18世紀の後半、フランス革命が起こり
それまでの絶対王政と封建制度が
崩壊しました。
理性を重視する啓蒙思想が広まり、
美術では新古典主義という
ギリシャ・ローマを古典とした
復興をめざす芸術運動が盛んになりました。
まずはこの時代の作品の
画像を確認していきましょう。
✓ロココ美術
⇒1730年頃~
✓新古典主義
⇒18世紀中頃~19世紀初頭
✓ロマン主義
⇒18世紀後半~19世紀中頃
新古典主義の特徴
まずはこの時代の出来事について
確認していきます。
重税・物価高騰などの不満を背景に、
市民階級が王朝に対して革命を
起こしました。
これをフランス革命と呼んでいます。
そして1799年、新たに政権を握ったのが
カリスマ的人気を誇った軍人、
ナポレオン・ボナパルト(1769~1821)
でした。
ナポレオンは1804年に皇帝に即位し、
帝政を開始します。
その後フランスでは市民の権利と
財産を保証する制度革命が進み、
近代市民社会の成立を準備していきました。
これら一連の出来事の基盤には、
啓蒙思想という考え方があります。
啓蒙思想とは
あらゆる事象を合理的・客観的に
捉え直していこうとする考え方です。
美術の面では、
ルネサンスの頃と同じように
ギリシャやローマの復興を
試みたことが特徴的です。
カノーヴァと新古典主義彫刻
古典美術の多くは彫刻を通じて
伝えられてきたので、
彫刻の分野は新古典主義の特徴が
色濃い分野でもあります。
アントニオ・カノーヴァ(1757~1822)は
新古典主義を代表する彫刻家です。
代表作「アモルとプシュケ」は
X字にまとめられており、2人の手足が
どの角度からみても綺麗な輪郭を描くように
綿密に計算されています。
また、古代ギリシャ彫刻のように
過度な感情表現を抑制し、
表面を磨き上げることで均整のとれた
理想の人体美を表現しました。
ダヴィッドの歴史画
この時代の代表的な画家に
ジャック=ルイ・ダヴィッド
(1748~1825)がいます。
彼の代表作「ホラティウス兄弟の誓い」は
隣国アルバとの戦いに挑むローマ三兄弟を
描いた作品です。
筒形空間と半円アーチの反復によって
左右対称性を際立たせて、明確な輪郭線や
抑制的な色彩で人物を古代彫刻のように
仕上げています。
ダヴィッドはナポレオンの首席画家も
務めるなど、フランス画壇に大きな
影響力を保ち続けた人物です。
アングルによる新古典主義の継承
1815年に第1次帝政崩壊に伴い、
翌年ダヴィッドはブリュッセルに亡命します。
勢いを失いつつあった新古典主義を支えたのが
ダヴィッドの弟子である
ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル
(1780~1867)でした。
彼は「ルイ13世の誓願」と、
「ホメロス礼賛」によって大成功を収め
フランス画壇に君臨し、
新古典主義の伝統を守り続けました。
新古典主義の建築
パリにあるパンテオンは
新古典主義建築の特徴である
対称性や各部分の比例関係を重視し、
幾何学的形態を組み合わせることで
構造の美を追求しています。
ローマ時代のパンテオンと比較しても
原点を模倣している様子を感じ取れます。
まとめ
✓フランス革命による啓蒙思想の広がりは、再びギリシャやローマの芸術復興に繋がった
✓明確な輪郭線や対称性、古代彫刻のような人体表現が新古典主義絵画の特徴
✓ナポレオンの首席画家としてダヴィッドが活躍、その後は弟子のアングルが伝統を守った
次回はロマン主義の美術を解説します。
✓フランス革命と啓蒙思想
✓ギリシャ・ローマの復興
✓ダヴィッドやアングルの活躍