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ロココ美術の特徴や代表作を解説【西洋美術史㉒】

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記事の要約
  1. ロココ様式
    →装飾的で曲線的
    →色彩論争も影響
  2. アントワーヌ=ヴァトー
    →代表作はシテール島の巡礼
    →新しいジャンルを設立
  3. ジャン・シメオン・シャルダン
    →静物画や風俗画の需要に応える
    →フランス中流階級の日常も描く

 

ロココとは装飾用語の
ロカイユに由来するもので、
18世紀にヨーロッパで流行した
室内装飾、絵画、工芸、服装に
至る様式をさします。

17世紀にみられていた
布教を目的とした儀式的で、
国王を称える厳格な古典様式とは違う
軽快かつ優美な貴族趣味の様式です。

まずはこの時代の作品の
画像を確認していきましょう。

Palace of Versailles Pilgrimage to the island of Cythera the_swing prayer before meals Mrs. Graham

Antoine Watteau
アントワーヌ・ヴァトー
Jean Honoré Fragonard
ジャン・オノレ・フラゴナール
Jean Simeon Chardin
ジャン・シメオン・シャルダン
Thomas Gainsborough
トマス・ゲインズバラ


美術史年表

盛期バロック⇒1620~1670年代

・ロココ美術⇒1730年頃~

新古典主義⇒18世紀中頃~



ロココ美術の背景

 

rococo art

ルイ14世が1715年に亡くなると、
オルレアン公フィリップ2世が
まだ幼いルイ15世の摂政となり、
時代は享楽的な貴族文化へと変化します。

ルイ16世の時代(1774~1792)には
王権と教会の力は後退し始め、
代わりに貴族と新興上流市民による
軽快で自由奔放なロココ様式が好まれました。

 

poet's inspiration
プッサン「詩人の霊感」

ロココが盛んになった理由の1つに
アカデミー内での色彩論争があります。

色彩論争とは、
アカデミーで理想とする画家は

  • 素描のプッサン
  • 色彩のルーベンス

のどちらにするかという論争です。

結果的にこの論争は
色彩派が勝利を収めます。

このことは、それまでとは
違った表現や解釈を受け入れる風潮
生じたことでもありました。

具体的には以下のことが
変わっていきました。

  • 表現方法
    →厳格さは緩み、彩色は豊かに
    →フランドルやヴェネツィア派の
    彩色が取り入れられた
  • 主題の傾向
    →親しみやすく日常的なもの
    →ただし庶民ではなく、貴族の日常

一方で物語画を優位とする
絵画のヒエラルキーは変わりませんでした。

 

アカデミー/アカデミックな美術とは?

ロココ美術の特徴

 

Palace of Versailles
ヴェルサイユ宮殿 鏡の間

ロココの特徴は室内装飾のロカイユが
由来になっていることからも伺えます。

金色に輝く漆喰に連続するアーチ。
曲線の装飾や湾曲する天井などです。

 

Palace of Versailles
ヴェルサイユ宮殿 王妃の寝室

絵画と装飾が融合したロココ様式は
ヨーロッパで熱狂的な流行を生みました。

それまでの古典的様式との違いは
以下のようになります。

  • 古典様式
    →直線や左右対称
    →安定感のある構造
  • ロココ様式
    →曲線や連続アーチ
    →優美で装飾的

 

The Embarrassing Proposal
ヴァトー「困った申し出」1715‐1716年

絵画においては
主に以下の画家達が活躍しました。

  • アントワーヌ=ヴァトー
  • ジャン=オノレ=フラゴナール
  • ジャン=シメオン=シャルダン
  • トマス・ゲインズバラ(イギリス)

順に解説していきます。

アントワーヌ=ヴァトー

 

