このシリーズでは1つの作品に
隠された時代背景や解釈、
メッセージ性を読み解いていきます。
第9回目はカラヴァッジョの
「聖マタイの召命」です。
絵画を通して得た知見が
あなたの心のビタミンになれば
幸いです。
聖マタイの召命を解説
![Calling of St. Matthew](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2021/04/507px-Michelangelo_Caravaggio_040-1-300x284.jpg)
題名
聖マタイの召命
制作者
ミケランジェロ・メリージ・
ダ・カラヴァッジョ
制作年
1599~1600年
美術史では
初期バロック
寸法
322cm×340cm
種類
油彩
所蔵
サン・ルイジ・デイ・
フランチェージ教会
画家のカラヴァッジョは
バロック美術の先駆者としてだけでなく、
後世にも多大な影響を与えた人物として
知られています。
彼の初期の傑作である聖マタイの召命は
1600年頃に公開されました。
この作品は当時のローマの人々に
大きな衝撃を与え、画家が有名になる
きっかけとなった作品です。
![Church of San Luigi dei Francesi](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/04/サンルイージ・ディ・フランチェージ教会-300x200.jpg)
作品右側からさすスポットライトの
ような光は、教会の窓から差し込む
現実の光とマッチするよう設計されています。
絵画世界と現実世界との境界を
取り払う工夫の1つです。
画家のカラヴァッジョは
作品の評判が高まり、裕福になるにつれて
飲み屋を渡り歩くようになり、
各地で問題を起こすことも増えていきました。
誰がマタイなのか?
![Calling of St. Matthew](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2021/04/507px-Michelangelo_Caravaggio_040-1-300x284.jpg)
今作はマタイによる福音書、9章9節にある
イエスが収税所で働いていた
マタイに声をかけ、マタイが呼びかけに
こたえて付いて行ったという
内容をもとに描かれています。
この作品で現在も論争になっているのは
「誰がマタイなのか?」という問題です。
![](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/04/1141px-Michelangelo_Caravaggio_040.jpg)
当初はキリストを見つめ、
「私ですか」と自分のことを指さす
人物がマタイとする見方が一般的でした。
![](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/04/Michelangelo_Caravaggio_040-1-1.jpg)
ところが1980年代に、
左側のうつむく若者がマタイであると
指摘する美術史家が現れました。
ひげを生やした男性が指さすのは
自分ではなくお金を数えている
若者であるという見方をとったのです。
![](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/04/1141px-Michelangelo_Caravaggio_040-2-1-285x300.jpg)
しかし1990年に入ると
若者=マタイ説に反論が出されます。
その理由はひげの男性の右手です。
(画像矢印)
テーブルの上で金貨を握っていて
テーブルを叩いているようにも見えます。
![](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/04/1141px-Michelangelo_Caravaggio_040-1.jpg)
加えて男性の帽子にご注目下さい。
金貨が付いています。
このことからひげを生やした男性は
徴税人で、税金の支払いを渋っている
若者に対して支払いの要求をしている
と解釈したのでした。
スポットライトが照らすのは…
![Calling of St. Matthew](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2021/04/507px-Michelangelo_Caravaggio_040-1-300x284.jpg)
ここでもう一度
全体像を見てみましょう。
マタイは一体誰なのか。
現在も続く論争ですが、
あなたはどのように思われますか?
ちなみに右側からさす光は
ひげを生やした男性の方を照らしている
ようにも見えますね。
とするとこの作品の主人公は…
まとめ
![Caravaggio](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2021/06/542px-Bild-Ottavio_Leoni_Caravaggio-1-226x300.jpg)
✓バロック時代の先駆けとなった作品
✓聖マタイは誰か、論争が続いている
✓ひげを生やした男性=マタイ説が優勢
最後に画家のカラヴァッジョについて。
2週間仕事をしたら、1,2か月は
ほっつき歩いたという証言が残っている
カラヴァッジョ。
名画を次々と生む一方で、
超喧嘩早い性格の彼は
作品数に比例するかの如く、
犯罪歴も増やしていきました。
殺人を犯して死刑判決まで受けた
画家もあまり例を見ません。
良くも悪くも、
歴史に名を残した人物かもしれませんね。
最後まで読んで頂き、
ありがとうございました。
→1600年頃に公開
→収税所のマタイに声をかけた場面
→現在も続いている