ネーデルラント地方は、
17世紀初頭に南北に分裂しました。
北部はプロテスタント国のオランダ、
南部はスペイン支配下のフランドルです。
フランドルでは宗教画や祭壇画が求められ、
オランダでは市民層に好まれた
身近なテーマの絵画が描かれます。
まずはこの時代の作品の
画像を確認していきましょう。
目次
フランドル・バロックの特徴
フランドルも元はプロテスタント国で、
スペインの圧政に対抗していました。
ところが1585年にスペインに降伏し、
カトリック国に戻ります。
その際、プロテスタントによって
破壊された美術品を教会内に復活させるため、
画家達に仕事が大量に発注されました。
そしてこの時期にフランドルで活躍した
代表的な画家がルーベンスです。
ピーテル・パウル・ルーベンス
イタリアに留学経験のある
ピーテル・パウル・ルーベンスは
ルネサンスやバロック美術を学び、
それらを独自の様式に昇華させました。
ルーベンス絵画の特徴は、
- 人物たちの動的なポーズ
- 豊満な肉体表現
- 豊かな色彩
- それらをまとめる構成力
などです。
1608年にフランドルの
アントウェルペンに戻った
ルーベンスは宮廷画家となり、
各都市の祭壇画を手掛けました。
また、外交官としても活躍した彼は
祭壇画や物語画の他にも、
肖像画などで優れた作品が残っています。
- 生きた年代
→1577~1640年 - 代表作
→キリスト昇架
→マリー・ド・メディシスの生涯など - なにをした人?
→フランドル・バロックの巨匠。外交官としても活躍し、多くの優れた作品を残している - その他の記事
→「三美神」の女神が太っている理由とは?
アンソニー・ヴァン・ダイク
アンソニー・ヴァン・ダイクは
ルーベンスの弟子として出発し、
後にイングランドで活躍した画家です。
イタリアでも活躍した彼の作品からは
ルーベンスやヴェネツィア派のような
流れる筆致と華麗な色彩を感じます。
彼の描く肖像画は気品とゆとりを感じさせ、
王侯貴族たちの人気を得ました。
そして1632年に英国王チャールズ1世に
招かれて宮廷画家となり、
イングランド絵画に大きな影響を与えました。
- 生きた年代
→1599年~1641年 - 代表作
→英国王チャールズ1世の肖像など - なにをした人?
→フランドル出身の画家。ルーベンスの弟子で、1632年からはイングランドで活躍した
ギャラリー画
17世紀の富裕な市民たちの間では、
美術品の収集が流行りました。
そこで新しく誕生したのが
ギャラリー画です。
↑は美術品収集の様子が描かれており、
ネーデルラント総監夫婦や名士たち、
ルーベンスやヴァン・ダイクといった
画家たちが描かれています。
芸術のよき理解者・保護者であることを
称える意味もあったギャラリー画は、
フランドルの豊かさの象徴でもあります。
オランダ・バロックの特徴
オランダはプロテスタント国なので、
宗教画の需要があまりありませんでした。
加えて王侯貴族がおらず、
その代わりに富を得た商人・市民層が
美術のパトロンになりました。
市民のための絵画なので、
一般家庭に飾られるような
小さめのイーゼル画が流行します。
また絵画のテーマも視覚的にわかりやすい
風景画や風俗画、肖像画が好まれました。
ヤーコプ・ファン・ロイスダール
ヤーコプ・ファン・ロイスダールは
オランダで人気のあった写実的風景画の
頂点に立っていた画家です。
オランダでは風俗画なども人気でしたが、
最も大量に描かれたのが風景画です。
ロイスダールの生涯は
あまり詳しく分かっていませんが、
オランダ黄金時代の風景画で
最も重要な画家とされています。
ロイスダールは後のロマン主義や
バルビゾン派にも影響を与えました。
- 生きた年代
→1628年頃~1682年 - 代表作
→ウェイク・ベイ・ドゥールステーデの風車など - なにをした人?
→オランダ黄金時代の風景画で最も重要な画家。身近な風景をそのまま写し取ったかのような写実的風景画の第一人者
ヨハネス・フェルメール
17世紀オランダ黄金時代の
風俗画で優れた作品を残しているのが
ヨハネス・フェルメールです。
フェルメールの作品は
上流市民層を扱ったものが多く、
繊細かつ優雅な雰囲気が漂います。
またオランダ絵画では、
絵の中に隠された意味が込められている
場合がしばしばあります。
それの解読のヒントになりやすいのが
画中画(絵の中に描かれた絵)です。
例えば↑の場合、
左手にカードを持ったキューピッドは
唯一の恋人に対する貞節の象徴とされ、
女性の前に置かれた椅子も
その相手を待って空いていると解釈されます。
フェルメールの風俗画には
このような寓意が散りばめられた作品が
多いのも特徴です。
- 生きた年代
→1632年頃~1675年 - 代表作
→牛乳を注ぐ女
→真珠の耳飾りの少女など - なにをした人?
→オランダ黄金時代の風俗画の代表的画家。寓意を散りばめた、上流市民をテーマにした作品で有名
レンブラント・ファン・レイン
レンブラント・ファン・レインは
17世紀のオランダでは例外的に、
肖像画や風景画、神話画など
さまざまなジャンルの作品を残した画家です。
イタリア・バロック的な
明暗強調が際立った作品も多く、
人気を博しました。
またレンブラントは、
自画像も多く手掛けました。
美化することなく、
自身の内面的な問題や老いを
そのまま描いたともされる自画像は、
近代的な自我の表現ともされています。
- 生きた年代
→1606~1669年 - 代表作
→夜警など - なにをした人?
→オランダ黄金時代の巨匠。幅広いジャンルの作品を手掛けた。代表作である「夜警」はオランダの国宝とされる - その他の記事
→「夜警」不気味な少女の正体を追え!
まとめ
✓フランドルでは宗教画や祭壇画、
オランダでは風景画や風俗画の
需要が高まった
✓フランドルではルーベンス、
オランダではレンブラントなどが活躍
✓17世紀のオランダ風俗画は
寓意が散りばめられていることが多い
次回はロココ美術を解説します。
→スペイン支配下のカトリック国
→宗教画の需要が高い
→ルーベンスなどが活躍
→プロテスタント国
→身近でわかりやすいテーマが人気
→フェルメールなどが活躍