このシリーズでは1つの作品に
隠された時代背景や解釈、
メッセージ性を読み解いていきます。
第5回目はフラ・アンジェリコの
「最後の審判」です。
絵画を通して得た知見が
あなたの心のビタミンになれば
幸いです。
最後の審判を解説
![last judgment](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/01/640px-Fra_Angelico_009-1-300x147.jpg)
題名
最後の審判
制作者
フラ・アンジェリコ
制作年
1432~1435年
美術史では
初期ルネサンス
寸法
105cm×210cm
種類
木材にテンペラ
所蔵
サン・マルコ美術館
今作は修道士画家、
フラ・アンジェリコによって
1432~1435年に描かれました。
最後の審判はユダヤ教、キリスト教、
イスラム教の3宗教が唱えている
人類最後の日のことです。
キリスト教ではこの最後の日に、
再臨した主イエスが、
あらゆる死者を蘇らせ、裁きを行い、
永遠の命を与えられるもの(天国)と
地獄に落とされるものとを振り分ける
としています。
![](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/01/1920px-Fra_Angelico_009-1-294x300.jpg)
中央上空に浮かんでいるのがイエスで、
大勢の天使たちに囲まれています。
左側で白い衣を着ているのがマリア、
右側で合掌しているのが聖ヨハネです。
![](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/01/590px-Fra_Angelico_011-1-246x300.jpg)
下には蓋が外れている墓があります。
これは死者が蘇ったことを意味します。
天国と地獄
![天国](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/01/497px-Angelico_giudizio_universale_01-1-300x290.jpg)
左側には天国に選ばれた人々がいます。
抱き合って喜んだり、祈ったり、
輪を作って歓喜のダンスをする
人々もいます。
奥には2人の人物が光る門の中に
入っていく場面が描かれています。
きっとあの先に天国があるのでしょう。
![](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/01/1920px-Fra_Angelico_009-1-1-300x194.jpg)
一方の右側には地獄に落とされる
人々が描かれています。
その中には聖職者っぽい人もいます。
いつの時代も偽善者がいることを
示しているようです。
![](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/01/591px-Fra_Angelico_010-1-246x300.jpg)
地獄では鍋で煮られている人や
鬼に食べられている人、
拷問を受けている人など、
責め苦を受けている人々が
描かれています。
キリスト教での右
![last judgment](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/10/599px-Michelangelo_Giudizio_Universale_02-1-1-250x300.jpg)
ところで最後の審判といえば
システィーナ礼拝堂の天井画として
ミケランジェロが描いた作品も有名ですね。
これらには実はある共通点があります。
それはキリストの右が天国で、
キリストの左が地獄であるということ。
フラ・アンジェリコの作品も、
ミケランジェロの作品も
同じような構図になっています。
これは画家が決めているのではなく、
厳密な決まりがあるのです。
![](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2020/06/sculpture-3408348_1280-300x199.jpg)
右は英語でRight。
これには右だけでなく、
正しいという意味もあります。
聖書では「神の右」という
表現が多用されており、
神を信じる者は常に右側にいる
とされています。
よってキリスト教文化圏では、
右は左よりも上位なのです。
![](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/01/1920px-Fra_Angelico_009-1-294x300.jpg)
今品中でもイエスは右手を少し挙げていて、
手のひらは上を向けています。
反対に左手は下にあり、
手のひらは地の方を向けています。
ここにも右が天国、左を地獄とする
メッセージが隠されていますね。
![Annunciation by Angelico](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2020/10/640px-Fra_Angelico_043-300x208.jpg)
他にも頻出のテーマに受胎告知がありますが、
右にキリストを身籠ったマリアを描くことで、
マリアの方が上位であると示しています。
日本ではあまり馴染みがありませんが、
右と左には相当の格差があるようです。
メッセージ性
![last judgment](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/01/640px-Fra_Angelico_009-1-300x147.jpg)
ここでもう一度
最後の審判を見てみましょう。
中央のイエスを中心に
左右で全く異なる世界観が
描かれています。
天国に行くものたちは
喜びに満ち溢れ、
地獄に落ちる人々には
一切の情け容赦もありません。
ここからあなたは
どんなことを感じますか?
是非、あなたなりのメッセージを
受け取ってください。
まとめ
![fra_angelico](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2020/10/380px-Fra_Angelico_portrait-1-238x300.jpg)
✓人類最後の日に行われる最後の審判
✓イエスによって天国か地獄かが決まる
✓キリスト文化圏では右は左よりも上位
最後に画家のアンジェリコについて。
15世紀のフィレンツェで活躍した彼は
「天使のような修道士」の異名をもつ
宗教画家でした。
1455年に亡くなりますが、
それから500年以上経った1982年に
ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世によって
福音(ベアト)に列せられ、
ベアト・アンジェリコという名前で
呼ばれるようになります。
ベアトとは聖人の手前の存在を指します。
彼の評判と作品が年百年も後世に
継がれたからからこその功績でしょう。
最後まで読んで頂き、
ありがとうございました。
→人類最後の日のこと
→死者は蘇る
→神の右