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ムンクの「叫び」は何を叫んでいるの?/山田五郎オトナの教養講座③

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記事の要約
  1. 叫んでいる絵ではない
    →叫びが聞こえている
    →画家の内面を表現
  2. ゴッホとの共通点
    →意図的か無意識か
    →表現主義
  3. 女性関係でドロドロしたムンク
    →精神的に不安定な作品の方が
    評価を得ている

 

この記事は
山田五郎さんのYoutubeチャンネルである
「山田五郎オトナの教養講座」より、
動画の内容を文字に起こして
解説していくものです。

第3回目のタイトルは
【ムンクの「叫び」は何を叫んでいるの?】

あなたはムンクの叫びが
なにを表現しているか知っていますか?

まだ動画をみてない方は
是非ご覧になって下さい。

 

 

文字の方が理解しやすい方は
ぜひ最後までお付き合いください。


ムンクの「叫び」はなにを叫んでいる?

 

scream

世界的に有名なムンクの「叫び」

あなたは手前中央の人物が
なにをしていると思いますか?

実はこれ…叫んでないんです。

手前中央の人物はムンク自身を
描いているといわれています。

そして作中のムンクは、
叫びが聞こえているのです。

(作品をよくみるとムンクは
両手で耳を塞いでいることが
わかるかと思います)

この作品はムンク本人が
実際に体験したことに基づいており、
その時のことをムンクは
日記に記しています。

僕は、2人の友人と散歩していた。日が沈んだ。突然空が血のように赤く染まり、僕は憂鬱な気配に襲われた。立ち止まり、欄干に寄りかかった。青黒いフィヨルドと市街の上空に、血のような、炎を吐く舌のような空が広がっていた。僕は一人不安に震えながら立ちすくんでいた。自然を貫く、ひどく大きな、終わりのない叫びを、僕はその時感じたのだ

つまりムンクの「叫び」は
叫んでいる場面を
描いているのではなく、
叫びが聞こえたので必死に
耳を塞いでいる場面なのです。

しかも一緒にいた2人の友人には
叫びが聞こえていません。

自分にしか聞こえない叫び。

それは自分の内側精神から
聞こえる叫びです。

 

「叫びとは?」

自分の心の絶叫を聞き、恐れ苦しむ姿

赤い空

 

「叫び」で描かれている
赤い空はノルウェーで実際に
おこる自然現象です。

また、グネグネした景色も
オスロ・フィヨルドという
入り組んだ湾で実際にあるものです。

それらがムンクには
歪んで見えており、
ムンクの精神状態が反映された絵
なっているようです。

叫びが聞こえるほどの不安とは?

 

Munch
自画像

ムンクは5歳の頃、
結核で母親を亡くしました。

そして14歳の頃には
姉も結核で亡くしてしまいます。

更には弟や父親も結核で亡くし、
妹も精神を病んでいました。

このようにムンクは幼い頃から
死や病に直面し、
いつかは自分もそうなるのではないかと
常に恐怖を感じていたといいます。

 

sick child
「病める子」1885‐86年

初期の頃は死をモチーフにした
作品も描いていました。

そんなムンクはなかなか
国内ノルウェーで画家として芽が出ませんでした。

その後パリへ留学するも、
そこでも芽が出ないムンクは
ドイツのベルリンへ移ります。

最初の「叫び」は1893年、
ベルリンの展覧会に出品されました。

その時も評論家からの支持は
得られませんでしたが、
画家仲間からは支持を得ていたそうです。

ムンクとゴッホの共通点

 

vincent van gogh

ムンクとゴッホは同時代の画家です。

ムンクと違ってゴッホは
見たものしか描けない画家でした。

しかしゴッホの作品も画家自身の
精神状態が顕著に反映されており、
内面を表現している点では
ムンクと共通しています。

 

two cypress trees
ゴッホ「二本の糸杉」1889年

糸杉を描いたこの作品も、
ゴッホ自身には本当にこのように
見えていたそうです。

ムンクは意図的に、ゴッホは無意識に、
画家の内面を描いたのです。

 

thumbnail

新しい表現

 

この時代、ヨーロッパ各地で
画家自身の不安や恐怖、喜びなど
内面の世界を描く動きが活発化
していきました。

写実的に描くことから脱し、
内面を描くという新たな時代の表現を
ムンクや表現主義の画家たちは
行ったのでした。

 

scream

「叫び」に関しては、
自分にしか聞こえない叫びや
死に対する不安などを表現するため、
意図的に赤い空の色を強調させたり、
景色を歪ませて描くといった趣向が
凝らされています。

 

表現主義

20世紀初頭にドイツで生まれた作者の内面世界を表現しようとする考え方

ムンクについて

 

Edvard Munch
エドヴァルド・ムンク

ここで話はムンクの女性関係に移ります。

19世紀末に流行した
概念にファム・ファタル
いうものがあります。

ファム・ファタル

男にとっての運命の女、もしくは男を破滅させる魔性の女という意味

山田さんはこういったものに
ハマる男性心理を、
他力本願の破滅願望と説明します。

ムンクは友人の彼女とデキてしまったり、
別の恋人とトラブルになって
左手の中指を銃で撃たれたり、
女性関係でドロドロすることが
多い人物でした。

そんなムンクは生涯独身で、
アルコール依存症で入院経験も
ありました。

(まさに破滅系の人物…)

しかし意外と長生きで
80年の生涯を終えるまでに
ドイツで表現主義が流行したり、
ノルウェーで国民的画家になったりと
生きているうちに成功を収めた人物でした。

ヒトラーと表現主義

 

Hitler
アドルフ・ヒトラー

ムンクが活躍した1930年代のドイツは、
ヒトラーが支配していた時代でした。

そしてヒトラーといえば、
画家になりたかった人物
知られています。

 

ヒトラーの描いた絵
ヒトラーの描いた絵
ヒトラーの描いた絵

ウィーンの美術学校への入学を
望んでいましたが、
合格できなかったヒトラー。

そんな彼の作風は、
ムンクの表現主義の絵とは異なる、
いわゆる普通の絵でした。

よって彼にとっての表現主義は
認めたくない存在であり、
これがナチスで有名な
退廃芸術の原因といわれています。

 

退廃芸術

表現主義的な芸術や抽象的な芸術は弾圧され焼却処分されるなどした

ムンクが評価された時期

 

晩年のムンクはナチスの
弾圧などもあり、
不遇な時期でもありました。

しかし彼は生きているうちに
評価と支持を獲得した画家です。

山田さんは
ムンクの作品が良かった時期は
女性関係でドロドロしたり
悩んでいたりと、
不安定な頃だといいます。

このあたりはアーティストっぽい
印象を受けますね。

 

叫びの秘密

ムンクの内面の不安が表現された傑作

まとめ

 

scream
まとめ

✓「叫び」は叫びが聞こえている絵

✓自身の内面を意図的に表現した

✓弾圧をうけた時代もあった

✓悩んでいた頃の作品の方が
評価を受けている

ムンクもゴッホと同じように、
精神的に不安定な人物でした。

しかしそういった不安定な時期に
描かれた作品の方が評価を得ていると
いうのは奥が深いですね。

次回はドラクロワの作品についてです。

 

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