大使たちを解説

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記事の要約
  1. 英国にきた2人の大使
    →ヘンリー8世を説得
  2. カトリックで禁止されていた離婚
    →反対する者を次々に処刑
  3. メメント・モリ
    →死を思えというメッセージ

 

このシリーズでは1つの作品に
隠された時代背景や解釈、
メッセージ性を読み解いていきます。

第6回目はハンス・ホルバインの
「大使たち」です。

絵画を通して得た知見が
あなたの心のビタミンになれば
幸いです。




大使たちを解説

 

Ambassadors
作品概要

題名
大使たち
制作者
ハンス・ホルバイン
制作年
1533年
美術史では
ドイツ・ルネサンス
寸法
207cm×209.5cm
種類
油彩、板
所蔵
ナショナル・ギャラリー

今作は1533年に描かれました。

宗教革命によって宗教画の需要が
減少したことを背景に、
肖像画家として台頭した
ハンス・ホルバインによる作品です。

向かって左にいるのは
フランスから英国に来た
騎士のダントヴィル。

右はその友人でカトリック神父の
ジョルジュ・ド・セルブです。

実はこの2人が英国へ来たのには
ある大きな目的がありました。

ヘンリー8世

 

Henry VIII
ヘンリー8世

今作は英国王ヘンリー8世
ホルバインに描かせたものです。

当時ヘンリー8世は王妃キャサリンの
侍女だったアン・ブーリンを気に入り、
離婚してアンとの再婚を企てていました。

しかしカトリックで
離婚は認められていません。

これを原因にヘンリー8世は
ローマ法王と対立していきます。

そしてそんなヘンリー8世を説得すべく、
ふたりの大使が訪れたのでした。

 

ところがのちにヘンリー8世は
キャサリンとの結婚無効を宣言、
ローマ法王から破門をされます。

それでも王は、再婚に反対した
側近や司祭を次々に処刑したのでした。

メメント・モリ

 

Ambassadors

今作にはこのような事態を
予見していたかのような描写が
数多く見受けられます。

 

まず人物の衣類や装飾品、
テーブル上段の科学道具は
2人が教養を備えていること
意味しています。

 

下段の開かれた本は
各国で歌われていた讃美歌の楽譜。
これは2人がキリスト教世界の統一
望んでいたことを示しています。

しかしその横にあるリュートは
弦が切れており、散々な状態。
これは対話がままならないという
意味が込められています。

脇にあるフルートも1本だけ飛び出ていて
調和が取れていません。

 

また、左上にはチラリと見える
キリストの磔刑像があります。

本来は政治の使者である大使たちが
宗教的な役割を担っていることを
表しています。

 

そしてふたりの足元。

正面からはよくわからないですが、
右上から見ると骸骨だとわかります。

これはアナモルフォーズ(歪曲法)
という手法で描かれただまし絵の1種です。

ホルバインは他の作品でも
メメント・モリ死を思えという
テーマを表現しており、
今作でも同様のメッセージを
送ろうとしたのかもしれません。

 

メメント・モリ
もともと古代では「今を楽しめ」という意味で使われていたが、キリスト教社会に入ると「現世での楽しみ・贅沢・手柄は空虚でむなしいものである」ことを強調し、来世に思いをはせる誘因となった

メッセージ性

 

Ambassadors

ここでもう一度
大使たちを見てみましょう。

ホルバインは描かれた小道具によって
人物の身分や心境を表現することに
長けていた画家でした。

今作でもその手腕が
遺憾なく発揮されています。

あなたには大使たちが
どのように見えますか?

是非、あなたなりのメッセージを
受け取ってください。

まとめ

 

Hans Holbein
ハンス・ホルバイン
まとめ

ヘンリー8世を説得しにきた大使たち

破門されてもなお、反対派を処刑した

メメント・モリ死を思えというメッセージが込められている

最後に画家のホルバインについて。

ホルバインとはドイツ語で
空っぽの骨という意味。

そのため骸骨は
「ホルバインのサインでは?」
とする説もあります。

どちらにせよ、
大使たちに描かれた骸骨は
彼の卓越した技術が光っていますね。

最後まで読んで頂き、
ありがとうございました。

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