このシリーズでは1つの作品に
隠された時代背景や解釈、
メッセージ性を読み解いていきます。
第8回目はオディロン・ルドンの
「眼=気球」です。
絵画を通して得た知見が
あなたの心のビタミンになれば
幸いです。
眼=気球を解説
![eye-balloon](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/06/387px-Redon.eye-balloon-1-242x300.jpg)
題名
眼=気球
制作者
オディロン・ルドン
制作年
1878年
美術史では
象徴主義
寸法
45cm×31.6cm
種類
リトグラフ
所蔵
ニューヨーク近代美術館
今作はフランス象徴主義に分類される
ルドンによって制作されました。
幻想的な世界を好んで題材にした彼の
初期の作品は「黒の時代」と呼ばれています。
同時期にはあの印象派の活躍もありました。
しかし、ルドンは全く趣向の異なる
作品を多く手掛けています。
![cactus man](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/03/471px-Redon_cactus-man-1-196x300.jpg)
一切の色のない作品は
木炭のみで描かれています。
描かれているものも非日常的で
どこか不安感を感じるものばかり。
ルドンとは一体どんな
人物だったのでしょうか?
幸福への飢餓
![](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/03/cat-g60d4a9462_640-1-300x200.jpg)
ルドンは1840年にフランスのボルドーに
生まれますが、どういうわけか生後2日で
伯父夫妻の元に預けられます。
そこで幼少期を過ごしたルドンでしたが
病弱で伯父夫妻の手を煩わせ、
外出はあまりせずに
よく庭で夢想して過ごす子だったようです。
![](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/03/pencils-g366264921_640-1-300x169.jpg)
その後寄宿学校に入学したルドンでしたが、
内向的な彼は学校に馴染めず
友達も少なかったようです。
そんな幼少期の経験が
「黒の時代」の作品に大きな影響を
与えていると言われています。
![](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/03/poppies-g6202ead32_640-1-300x200.jpg)
また、幼少期に彼は
植物学者のクラヴォ―と出会い
植物学や生理学に関する知己を得ます。
その影響もあり彼は生涯を通じて
自然の物質界とは別に存在する、
目に見えない神秘的な世界を
表現するに至ったようです。
眼
![](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/03/eye-g3f6e3d672_640-1-300x200.jpg)
そんなルドンにとって
眼はとても重要なパーツでした。
幼少期の1人遊びで培われた
自分の内面を見る眼。
他人の本質を見抜く眼。
眼を通して知性を養っていくことが、
人として生きていくためには不可欠だという
ルドンの思いがそこにはあるようです。
黒の時代の後
![close your eyes](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/03/485px-Odilon_Redon_-_Closed_Eyes_-_Google_Art_Project-1-243x300.jpg)
眼=気球を発表した10年後の作品
「目を閉じて」を見てみると、
黒の時代にあった不安感などが
消えているように思われます。
この頃ルドンは50歳。
生後半年で長男を失うという事件から
3年後の1889年に次男が誕生。
この頃から彼の作品は大きく変化し、
豊かな色彩を用いるようになったと
言われています。
画家自身が改めて、
世界の素晴らしさを実感したのでしょうか。
目玉おやじ
![Medama Oyaji](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2023/03/Sakaiminato_Mizuki_Shigeru_Road_Medama-oyaji_Statue_1-1-225x300.jpg)
実はルドンの影響を受けた
日本人アーティストがいます。
それはゲゲゲの鬼太郎で
有名な水木しげるさん。
彼は小学校3年生の時に父親が買ってきた
ルドンの画集に心を惹かれ、
なかでも目をモチーフにした作品を
気に入っていたとか。
その後、漫画家となった彼は
ルドンの作品をインスピレーションにして
あの「目玉おやじ」を生んだそうです。
水木さんは
ルドンとの出会いなくしては、
目玉おやじは生まれなかった
と公言しています。
メッセージ性
![eye-balloon](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/06/387px-Redon.eye-balloon-1-242x300.jpg)
ここでもう一度
目=気球を見てみましょう。
幼少期に体験した心象が
色濃く反映されたとする今作品。
あなたには目=気球が
どのように見えますか?
周りから拒絶されたような不安感?
落ち着かなくなるような恐怖感?
モノクロームのような孤独感?
是非、あなたなりのメッセージを
受け取ってください。
まとめ
![Odilon Redon](https://arttayousei.online/wp-content/uploads/2022/06/330px-Odilon_Redon-1-206x300.jpg)
✓内向的だったルドン
✓次男の誕生を機に作風が変わった
✓「目玉のおやじ」誕生のもとになった
ルドンが想像上の生き物を描く際、
参考にしていたのが葛飾北斎の
「北斎漫画」だったと言われています。
つまり彼も日本美術の影響を
受けていたのです。
日本の影響を受けたルドンを
また日本人が逆輸入して影響を受ける。
なんとも面白い繋がりですね。
最後まで読んで頂き、
ありがとうございました。
→幼少期の体験が影響している
→豊かな色彩を用いるように
→目玉おやじ