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北方ルネサンスとは?特徴や代表作を解説【西洋美術史⑭】

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記事の要約
  1. 北方ルネサンスとは?
    →復興的活動はない
    →油絵など独自な進展があった
  2. 細密描写
    →北方絵画の特徴
    →ファン・エイクに代表される
  3. 世界風景
    →パノラマ的風景のこと

ネーデルラント今のオランダやベルギーやフランス、
ドイツ語圏の国々で起こった
15~16世紀の芸術運動を
北方ルネサンスと呼んでいます。

ルネサンスと名前がついていますが、
イタリアのそれとは全く異なります。

まずはこの時代の作品の
画像を確認していきましょう。

Mérode Altarpiece portrait of a young woman crucifixion Statue of Mr. and Mrs. Arnolfini The Ghent Altarpiece garden of pleasures flight to egypt hunter in the snow

Rogier van der Weyden
ファン・デル・ウェイデン
Jan van Eyck
ヤン・ファン・エイク
Hieronymus Bosch
ヒエロニムス・ボス
Joachim Patinir
ヨアヒム・パティニール
Pieter Bruegel
ピーテル・ブリューゲル


美術史年表

・北方ルネサンス⇒15~16世紀
宗教革命⇒1517年~

マニエリスム⇒16世紀半ば~



北方ルネサンスとは?

 

Yarovets
アルプス山脈の1つ「ヤロヴェツ」

イタリアのルネサンスは
古代文化の復興を意味しましたが、
北方での復興的活動は
あまりありませんでした。

そこでルネサンスという言葉では
一括りにできないと判断されたことで、
北方ルネサンスという別の表現を
使うようになりました。

 

oil paint

ネーデルラントでは15世紀初頭から
油絵技法が確立します。

それまでの主流はテンペラという
顔料に卵を混ぜて描くものでした。

一方の油絵は

  • 透明性が高い
  • 光沢がある
  • 遅乾性でテンペラより精緻な描写が可能

といった特徴があり、
後にイタリアにも伝わりました。

 

Mérode Altarpiece
カンピン「メロードの祭壇画」1425‐1430年

そしてその油絵を
最初の頃に使いこなしたのが、
初期ネーデルラント派の画家である
ロベルト・カンピンです。

遠近の感覚はまだ未熟ですが、
人物の量感や個別性のある容姿、
立体的なドレイパリーはとても写実的です。

自然を正確に模倣しようとするこだわりは、
ネーデルラント絵画の基盤ともいえます。

 

ロベルト・カンピン
  • 生きた年代
    →1375~1444年
  • 代表作
    →メロードの祭壇画など
  • なにをした人?
    →初期ネーデルラント派の偉大な画家とされる。新技術の油絵を使いこなした最初の1人

北方ルネサンスの特徴

 

Madonna and Child of Van der Paale
ファン・エイク「ファン・デル・パーレの聖母子」1434‐1436年

北方ルネサンスの大まかな特徴
以下のようになります。

  1. 写実的
  2. 油彩画による細密描写
  3. 宗教的な主題をより身近に
    世界風景(後述)

また絵画のジャンルに関して、
宗教画や肖像画が多く描かれましたが、
物語性のある絵や神話画は
ほとんど描かれませんでした。

ここからは代表的な画家や作品を
解説していきます。

ロヒール・ファン・デル・ウェイデン

 

portrait of a young woman
「若い女の肖像」1435年

ロヒール・ファン・デル・ウェイデン
カンピンの弟子にあたる画家です。

師の造形性を引き継ぎつつ、
優美な雰囲気の肖像画を描きました。

 

crucifixion
「十字架降架」1435年

宗教画も多く手掛けており、
↑の作品は北ヨーロッパで
最も人気で画家の評価を
不動のものにした作品です。

 

Rogier van der Weyden
ファン・デル・ウェイデン
ファン・デル・ウェイデン
  • 生きた年代
    →1400~1464年
  • 代表作
    →十字架降架など
  • なにをした人?
    →カンピンの弟子で、初期ネーデルラント派の巨匠の1人

ヤン・ファン・エイク

 

Statue of Mr. and Mrs. Arnolfini
「アルノルフィーニ夫妻像」1434年

ヤン・ファン・エイク
油絵技法を進展、刷新させた
人物として有名です。

北方絵画の特徴である
写実的かつ細密な描写が
存分に発揮されています。

 

The Ghent Altarpiece
「ヘントの祭壇画」1432年

↑はもう1つの代表作である
「ヘントの祭壇画」

兄であるフーベルト・ファン・エイクが
制作途中で亡くなったため、
兄を引き継いで制作したとされる今作は
「北ヨーロッパ写実主義の最終到達点」とまで
言われています。

