この記事は
山田五郎さんのYoutubeチャンネルである
「山田五郎オトナの教養講座」より、
動画の内容を文字に起こして
解説していくものです。
第11回目のタイトルは
【実は謎だらけ!?「鳥獣人物戯画」を解説】
今回は国宝の鳥獣人物戯画についてです。
まだ動画をみてない方は
是非ご覧になって下さい。
文字の方が理解しやすい方は
ぜひ最後までお付き合いください。
鳥獣人物戯画はどんな意味がある?
![鳥獣人物戯画‐相撲](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/11/Chouju_sumo2-1-300x198.jpg)
![鳥獣人物戯画‐盗み](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/11/Chouju_thief-1-300x128.jpg)
上の2枚は鳥獣人物戯画の
特に有名な場面です。
歴史の教科書など、
1度は見たことある人が
多いのではないでしょうか?
ところが鳥獣人物戯画について
詳しく知っている人は少ないですよね。
![甲巻](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/11/Chouju_swimming-1-300x128.jpg)
鳥獣人物戯画は甲・乙・丙・丁と
呼ばれる全4巻からなる絵巻物です。
1巻で約11mほどあり、
全4巻だと約44mにもなる絵巻です。
先の2場面を合わせても1mにもならず、
ほとんど内容を知られていない絵巻
といえるでしょう。
![第1紙 - 第4紙前半](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/11/1280px-Chouju_1st_scroll-01-1-300x44.jpg)
今回はそんな謎が多い
鳥獣人物戯画がテーマです。
全巻の構成
![乙巻](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/11/Chouju_lions-1-300x102.jpg)
有名なのは最初の甲巻なのですが、
次の乙巻にはタッチの違う
写実的な動物が描かれています。
![乙巻(一部)](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/11/640px-Chojyugiga2nd-1-300x116.jpg)
ちなみに戯画には滑稽な絵とか
ふざけて描いた絵という意味があります。
ところが乙巻は戯画っぽい絵には見えません。
山田さんは乙巻を
「ほぼ動物図鑑」と表現しています。
動物図鑑や絵手本
![丙巻](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/11/640px-Chouju_tugwar-1-300x134.jpg)
次に丙巻には人物が描かれます。
![丙巻(一部)](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/11/640px-Chouju3rdscroll_animals-1-300x150.jpg)
後半には擬人化した動物たちが再度登場。
つまり前半は人物、
後半は動物戯画の構成です。
人物戯画→動物戯画
![京都国立博物館](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/11/640px-Kyoto_National_Museum_2009-1-300x127.jpg)
京都国立博物館が2009年から4年かけて
行った平成の大修理では、
丙巻が前半と後半で別々に描かれたものを
合成して1つの巻にしたのではなく、
表裏で合わさっていた和紙を剥がし、
繋ぎ合わせて絵巻物に仕立て直していた
ことがわかりました。
表に人物、裏に動物が描かれていたそうです。
![丁巻](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/11/640px-Chouju_prayer-1-300x165.jpg)
そして最後の丁巻になると、
また異なるタッチの絵が描かれています。
![丁巻](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/11/Chouju_monks-1-300x141.jpg)
丙巻に擬人化された動物は
描かれていません。
すごくラフに描かれているようですが、
見る人が見れば絵の上手い人が丙巻を
描いていることがわかるそうです。
![鳥獣人物戯画‐相撲](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/11/Chouju_sumo2-1-300x198.jpg)
ここまでの情報をまとめると
以下のようになります。
- 鳥獣人物戯画は甲・乙・丙・丁の全4巻からなる
- 各々絵のタッチや性格が違う
- 全44mもある絵巻物なので、単なる「おふざけ」で描いた絵とは考えにくい
- なんらかの目的があって絵巻物にまとめた
ここで山田さんは、
なぜ絵が違うものを
鳥獣人物戯画としてまとめたのか。
そして一体どんな物語なのか。
全くの謎であると話します。
鳥獣人物戯画の謎に迫る
![鳥獣人物戯画‐盗み](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/11/Chouju_thief-1-300x128.jpg)
すこし前までは鳥獣人物戯画の作者は
鳥羽僧正(とばそうじょう)であると
されていました。
しかし現在は鳥羽僧正ではなく、
複数の人物で制作されたものと
考えられています。
![高山寺](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/11/640px-Kozanji_Kyoto_Kyoto11s5s4592-1-300x200.jpg)
また今作品は京都の高山寺に
収蔵されており、別格の扱いと
なっていることでも知られています。
![華厳宗祖師絵伝](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/11/43kegon01_l-1-300x91.jpg)
この高山寺はもともと華厳宗系のお寺で
華厳宗の開祖たちの伝記である
「華厳宗祖師絵伝」という巻物と、
![明恵上人像](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/11/290px-Semuiji_Myoue-1-121x300.jpg)
高山寺の実質的な開基とされている
明恵上人を描いた「明恵上人の姿絵」。
それと鳥獣人物戯画を合わせ
国宝として保管しているのです。
つまり
- 宗派の開祖にまつわる国宝
- 高山寺の開基を描いた国宝
- 鳥獣人物戯画
これらが同等の扱いなわけです。
こうやってみると、
なぜ鳥獣人物戯画が特別な扱いなのか
謎が深まります。
(鳥獣人物戯画は描かれている紙も
質の良いものではないそうです)
![第1紙 - 第4紙前半](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/11/1280px-Chouju_1st_scroll-01-1-300x44.jpg)
ここで山田さんは「実は戯画ではなく、
宗教的な意味があるのではないか?」
と話します。
今作品はその軽快なタッチから
日本最古の漫画と称されることもありますが、
あまりに特別な扱いなのもあって
最近ではそのように称さない方が良いとも
されているようです。
明恵上人にヒントが?
