19世紀中頃、
イギリス・アカデミーに反発し、
ラファエロ以前の美術に回帰することを
掲げた美術グループが誕生しました。
彼らをラファエル前派といい、
当初はロセッティ、ハント、ミレイ
の3人で構成されていました。
まずはこの時代の作品の
画像を確認していきましょう。
✓写実主義
⇒1830年頃~
✓バルビゾン派
⇒1830年頃~
✓ラファエル前派
⇒1850年頃~
ラファエル前派の特徴
この時期のイギリス・アカデミーでは
盛期ルネサンスのラファエロを模範とし、
それ以外の新たな表現を認めない方針でした。
そんなアカデミーに不満を抱いた
ロセッティ、ハント、ミレイの
3人はラファエル前派を結成しました。
ラファエル前派とは、
盛期ルネサンス以前の中世や初期ルネサンス
の美術を模範とし、古典偏重の美術教育に
異を唱える意味が込められています。
そして彼らの作品の特徴は
細部まで丁寧に描かれていることと
鮮やかな色使いにあります。
ロセッティ「ベアタ・ベアトリクス」
こちらはラファエル前派の1人である
ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ
(1828~1882)の作品です。
モデルを務めた女性は妻の
エリザベス・シダルで
ミレイの「オフィーリア」でも
モデルを務めた人物です。
彼の作品は
不思議な美しさを感じさせる
ものが多いですが、
ラファエル前派の3人の中では
最も細密描写が得意ではなかった
といわれています。
こちらはロセッティの受胎告知。
アカデミーの型からは程遠い
作風であることがよくわかります。
ホルマン・ハント「雇われ羊飼い」
こちらはウィリアム・ホルマン・ハント
(1827~1910)の「雇われ羊飼い」です。
ロセッティなどはラファエル前派を結成後、
芸術的方向性をかえたのに対し、
ハントはいつまでも特色を
変えなかったといわれています。
その特色とは
聖書、伝説などに主題を求めることと、
隅々まで徹底的に描き込んだ細密描写です。
彼の細密描写の技術は
作品をみれば明らかですね。
ミレー「オフィーリア」
ラファエル前派で最も有名な作品といえば
ジョン・エヴァレット・ミレー
(1829~1896)のオフィーリアでしょうか。
シェイクスピアのハムレットのヒロイン、
オフィーリアを題材にしたこの作品は
ミレー及びヴィクトリア朝の最高傑作として
名高い作品です。
夏目漱石の「草枕」にも
この作品に言及した箇所があります。
まとめ
✓イギリス・アカデミーに対抗するようにラファエル前派は結成された
✓ラファエロ以前の中世や初期ルネサンスを模範とする
✓細密描写や鮮やかな色使いが特徴
次回は印象主義の美術を解説します。
✓イギリス・アカデミーへの反抗
✓古典偏重の美術教育に異を唱えた
✓鮮やかな色使いと細密描写