 

Jan van Eyck
ヤン・ファン・エイク
ヤン・ファン・エイク
  • 生きた年代
    →1395~1441年
  • 代表作
    →アルノルフィーニ夫妻像
    →ヘントの祭壇画など
  • なにをした人?
    →油絵技法を進展させた画家。初期ネーデルラント派の巨匠の1人
  • その他の記事
    アルノルフィーニ夫妻像を解説

ヒエロニムス・ボス

 

garden of pleasures
「快楽の園」1503‐1504年

宗教的な主題に幻想的で謎めいた表現を
組み合わせた作品を作ったのが
ヒエロニムス・ボスです。

↑は代表作の「快楽の園」で、
左からエデンの園、快楽の園、地獄が
描かれた三連祭壇画です。

この作品には謎めいた行為や
動植物が多数描かれていますが、
現在でもそれらの意味のほとんどが不明です。

ちなみにボスは
レオナルド・ダ・ヴィンチと
同時代の画家です。

 

Hieronymus Bosch
ヒエロニムス・ボス
ボス
  • 生きた年代
    →1450~1516年
  • 代表作
    →快楽の園など
  • なにをした人?
    →宗教的な主題に謎めいた表現を使った画家
  • その他の記事
    「快楽の園」ってなんなの?

16世紀のネーデルラント絵画

 

Christ in the House of Martha and Mary
「マルタとマリアの家のキリスト」1552年

16世紀に入ると
ネーデルラント芸術は多様化します。

↑はピーテル・アールツェンの
「マルタとマリアの家のキリスト」という
作品です。

手前に大きく肉やパンが描かれているので、
一見すると静物画のような印象を受けます。

ところが左にキリストの物語が描かれており、
宗教的な作品だとわかります。

 

butcher stall
「肉屋の屋台」1508年

↑もアールツェンの作品。

作品奥の方に貧しい人に食べ物を
分け与える聖人が描かれています。

このように、
それまで中心に描かれるはずだった
宗教的なものをあえて脇にやることで、
宗教的なテーマをより身近なものへ
変える試みがされました。

ヨアヒム・パティニール

 

flight to egypt
「エジプトへの逃避」

ベルギーのヨアヒム・パティニールは、
世界風景と呼ばれる作品を
描いたことで有名です。

世界風景とは空から見下ろしたように
広大な風景を描いた絵のことです。

パティニールはその中に
宗教的なものを描くことで
より身近なものに感じさせました。

アールツェンの静物画と同じような
効果を狙った作品です。

 

Charon Crossing the River Styx
「ステュクス川を渡るカロン」1515年 – 1524年

↑はパティニールの別の作品。
ギリシャ神話が題材です。
今作でもパノラマ的風景が際立っています。

当時のネーデルラントでは
地図制作が盛んに行われており、
そのことが世界風景の誕生に影響した
可能性が示唆されています。

 

Joachim Patinir
ヨアヒム・パティニール
ボス
  • 生きた年代
    →1480~1524年
  • 代表作
    →エジプトへの逃避など
  • なにをした人?
    →世界風景と呼ばれるパノラマ的な風景の絵を描いた。北方風景絵画の先駆者ともいわれている

ピーテル・ブリューゲル

 

hunter in the snow
「雪中の狩人」1565年

16世紀後半にはピーテル・ブリューゲル
風景画と風俗画を掛け合わせた絵画を
生み出しました。

彼は若くしてローマやボローニャで
学びましたが、イタリアのルネサンス的
要素はあまり感じられません。

むしろパティニールの世界風景の
ような要素を感じさせます。

 

peasant dance
「農民の踊り」1568年

ブリューゲルは他にも、
農村の風俗画なども手掛けており、
風刺の効いたユーモラスな作品は
ボスの影響を受けていると考えられています。

 

Pieter Bruegel
ピーテル・ブリューゲル
ブリューゲル
  • 生きた年代
    →1525~1569年
  • 代表作
    →バベルの塔など
  • なにをした人?
    →風景画と風俗画を掛け合わせた絵画を生み出した

まとめ

 

Madonna and Child of Van der Paale
まとめ

✓ネーデルラントでは15世紀初頭から
油絵技法が確立した

✓16世紀から宗教的なものを
あえて脇に描くような作品が制作された

✓空から見下ろしたように広大な風景を
描いた絵を世界風景という

次回はドイツのルネサンスを解説します。

 

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