![明恵上人](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/11/pic_01-1-300x279.png)
鳥獣人物戯画が高山寺に入ったのは
明恵上人が亡くなった後のこと。
しかし高山寺の開基なわけですから
この人物になにか鳥獣人物戯画に関する
秘密があるのかもしれません。
そこで山田さんは
明恵上人についての説明を始めます。
![明恵上人](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/11/675px-Myou-e-1-281x300.jpg)
明恵上人は24歳の頃、
仏の道を極めるために
自ら右耳を切り落とした
といわれています。
![フィンセント・ファン・ゴッホ](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/11/645px-Van_Gogh_-_Selbstbildnis_mit_verbundenem_Ohr_und_Pfeife-1-269x300.jpeg)
自分の耳を切り落としたといえば
あのゴッホと同じですね。
山田さんは
「歴史上で自分の耳を切り落としたのは
ゴッホと明恵上人くらいだ」と話します。
![鷹島石](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/11/p02-1-300x300.jpg)
また、明恵上人は仏教の始まりの地である
インドに強い憧れを抱いていたそうで、
鷹島(長崎県)で拾った石を
「インドとつながる海の水に洗われた石」
とずっと大事に持っていたそうです。
そんな明恵上人は教えも少し変わっていて
当時、神仏習合の思想があった日本で
春日大社の神、住吉大社の神、インドの神、
中国の神の4つを祀っていました。
日本土着の神と外来の神への信仰を融合調和すること
4つの神を祀ったのは明恵上人くらいで、
その教えもかなり複雑になってしまったとか。
![](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/11/B205-FyCYAAlC0_-1-300x277.jpg)
金剛力士像で有名な快慶には
犬の彫刻を頼むほど動物好きであった
とも言われている明恵上人。
そのせいか高山寺には動物彫刻が
かなり置いてあるそうです。
そして山田さんはこの動物好きが
なにか宗教と関係するのではないかと
話されます。
![絹本着色涅槃図](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/11/1-1-240x300.jpg)
たしかに釈迦入滅など、
仏教と動物には大きな関わりがあります。
![鳥獣人物戯画‐盗み](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/11/Chouju_thief-1-300x128.jpg)
そう考えれば鳥獣人物戯画に
描かれている動物たちにも
なにか宗教的(仏教的)な意味が
込められている可能性があります。
しかし今回、全貌は明らかにされておらず
真相は謎のまま。
動画の終盤、山田さんは
「これこそ本当の謎」と言われていました。
まとめ
![鳥獣人物戯画‐相撲](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/11/Chouju_sumo2-1-300x198.jpg)
✓鳥獣人物戯画は全4巻ある絵巻物語
✓高山寺では別格の扱いをされている国宝
✓高山寺の開基である明恵上人は動物好きの変わり者
✓宗教的な意味が込められているかも。しかし真相は謎のまま
今回は初めての日本美術のお話でした。
山田さんでもわからないことが多い作品。
謎が多い作品というのもまた違った
魅力がありますね。
次回はミレーの作品についてです。
✓謎の多い鳥獣人物戯画
✓日本最古の漫画と称されているが…
✓宗教的な意味があるかもしれない