有名な地となっていきました。

 

Gauguin
ゴーギャン

1886年7月にはポスト印象派で
有名なゴーギャンも同地を訪れています。

この頃、ゴーギャンは勤め先をやめて
画業に専念することを決意し、
喧騒を避けて素朴な暮らしを求めていました。

 

エミール・ベルナール

そして同じくフランス・ポスト印象派の
画家であるエミール・ベルナールも
ポン=タヴァンを訪れます。

1886年に2人は出会いますが、
その時はほとんど会話をする機会が
なかったそうです。

ところがその2年後の1888年の夏。

2人はポン=タヴァンで再開し、
本格的な制作活動を開始します。

 

Brittany women in the meadow
「草地のブルターニュの女たち」1888年

↑はその頃にベルナールが
描いた作品です。

ベルナールは日本の浮世絵のような
色面を輪郭線で囲むクロワゾニスムという
様式を生みだしました。

 

Ghost after sermon
「説教の後の幻影」1888年

ゴーギャンもベルナールの作品から
着想を得て「説教の後の幻影」という
作品を描いています。

ポン=タヴァン派の特徴

 

Watermill at Pont-Aven
ゴーギャン「ポン=タヴァンの水車小屋」

ゴーギャン、ベルナールを中心として
活動したポン=タヴァン派には
以下の特徴があります。

  1. 対象を忠実(写実的)に描かない
  2. 画家の感情を反映させて制作する
  3. 純色を大胆に用いる
  4. 遠近法や陰影を使わない
  5. 明確な輪郭線かつ平坦な色面で描く

これらは総合主義と呼ばれます。

特徴の⑤は先述した
クロワゾニスムのことですが、
総合主義という言葉はクロワゾニスムと
ほぼ同義で用いられることもあります。

印象派への反発でもあった

 

Impressionist and Syntheticist groups
「印象主義および総合主義グループ」展のポスター

ポン=タヴァン派は1889年に
パリ万博博覧会の片隅で
「印象主義および総合主義グループ」
自称する展覧会を開きます。

印象派と共に開催したような展覧会ですが、
実際は印象派への反発的ニュアンスを
秘めていました。

 

Impression/sunrise
モネ「印象・日の出」

ゴーギャンは印象派を次のように
批判したようです。

彼ら(印象派)は、自分たちの眼の周囲のみを
探し回っていて、思想の神秘的内部に
入り込もうとしない。

それは完全に皮相的で、完全に物質的で、
媚態だけから出来ているような芸術である。
そこには思想は住んでいない。

ゴーギャンは総合主義をもとに
絵画に思想的・哲学的内容
盛り込もうと考えていました。

そんな彼にとって印象派は
至極表面的な芸術に
感じたのかもしれません。

ナビ派とは?

 

Paul Seruzier
ポール・セリュジエ

ゴーギャンとベルナールが
ポン=タヴァンで再開した1888年。

同地でゴーギャンに絵の指導を受けた
ポール・セリュジエという画家がいました。

彼はパリの私立系美術学校である
アカデミー・ジュリアンの学生監であり、
アカデミーで教わる表現とは大きく違う
ゴーギャンの教えに衝撃を受けました。

 

Talisman
セリュジエ「タリスマン」1888年

↑はゴーギャンの指導を受けた後、
パリへ戻ったセリュジエが描いた作品です。

彼はゴーギャンの教えを
アカデミー・ジュリアンの仲間たちと共有し、
共鳴した学生たちとナビ派を結成しました。

ちなみにナビはヘブライ語で「預言者」を
意味しており、芸術界の新たな新風となる
想いが込められていました。

ナビ派の特徴は?

 

september afternoon
モーリス・ドニ「9月の夕方」1891年

ナビ派もポン=タヴァン派と同じく
反印象派的な思想があります。

また、ヘブライ語をグループ名に
用いることからもわかるように、
メンバーのほとんどがカトリック信者でした。

 

Two Dogs on Deserted Street
ボナール「デサーテッド通りの2匹の犬」

そんなナビ派の作品は芸術の神秘性を
主張するものが少なくありません。

その他、ナビ派の特徴には
以下のようなものがあります。

  1. 対象を忠実(写実的)に描かない
  2. 二次元の平面における線の要素を強調
  3. 日本の浮世絵版画の影響を受けている
    →ピエール・ボナールなど
  4. 神秘主義的な側面もある
    →メンバーの多くがカトリック信者

一部ポン=タヴァン派の特徴とも
共通していますね。

 

Pierre Bonnard
ピエール・ボナール

ちなみにナビ派を代表する画家、
ボナールにはこんな言葉があります。

絵画とは小さな嘘をいくつも重ねて
大きな真実を作ることである。

まとめ

 

Ghost after sermon
まとめ

ポン=タヴァン派の特徴はクロワゾニスム

ゴーギャンがセリュジエに指導したことがナビ派誕生のきっかけ

ポン=タヴァン派もナビ派も、反印象派的な思想があった

ちなみにゴーギャンはポン=タヴァンで
過ごした後に南フランスのアルルに移ります。

黄色い家であのゴッホとの共同生活を
始めるために…

ゴッホとのエピソードはコチラをどうぞ↓

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