この記事は
山田五郎さんのYoutubeチャンネルである
「山田五郎オトナの教養講座」より、
動画の内容を文字に起こして
解説していくものです。
第8回目のタイトルは
【エトワールは元祖NTR絵画?!】
前回のモネに続き、今回は印象派である
エドガー・ドガの作品についてです。
まだ動画をみてない方は
是非ご覧になって下さい。
文字の方が理解しやすい方は
ぜひ最後までお付き合いください。
エトワールは元祖NTR絵画?!
![Etoile](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/06/335px-Edgar_Germain_Hilaire_Degas_018-209x300.jpg)
「エトワール」は1876年、
エドガー・ドガによって描かれました。
「舞台の踊り子」という別名でも
知られている本作品ですが、
あなたは踊り子の後ろにいる黒い人物が
気になったことはないでしょうか?
![](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/09/503px-Edgar_Germain_Hilaire_Degas_018-1-210x300.jpg)
白枠で囲った部分にいる
人物のことです。
舞台袖で顔が隠れていますが、
黒いスーツかなにかを着ているようです。
この人物は一体何者で、
舞台袖で何をしているのか?
そもそもなぜ舞台袖にいるのか?
それが今回のテーマです。
![エドガー・ドガ](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/06/Edgar_Degas_self_portrait_1855-1-238x300.jpeg)
エドガー・ドガは踊り子の画家という
異名をもつ程、踊り子の絵を何枚も
描いたことで有名な画家です。
モネら印象派のメンバーの一員であり、
第1回印象派展の立ち上げメンバー
でもあります。
しかし彼は他の印象派の画家とは
異なる経歴や特徴がありました。
![パリ国立高等美術学校](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/09/640px-Palais_des_etudes_ensba_paris_003-1-300x225.jpg)
その1つ目が、
国立美術学校出身であることです。
銀行家の裕福な家庭に生まれたドガは
親から資金を援助してもらい、
パリにある国立美術学校に通います。
そこでドガは古典美術を学び、
古典的な作品を描いていたことが
知られています。
![バビロンを建設するセミラミス](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/09/640px-Degas_Semiramis_construisant_Babylone-300x176.gif)
国主催の展覧会であるサロンにも
何度も入選していおり、
古典的な画家としてある程度の
評価を得ていました。
![エドゥアール・マネ](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/06/309px-Edouard_Manet-1-193x300.jpg)
2つ目は印象派の先駆的存在である
マネと友人であったことです。
モネなど他の印象派の画家達は
マネがサロンで酷評を受けながらも
革新的な作品を描き続けたことに心を打たれ、
マネを尊敬して一致団結していました。
しかしドガは友人という立ち位置であり、
尊敬とは少し違う理由で印象派の画家達と
行動を共にしました。
![積みわら、夏の終わり](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/09/640px-Claude_Monet_-_Haystacks_end_of_Summer_-_Google_Art_Project-1-300x176.jpg)
3つ目は描き方や対象の違いです。
印象派というと屋外で制作を行い、
自然の光が降り注ぐ街の風景や景色を
描いたイメージがあると思います。
(外光派と呼ばれたりします)
![舞台のバレエ稽古](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/09/71QoncfcgxL._AC_SL1000_-1-300x239.jpg)
ドガの場合少し特殊で、
当時使われ始めた人工の光(舞台照明など)を
追求し、屋内での制作を中心に行いました。
またデッサンの能力が高かったドガは
人物の瞬間的な動きにも興味を示し、
その2つを掛け合わせたテーマが
バレリーナ(踊り子)でした。
人工照明の表現×人体表現を実現できるもの
ドガがバレリーナを描いた理由
![エトワール](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/06/335px-Edgar_Germain_Hilaire_Degas_018-209x300.jpg)
ここで山田さんはドガが
バレリーナをテーマにした理由が
他にもあるのではないかと話します。
人工照明の表現×人体表現=バレエ(踊り子)
は教科書的な内容で実はもっと違う理由が
隠されていると。
![バレエのレッスン](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/06/413px-Degas-_La_classe_de_danse_1874-1-258x300.jpg)
その隠された理由の1つ目が
踊り子の絵が売れたということ。
モネなどの作品に比べ、
描いた対象がわかりやすいのが
ドガの特徴です。
それもあってかドガの絵は
当時から人気がありました。
また、もとは裕福だったドガですが
銀行家の父親は浪費癖もあり、
第1回印象派展を行った年に
借金を残して亡くなってしまいます。
銀行はドガの弟が引き継ぎますが
再建できずにドガにも借金が回ってきました。
そんな事情もあり、
人気のあった踊り子の作品を
(借金返済のために)とにかくたくさん
描いたそうです。
たくさん描くための技法
![](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/09/bd513be7ef6b347c15dd1e311c0d1bea-1-300x200.jpg)
借金返済のためにとにかく
たくさんの作品を売りたかったドガ。
当時の主流は油絵でしたが、
油絵だと1作品を完成させるのに
時間が掛かりました。
そこでドガはパステルでの制作を
中心に行います。
パステルとは粉末の顔料を糊剤で
固めた画材のことです。
乾かす時間のいらないパステルは
速写性に優れていました。
