なぜイタリアでルネサンスが始まった?

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記事の要約
  1. 教皇の権力の衰退
    →十字軍遠征失敗
  2. 東ローマ文化が流入
    →懐古主義的なムーブメント
  3. レヴァント貿易の中継地
    →莫大な富を得る
  4. 強力なパトロンの出現
    →メディチ家の台頭

 

ギリシャ・ローマ文化の復興は
ルネサンスとして知られ、
イタリアのフィレンツェで始まりました。

しかしなぜルネサンスの始まりは
イタリアだったのでしょうか?

この記事ではその理由を
解説していきます。


なぜイタリアでルネサンスが始まった?

 

フィレンツェ

ルネサンスがイタリアで始まった理由は
大きくわけて4つあります。

  1. 教皇の権力の衰退
  2. 東ローマ文化が流入
  3. レヴァント貿易の中継地
  4. 強力なパトロンの出現

順番に解説していきます。

教皇の権力の衰退

 

十字軍遠征
第1回十字軍によるアンティオキア攻囲戦

まず、美術史でいうところの
ロマネスクといわれる時代から11世紀~
十字軍の遠征が行われました。

この遠征は、
キリスト教にとって聖地である
エルサレム(イスラエルの都市)を
イスラム教から奪還することを
目的とされました。

ことの発端は東ローマ帝国の一部が
イスラム王朝に占領されはじめ、
東ローマ帝国の皇帝(アレクシオス1世)が
ローマ教皇(ウルバヌス2世)に
援軍を要請したことでした。

 

ウルバヌス2世
ウルバヌス2世 (ローマ教皇)

東ローマ帝国の皇帝とローマ教皇は
互いに権力争いをしており、
要請を受けた教皇にとっては、
自分の地位を知らしめる
絶好のチャンスでもありました。

そこでローマ教皇は
「聖地エルサレムを奪還するのだ」という
大義名分を打ち立てて十字軍編成を行います。

 

エルサレム攻囲戦
エルサレム攻囲戦

1096年に始まった第1回十字軍遠征は
見事十字軍が勝利を収め、
エルサレムの奪還に成功します。

しかしその後イスラム軍が聖地を奪い返すなど
遠征は200年の間に計7回行われ、
結果的にはそのほとんどが失敗に終わります。

十字軍の遠征は
莫大な犠牲者や財政支出を生んでおり、
加えて失敗したので
ローマ教皇や諸侯力は失われ、
西欧では封建社会の崩壊に繋がりました。

東ローマ文化が流入

 

オスマン1世
オスマン1世

13世紀末、東ローマ帝国の東国境地帯に
オスマン1世が率いる
多民族の武装小国家が現れます。

オスマン帝国軍は急速に勢力を増し
14世紀初めには東ローマ帝国に侵攻、
1453年には首都を陥落させ、
東ローマ帝国を滅亡させます。

これによりギリシャにいた
学者たちは難民となり、
その多くがイタリアに渡りました。

学者達はイタリアに渡ると
貿易で富を得たパトロンに
支援してもらいながら、
ローマやギリシャの古典文化を
広めることに力を注ぎます。

 

ローマ時代の遺跡
ローマ時代の遺跡

加えてイタリアにはローマ時代の遺跡が
数多く存在していました。

このことは学者たちの活動を更に後押しし、
懐古主義的なムーブメントを起こしました。

まさにルネサンスに対する考え方の
基盤を築くキッカケとなったのです。

レヴァント貿易の中継地

 

イタリアがレヴァント貿易の
中継点だったことも
ルネサンス発端の大きな要因です。

十字軍の遠征などで
東方とのパイプができたヨーロッパは
北イタリアを中継点に貿易が盛んになります。

イタリアからは主に銀や毛織物を、
東方は主に香辛料を出荷しました。

その結果イタリアの商人たちは
他ヨーロッパの国に対し
香辛料を独占販売するようになり、
巨万の富を得ます。

その富を背景に、
政治的にも力をもったメディチ家のような
一族が台頭するようになります。

強力なパトロンの出現

 

Cosimo de' Medici
コジモ・デ・メディチ

ルネサンスにおいて最も偉大なパトロンで
知られているのがメディチ家です。

メディチ家は銀行業で大きな成功を収め、
ローマやヴェネツィアなど
各地に支店網を広げました。

そして莫大な財力を背景に
政治家としても台頭し、
フィレンツェの実質的な支配者として
数々の芸術家達を支援しました。

この偉大なパトロンの存在も
ルネサンス発端の大きな要因の1つです。

 

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まとめ

 

まとめ
  1. 教皇の権力の衰退
    ⇒全7回に渡る十字軍遠征
    ⇒甚大な被害が出た
    ⇒ローマ教皇の権力衰退
  2. 東ローマ文化が流入
    ⇒東ローマ帝国の滅亡
    ⇒ギリシャの学者がイタリアへ
    ⇒イタリアには遺跡も豊富だった
    ⇒懐古主義的なムーブメント
  3. レヴァント貿易の中継地
    ⇒十字軍遠征により東方と交流
    ⇒イタリアを中継点に貿易が盛んに
    ⇒香辛料を中心に商人が富を得る
  4. 強力なパトロンの出現
    ⇒銀行業で莫大な富を得たメディチ家
    ⇒実質的なフィレンツェの支配者に
    ⇒数々の芸術家を支援した