Pilgrimage to the island of Cythera
「シテール島の巡礼」1717年

初期のロココ絵画を代表する画家が、
アントワーヌ=ヴァトーです。

ヴァトーは「シテール島の巡礼」で
人々の優雅な身ぶりや軽やかな衣装を表現し、
屋外での男女の語らいを描きました。

ヴァトーはこの作品で
アカデミーへの入会を果たします。
また、ヴァトー入会に際して
雅宴画がえんがという新しいジャンルが
新設されました。

雅宴画とはヴァトーの作品のような
屋外で談笑する当世風の衣装で着飾った男女の
集いを描いたものです。

 

Antoine Watteau
アントワーヌ=ヴァトー
アントワーヌ=ヴァトー
  • 生きた年代
    →1684年~1721年
  • 代表作
    →シテール島の巡礼など
  • なにをした人?
    →初期ロココの代表的な画家で、雅宴画というジャンルを生んだ
  • その他の記事
    シテール島の巡礼を解説

ジャン=オノレ=フラゴナール

 

the_swing
「ぶらんこ」1767年

ジャン=オノレ=フラゴナール
ロココ時代も終盤の1760年から
フランス革命までの30年間に
活躍した画家です。

彼の代表作「ぶらんこ」は
18世紀フランスの軽薄で非道徳的な
貴族社会が描かれています。

今作はブランコに乗る貴婦人の
スカートの中を男性が
下から覗き込むという場面。

右奥に描かれているのは貴婦人の夫で、
若い男性は愛人だとされています。

 

Jean Honoré Fragonard
ジャン=オノレ=フラゴナール
ジャン=オノレ=フラゴナール
  • 生きた年代
    →1732年~1806年
  • 代表作
    →ぶらんこなど
  • なにをした人?
    →18世紀後半のフランスを代表する画家で、ロココ時代の最後を飾った画家

ジャン=シメオン=シャルダン

 

silver goblet and apple
「銀のゴブレットとりんご」1768年頃

18世紀のフランスでは上流市民の中にも
美術愛好家が増えていきました。

するとかつてのオランダのように
知識が必要な絵ではなく、
静物画や風俗画などのわかりやすい絵が
求められるようになりました。

その需要に応えた代表的な画家が
ジャン=シメオン=シャルダンで、
彼はフランスの中流家庭の日常を
描き出しました。

 

prayer before meals
「食前の祈り」1740年

↑作品手前で祈りを唱えている子供は
女の子の格好をしていますが、男の子です。

当時は男児の死亡率が高かったので、
魔除けのような意味合いを込めて
男児に女児の格好をさせることがありました。

 

Jean Simeon Chardin
ジャン・シメオン・シャルダン
ジャン・シメオン・シャルダン
  • 生きた年代
    →1699年~1779年
  • 代表作
    →食前の祈りなど
  • なにをした人?
    →18世紀のフランスで美術愛好家達の要望に応えた画家

トマス・ゲインズバラ

 

Mr and Mrs Andrews
「アンドリューズ夫妻像」1748-49年頃

それまでのイギリスは
イギリス人画家ではなく、
外国人画家が美術の主役でした。

ですが18世紀になると
自国の画家の活躍が見られ始めます。
その1人がトマス・ゲインズバラです。

 

Mrs. Graham
「グレアム夫人」1777年

ゲインズバラは若い頃に
フランスのロココ美術を学び、
肖像画や風景画で才能を発揮しました。

女性の衣装の光沢や軽やかさ、
人物たちの感情の機微などを
繊細なタッチで描いています。

 

Thomas Gainsborough
トマス・ゲインズバラ
トマス・ゲインズバラ
  • 生きた年代
    →1727年~1788年
  • 代表作
    →グレアム夫人など
  • なにをした人?
    →18世紀のイギリスで活躍したイギリス人画家。フランスのロココ美術に影響を受けた

まとめ

 

Pilgrimage to the island of Cythera
まとめ

✓享楽的な貴族文化の中で
生まれたロココ美術

(上流階級にとって)親しみやすくて
日常的なテーマが好まれた

✓屋外で当世風の衣装で着飾った男女の
集いを描いたものを雅宴画という

次回は新古典主義の美術を解説します。

 

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