ロココとは装飾用語の
ロカイユに由来するもので、
18世紀にヨーロッパで流行した
室内装飾、絵画、工芸、服装に
至る様式をさします。
17世紀にみられていた
布教を目的とした儀式的で、
国王を称える厳格な古典様式とは違う
軽快かつ優美な貴族趣味の様式です。
まずはこの時代の作品の
画像を確認していきましょう。
ロココ美術の背景
ルイ14世が1715年に亡くなると、
オルレアン公フィリップ2世が
まだ幼いルイ15世の摂政となり、
時代は享楽的な貴族文化へと変化します。
ルイ16世の時代(1774~1792)には
王権と教会の力は後退し始め、
代わりに貴族と新興上流市民による
軽快で自由奔放なロココ様式が好まれました。
ロココが盛んになった理由の1つに
アカデミー内での色彩論争があります。
色彩論争とは、
アカデミーで理想とする画家は
- 素描のプッサン
- 色彩のルーベンス
のどちらにするかという論争です。
結果的にこの論争は
色彩派が勝利を収めます。
このことは、それまでとは
違った表現や解釈を受け入れる風潮が
生じたことでもありました。
具体的には以下のことが
変わっていきました。
- 表現方法
→厳格さは緩み、彩色は豊かに
→フランドルやヴェネツィア派の
彩色が取り入れられた - 主題の傾向
→親しみやすく日常的なもの
→ただし庶民ではなく、貴族の日常
一方で物語画を優位とする
絵画のヒエラルキーは変わりませんでした。
ロココ美術の特徴
ロココの特徴は室内装飾のロカイユが
由来になっていることからも伺えます。
金色に輝く漆喰に連続するアーチ。
曲線の装飾や湾曲する天井などです。
絵画と装飾が融合したロココ様式は
ヨーロッパで熱狂的な流行を生みました。
それまでの古典的様式との違いは
以下のようになります。
- 古典様式
→直線や左右対称
→安定感のある構造 - ロココ様式
→曲線や連続アーチ
→優美で装飾的
絵画においては
主に以下の画家達が活躍しました。
- アントワーヌ=ヴァトー
- ジャン=オノレ=フラゴナール
- ジャン=シメオン=シャルダン
- トマス・ゲインズバラ(イギリス)
順に解説していきます。
アントワーヌ=ヴァトー
初期のロココ絵画を代表する画家が、
アントワーヌ=ヴァトーです。
ヴァトーは「シテール島の巡礼」で
人々の優雅な身ぶりや軽やかな衣装を表現し、
屋外での男女の語らいを描きました。
ヴァトーはこの作品で
アカデミーへの入会を果たします。
また、ヴァトー入会に際して
雅宴画という新しいジャンルが
新設されました。
雅宴画とはヴァトーの作品のような
屋外で談笑する当世風の衣装で着飾った男女の
集いを描いたものです。
- 生きた年代
→1684年~1721年 - 代表作
→シテール島の巡礼など - なにをした人?
→初期ロココの代表的な画家で、雅宴画というジャンルを生んだ - その他の記事
→シテール島の巡礼を解説
ジャン=オノレ=フラゴナール
ジャン=オノレ=フラゴナールは
ロココ時代も終盤の1760年から
フランス革命までの30年間に
活躍した画家です。
彼の代表作「ぶらんこ」は
18世紀フランスの軽薄で非道徳的な
貴族社会が描かれています。
今作はブランコに乗る貴婦人の
スカートの中を男性が
下から覗き込むという場面。
右奥に描かれているのは貴婦人の夫で、
若い男性は愛人だとされています。
- 生きた年代
→1732年~1806年 - 代表作
→ぶらんこなど - なにをした人?
→18世紀後半のフランスを代表する画家で、ロココ時代の最後を飾った画家
ジャン=シメオン=シャルダン
18世紀のフランスでは上流市民の中にも
美術愛好家が増えていきました。
するとかつてのオランダのように
知識が必要な絵ではなく、
静物画や風俗画などのわかりやすい絵が
求められるようになりました。
その需要に応えた代表的な画家が
ジャン=シメオン=シャルダンで、
彼はフランスの中流家庭の日常を
描き出しました。
↑作品手前で祈りを唱えている子供は
女の子の格好をしていますが、男の子です。
当時は男児の死亡率が高かったので、
魔除けのような意味合いを込めて
男児に女児の格好をさせることがありました。
- 生きた年代
→1699年~1779年 - 代表作
→食前の祈りなど - なにをした人?
→18世紀のフランスで美術愛好家達の要望に応えた画家
トマス・ゲインズバラ
それまでのイギリスは
イギリス人画家ではなく、
外国人画家が美術の主役でした。
ですが18世紀になると
自国の画家の活躍が見られ始めます。
その1人がトマス・ゲインズバラです。
ゲインズバラは若い頃に
フランスのロココ美術を学び、
肖像画や風景画で才能を発揮しました。
女性の衣装の光沢や軽やかさ、
人物たちの感情の機微などを
繊細なタッチで描いています。
- 生きた年代
→1727年~1788年 - 代表作
→グレアム夫人など - なにをした人?
→18世紀のイギリスで活躍したイギリス人画家。フランスのロココ美術に影響を受けた
まとめ
✓享楽的な貴族文化の中で
生まれたロココ美術
✓(上流階級にとって)親しみやすくて
日常的なテーマが好まれた
✓屋外で当世風の衣装で着飾った男女の
集いを描いたものを雅宴画という
次回は新古典主義の美術を解説します。
→装飾的で曲線的
→色彩論争も影響
→代表作はシテール島の巡礼
→新しいジャンルを設立
→静物画や風俗画の需要に応える
→フランス中流階級の日常も描く