13歳からのアート思考の感想・レビュー

サムネ

 

記事の要約

自分だけの答えを見つける

変化のはやい時代だからこそ

固定観念を壊せる

 

子どもにとっても大人にとっても、
いままさに最優先で学ぶべき教科は、
ほかでもなく「美術」であると
私は確信しています。
末永幸歩

この記事ではダイヤモンド社出版の
『13からのアート思考』を紹介し、レビューしたいと思います。



13歳からのアート思考

 

13歳からのアート思考
概要

出版社
ダイヤモンド社
発売日
2020/2/20
著者
末永幸歩
本の長さ
344ページ

著者である末永幸歩さんは
東京学芸大学個人研究員として、
美術教育の研究に励む一方で
中学・高校の美術教師としても
活躍されています。

末永さんは本の冒頭で、
中学生が嫌いになる教科の第一位が美術
であると述べます。

その原因は、
上手に描くための「技術」や
過去の芸術作品についての「知識」を
学ぶことに偏重した授業スタイルに
あるそうです。

クラスにいる美術部の作品と
自分の作品を比べては落ち込んだり…

「自分にはセンスがないんだ」と
思い込んだり…

他の教科の勉強で忙しいときに
無理やり過去の作品の知識を
丸暗記させられたり…

学生時代、同じように
感じたことのある人も多いのでは
ないでしょうか?

人は中学生くらいから
自分がすることの意味
考え始めるようになるといいます。

そしてその時期に
正しい美術の授業を受けないでいると
「美術は自分には必要ないもの」と
思い込み、距離を置き始めます。

その分岐点になる年齢がおおよそ
13歳前後なので、本のタイトルになっています。

 

大人はなぜ絵を描くことから離れるのか

アート思考とは?

 

末永さんは
美術という授業の本来の役割は、
アート的なものの見方=アート思考
身につけることだといいます。

ではアート思考とは何なのでしょうか?

アート思考とは簡潔に言えば
「自分なりの考えを深掘りする」
ことです。

 

パブロ・ピカソ

すべての子どもはアーティストである。
問題なのは、どうすれば大人になったときにも
アーティストのままでいられるかだ。

これはピカソの有名な言葉です。

私たちは誰でもアーティスト性を
もって生まれてきます。

しかし大人になるにつれ、
「自分なりのものの見方・考え方」
喪失していきます。

さらに深刻なのは、
喪失していることすら気付いていない
人も多いことです。

近年、こうした危機感を背景に
大人の世界でも「アート的なものの考え方」
が見直されています。

そんなアート思考には
以下の3つの過程があります。

  1. 自分だけのものの見方で世界を見つめ、
  2. 「自分なりの答え」を生み出し、
  3. それによって「新たな問い」を生み出す

アート思考はこうした思考プロセスであり、
「自分なりの答え」を作り出す作法です。

 

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ビジネスでのアート思考

 

社会

アート思考はビジネスの世界でも
注目を集めています。

アート思考で大成功を収めた例に
iPhoneがあります。

30歳以上の方ならおそらく、
携帯ならガラケー時代を
経験していますよね。

あの当時はどこのメーカーもこぞって
ガラケーモデルの携帯電話を
生み出していました。

それはあの時代の市場調査などで、
ポケットに入る小型の形で、
ボタンで操作する携帯電話が
最も優れているとされていたからです。

言い換えれば、
ガラケーこそ当時の携帯電話の正解であり、
完成形だったのです。

ところがあのスティーブ・ジョブズ
は違いました。

彼にとって市場の分析結果などは
どうでもよく、ただ携帯電話の
「デザイン」や「美しさ」を求めて
iPhoneを開発しました。

まさにiPhoneこそが
彼にとっての「自分なりの答え」
だったわけです。

その後の結果は皆さん
ご存知の通りだと思います。

 

この事例で重要なことは、
誰が決めたでもない自分だけの答えを
探求し続けた結果として大成功を
収めた点です。

論理的思考や分析力は
ビジネスにおいて重要な能力であり、
既存のものから正解を導き出すもの
と考えています。

一方のアート思考は
そういったものとは別で、
0からなにかを生み出すもの
ともいわれたりします。

これがVUCAといわれる現代において
アート思考が重要とされる
大きな理由の1つです。

 

VUCA

社会やビジネスにとって、先行きが不透明で将来の予測が困難な状態のこと

この本のポイント

 

この本は
「自分だけの答え」を見つめるための
アート思考を学ぶ内容です。

それを体系的に理解できるように、
20世紀のアーティスト達の作品
例題として用いられています。

例えば、

緑の筋のあるマティス夫人の肖像 アビニヨンの娘たち 泉

こんな作品です。

アートに馴染みのない人でも
一度は見たことがあるのでは
ないでしょうか?

また、多くの人にとって
「なにが良いのか全くわからない」
作品でもあると思います。

この本では、
こういった作品を中心に
ワークショップ形式で
私たちが無意識に行っている
ものの見方や考え方を顕在化し、
自分なりの答えについて考えさせる
内容になっています。

アートに詳しくない人でも
全く問題ありません。

むしろ全く詳しくない人にこそ
読んで欲しい内容になっています。

上位のレビュー

 

☆4以上のレビュー

アートの見方から、考え方、簡単な歴史まで学ぶことが出来ます。大人にとっても大変良い本です。読んでから、美術館に行くとより作品を楽しむことができます。
自分の思考がさまざまなものに囚われていることを痛感した。でも、それはそれでいいのかもしれないとも思った。ずっと考え続けるための良いテーマをもらえる本だった。

 

☆3以下のレビュー

本のタイトル「13歳からのアート思考」は「14歳からの哲学」からとったのでしょうか。最初のモネの絵画にかえるがいるという子供の話は面白かった。自分固有の見方をしようという内容で6つの作品に絞ったのもよかった。それぞれの作品がなぜ脚光を浴びたのか説明も明確でわかりやすかったです。ただデュシャンとウォーホルの作品もそれまでの美術の価値観を打ち破った意味だと理解できたが、その上で彼らの作品は他にどんな点が評価をされたのかも説明が欲しかった。

オススメしたい人

 

今回の本を特にオススメしたい人は
以下のような方です。

  1. アート思考を身につけたい方
  2. 他人や社会の目を気にして生き辛さを感じている方
  3. 20世紀のアーティスト達がなにを考えて作品を作ったのかを知りたい方

この本では美術史などの解説は
必要最低限に留め、
20世紀のアーティスト達が求めた
「自分だけの答え」はなんだったのか、
私たち個々人にとっての答えはなにかを探る
内容になっています。

ワークショップ形式なので
楽しみながらアート思考に触れることが
できますよ。

まとめ

 

13歳からのアート思考
まとめ

アート思考とはなにかがわかる

自分だけのものの見方・考え方が身に付く

20世紀のアーティストたちが求めたものを学べる

気になった方は
ぜひ手に取ってみて下さい。