この記事は
山田五郎さんのYoutubeチャンネルである
「山田五郎オトナの教養講座」より、
動画の内容を文字に起こして
解説していくものです。
第18回目のタイトルは
【「三美神」の女神がムッチリ太っている理由とは?】
今回はルーベンスの作品についてです。
まだ動画をみてない方は
是非ご覧になって下さい。
(年齢制限が設けられています)
文字の方が理解しやすい方は
ぜひ最後までお付き合いください。
「三美神」の女神がムッチリ太っている理由とは?
![The Three Graces](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/06/The_Three_Graces_by_Peter_Paul_Rubens_from_Prado_in_Google_Earth-1-246x300.jpg)
今作は1635年頃に
ピーテル・パウル・ルーベンスが
描いた「三美神」です。
そして今回のテーマは
「なぜ女神が太っているのか」です。
テーマに入る前に、
今作の元ネタであるギリシャ神話を
簡単に確認をしていきましょう。
![Eris](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/06/Eris_Antikensammlung_Berlin_F1775-1-280x300.jpg)
叙事詩「キュプリア」によると、
不和の女神であるエリスは
女神テティスとペーレウスの結婚式に
招かれませんでした。
エリスはその腹いせに、
「最も美しい女神に」と記した黄金の林檎を
宴の場に投げ入れます。
それをきっかけに
ヘラ、アテネ、アフロディテの3女神は
争いを始めてしまいます。
その際、誰が美しいかを決める審判員として
白羽の矢が立ったのはトロイヤ王の
息子のパリスでした。
![Judgment of Paris](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/06/640px-Rubens_-_Judgement_of_Paris-1-300x222.jpg)
これが有名な「パリスの審判」です。
この時、女神たちは様々な賄賂によって
パリスを買収しようとします。
それぞれが提示した賄賂は↓
- ヘラ⇒アジアの君主の座
- アテナ⇒戦いにおける勝利
- アフロディテ⇒最も美しい女
そしてパリスは
「最も美しい女」を選びました。
しかしここで差し出された女性が
敵国スパルタの王の妻だったことから、
トロイア戦争の原因となった…
というエピソードです。
![The Three Graces](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/06/593px-Rubens_Peter_Paul_workshop_-_Die_drei_Grazien_-_1620-24-1-247x300.jpg)
このテーマは非常に人気がありました。
人気の理由は、
女性の美を3方向から描けるからで、
画家として非常に腕が鳴るテーマ
だったそうです。
![The Three Graces](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/06/The_Three_Graces_by_Peter_Paul_Rubens_from_Prado_in_Google_Earth-1-246x300.jpg)
話を戻します。
この三美神は女神の中でも
選りすぐりの美女だったにも関わらず、
なぜぽっちゃりに描いたのか?
その理由には以下のものがあります。
- 当時の美の基準
- 画家の好み
当時の美の基準
まず山田さんは、
スリムな女性が美しいとなったのは
1920年代以降になってからだと話します。
それまでの歴史において
女性は豊満な方が美しいとされていたと。
![Henry VIII](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/01/627px-Henry-VIII-kingofengland_1491-1547-1-174x300.jpg)
それは男性でも同じで、
太っているということは
- 食うに困らない(富裕層)
- 身体が大きくて強い(男性)
- 子供をたくさん産む(女性)
という象徴でした。
ですので逆にいえば、
痩せた女神を描くことはなかった
ともいえます。
![Landing in Marseille](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/06/547px-Peter_Paul_Rubens_035-1-228x300.jpg)
ルーベンス最大の代表作である
マリー・ド・メディシスの生涯でも
そのポイントが押さえられています。
![](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/06/Peter_Paul_Rubens_035-1-190x300.jpg)
この作品はフランス王妃直々に
依頼された全24作品に及ぶ
王妃の生涯を描いたものですが、
王妃も豊満に描かれてますね。
現代では写真なんかでも
痩せているように補正しますが、
昔はむしろ太っているように補正
することもありました。
画家の好み
![The Three Graces](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/06/The_Three_Graces_by_Peter_Paul_Rubens_from_Prado_in_Google_Earth-1-246x300.jpg)
次に山田さんは今作について、
太っているように描くのはいいが
にしてもブヨブヨし過ぎじゃないか?
と話します。
![](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/06/Rubens_Peter_Paul_-_The_Three_Graces-1-300x141.jpg)
たしかに、セルライトまで描きこんだ
今作の女神はかなりブヨブヨしてますね。
これに関しては当時としても、
描いてるのはルーベンスだけでした。
つまり個人的な嗜好の可能性があるわけです。
![peter paul rubens](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2021/07/350px-Rubens_Self-portrait_1623-1-219x300.jpg)
そしてどうやらルーベンスは
ポチャロリ好きの画家だったそうです。
![Hélène Fourment in fur](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/06/512px-Peter_Paul_Rubens_019-1-142x300.jpg)
ルーベンスは49歳の時に
最初の妻に先立たれますが、
53歳で16歳のエレーヌと再婚します。
(自分の息子と同い年だった)
ルーベンスはエレーヌを溺愛し、
最初の妻とは17年で3人の子供を
つくったのに対し、
エレーヌとは10年で子供5人を
つくったそうです。
![](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/06/Peter_Paul_Rubens_019-1-214x300.jpg)
そんなエレーヌの肖像画でも
しっかりセルライトを描いています。
最愛の人の肖像画にも描くほどですから、
ルーベンスはとにかくぽっちゃり好きだった
と言っていいでしょうね。
ちなみに↑の作品を描いた時の
エレーヌは24~25歳。
本当にセルライトがあったのかは
定かではありません。
(画家が盛った可能性もあります)
当時の美の基準×ルーベンスの趣味
まとめ
![The Three Graces](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/06/The_Three_Graces_by_Peter_Paul_Rubens_from_Prado_in_Google_Earth-1-246x300.jpg)
✓三美神は女性を3方向から描ける
人気のテーマ
✓昔は豊満な女性が美しいとされ、
痩せている女性が美しいとされたのは
1920年代以降
✓ルーベンスの嗜好も入っている
次回はボッティチェリの作品についてです。
→当時の美の基準
→ルーベンスの嗜好