また、ドガの求める踊り子の一瞬の動きを
捉えるのにも相性の良い画材でした。
引用:MAU造形ファイル
加えてドガはモノタイプとよばれる、
油絵具を描写した板に圧力をかけて
イメージを転写する版画技法を用いました。
これにより背景などを
一から描く必要がなくなり、
生産性は更に向上しました。
![エトワール](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/06/335px-Edgar_Germain_Hilaire_Degas_018-209x300.jpg)
今回の作品でも踊り子にはパステル、
背景にはモノグラムが使われています。
これらの工夫により
たくさんの作品を売ったドガは、
借金を10年程で返済したそうです。
- 照明と人体の表現を追求
- 売れ線のテーマ
- 量産するための技法に適していた
ドガの屈折した性癖
![](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/09/503px-Edgar_Germain_Hilaire_Degas_018-1-210x300.jpg)
隠された理由の2つ目が
ドガの屈折した性癖です。
それを説明するのに
今回のテーマが重要になってきます。
![バレエのレッスン](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/06/413px-Degas-_La_classe_de_danse_1874-1-258x300.jpg)
![舞台のバレエ稽古](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/09/2e30103c3d04aeea8c78f28429601f4b-1-300x222.jpg)
実はドガの作品には踊り子だけでなく、
(醜い)男性も描かれていることが
多いです。
照明×人体表現を追求するなら
作品にあまり男性は必要がない気もします。
ところがそれには彼なりの理由があります。
当時のバレリーナとは?
![三人の踊り子](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/09/583px-Edgar_Germain_Hilaire_Degas_024-1-243x300.jpg)
ドガの描く踊り子は当時、
まだ新しかったパリのオペラ座の
踊り子たちです。
そのオペラ座で踊り子になるには、
お金持ちの愛人になる必要がありました。
(給料が低かったため)
逆に、お金持ちの愛人になりたいがために
踊り子になる女性も多くいました。
踊り子になりたくて愛人になるか、
愛人になりたくて踊り子になるかが
入り混じっているような感じです。
![](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/09/503px-Edgar_Germain_Hilaire_Degas_018-1-210x300.jpg)
そして今回の作品。
白枠の男性は舞台で踊っている
踊り子(愛人の)のパトロンです。
作品名のエトワールは
フランス語で星を意味しており、
場面はスターダンサーの1人舞台です。
スターダンサーのパトロンですから
資産は相当なもので、オペラ座としても
VIPのはずですから舞台袖まで入ることを
許可しているわけです。
![](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/09/1509px-Edgar_Germain_Hilaire_Degas_018-1-233x300.jpg)
この人物はあえて顔が見えないように
描かれています。
愛人の晴れ舞台を袖から見ている
パトロンは一体どんな表情なんでしょうかね。
![不釣り合いなカップル](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/09/Lucas_the_Elder_Cranach_-_The_Unequal_Couple_-_Peinture_de_Lucas_Cranach_the_Elder_1472-1553_-_1522_-_Oi_-_MeisterDrucke-995387-1-220x300.jpg)
ここまで説明した
醜い男性×美少女という構成は
それまでの西洋美術史にも度々登場
しています。
2人を対比することで、
若い無垢な女性の性的魅力を際立たせる
効果を狙っているのです。
![エドガー・ドガ](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/06/Edgar_Degas_self_portrait_1855-1-238x300.jpeg)
そしてドガには
どうもそのような性癖があったようです。
これがドガの作品に
(醜い)男性が描かれている理由です。
山田さんはこれらの伝統は
現代のAVなどにも引き継がれていると
話します。
NTR(寝取られ)というジャンルが
確立されており、男性を中心に
人気があるようです。
ドガの隠された一面
そして更に、
ドガ自身は女性と全く話せない
とてもシャイな人物であったという
友人マネの証言があるようです。
山田さんはその証拠に、
ドガの描く踊り子は正面から
描いたものが1枚もないと話します。
確かにそうかもしれません。
![舞台のバレエ稽古](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/09/2e30103c3d04aeea8c78f28429601f4b-1-300x222.jpg)
ドガの作品に登場する踊り子の
全てが視線を外されています。
加えて、ドガは女性の背中と脚を
中心に描いていることが多いです。
この理由を山田さんは
女性が苦手な人は女性的な部分(胸やお尻)を
描くことが苦手なので、
男女差があまりない背中や脚を描いたと
説明していました。
ドガがNTR大好きだったから
まとめ
![エトワール](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/06/335px-Edgar_Germain_Hilaire_Degas_018-209x300.jpg)
✓当時のオペラ座の踊り子は金持ちの愛人
✓ドガには屈折した性癖があった
✓女性が苦手なドガは踊り子を正面から描けない
今回はドガの作品についてでした。
印象派の中では唯一、
生きている頃に売れた画家である
ドガですが、隠された彼の内面や
作品の背景がたくさんありましたね。
今回もとても楽しいお話でした。
次回はドガの彫刻作品についてです。
✓元祖NTR絵画
✓屈折した性癖のドガ
✓女性が苦手だった一面も