この記事はYoutubeチャンネル
「山田五郎オトナの教養講座」より、
内容を文字にして解説していくものです。
第19回目のタイトルは
【春 ふっくらお腹に隠された秘密とは?】
まだ動画をみてない方は
是非ご覧になって下さい。
文字の方が理解しやすい方は
ぜひ最後までお付き合いください。
ふっくらお腹に隠された秘密とは?

今回はルネサンスの画家、
ボッティチェリの作品について。
彼の代表作の1つである
春(プリマヴェーラ)にいる、
中央の女性のお腹が膨らんでいるのは
なぜかというのがテーマです。
まずは今作の登場人物の確認からです。

- 西風が春を誘って花が咲く
→ゼヒュロス×クロリス=フローラ - 三美神
→愛・貞節・美を表す - ヘルメス
→5月(初夏)を表す
棒で雲を払っている
今作の一般的な解釈は
西風が来て春が到来し、
初夏へと流れていくというもの。
「春」が描かれた理由とは?
今作はメディチ家の結婚祝いに
制作を依頼されたとされています。
(諸説あります)
そして背景にあるオレンジは
メディチ家の象徴とされています。

メディチとはもともと
薬・医者という意味があり、
メディシンと同じ語源とされています。

メディチ家の紋章には
正露丸のような〇が描かれており、
それがオレンジに似ていることから
メディチ家の象徴とされたそうです。

ですので今作は結婚祝いと共に、
メディチ家の繁栄を祝った作品でも
あります。
となると中央のヴィーナスの
お腹が膨らんでいるのは、
子宝祈願の意味もあるのです。
お腹に隠されたもう1つの意味
ここで山田さんは、
実は子宝祈願の他にも
意味があると話されます。

今作ではヴィーナスの後ろが
光背のようになっていますね。
宗教画において、
光背のある女性と言えば…

そう、聖母マリアです。
ですので今作はヴィーナスとマリアを
掛け合わせているのではないかと、
山田さんは話されます。

ボッティチェリの別の代表作、
ヴィーナスの誕生。
この作品でもヴィーナスのポーズが
イブの姿に似ています。

つまりボッティチェリは
ギリシャ神話を題材とした作品に
キリスト教を混ぜているのです。

彼の生きたルネサンス時代は
ネオプラトニズムという
考え方が流行った時期でした。
ネオプラトニズムとは
肉体を賛美するギリシャ哲学を
キリスト教の精神でコントロールし、
肉体的な愛から精神的な愛へと
高めることを目指したもの。
日本でいう神仏習合です。

ネオプラトニズムの考え方は
「パラスとケンタウロス」という
作品にも表れています。
知恵と戦いの女神であるパラスが、
ケンタウロスを抑えているこの作品は、
人のもつケダモノ性(肉欲)を理性で
コントロールするという解釈ができます。

さらに興味深いことに、
今回のテーマである「春」と
「パラスとケンタウロス」は
2枚並べてメディチ家の別荘に
飾られていたことがわかっています。
このことは、
「春」をただの結婚祝いではなく、
結婚を通してより精神的な愛に
高めていくことを願った
絵でもあるのではと山田さんは話します。
古代哲学者のプラトンも精神的な愛を理想としたことから、プラトン的な愛を語源にプラトニック・ラブとなった
ボッティチェリについて

当時のブームでギリシャ神話の作品を
多く手掛けていたものの、
ボッティチェリはかなり宗教的、
神秘的な内面を持っていた画家でした。
1494年にフランス軍がイタリアを侵略。
それによりメディチ家が追放されると、
メディチ家の快楽的な風俗や政治を
糾弾していたサヴォナローラが
市民の支持を得ます。

サヴォナローラは神政政治を開始し、
ギリシャ神話などの異教的作品や
豪華な工芸品や美術品を焼き払う
虚栄の滅却を行いました。
そしてボッティチェリも
サヴォナローラの教えについて行き、
その後はギリシャ神話的な作品は
描かなくなったといわれています。

加えて晩年は中世に回帰したような
作品を描くようになり、
次第に絵も描かなくなったそうです。
精神的な愛を目指してねという願い
まとめ

✓春はメディチ家の結婚祝い
として描かれた
✓精神的な愛を願う絵でもある
✓晩年の画家は異教的作品を
描かなくなってしまった
次回はアングルの作品についてです。
→子宝祈願
→ネオプラトニズム
→宗教心が強い画家