西洋美術史では1620~1670年頃を
盛期バロック美術と呼んでいます。
この頃のイタリアでは
対抗宗教革命も一段落して、
カトリック教の権威を表現する美術が
目立ち始めました。
まずはこの時代の作品の
画像を確認していきましょう。
・初期バロック⇒1590年代~1620年代
⇩
・盛期バロック⇒1620~1670年代
・スペイン・バロック
・フランス・バロック
・フランドル/オランダ・バロック
目次
イタリア・盛期バロックの背景
教会分裂以後のローマ教皇庁は、
全カトリック世界を統括する権威を掲げ、
それにふさわしい首都ローマの
再整備に着手します。
そして次第にカトリック教の
復権と安定化が行われると、
ローマは壮麗なバロック都市へと
変貌しました。
建築と都市空間は一体として捉えられ、
儀礼や祝祭を演出する劇場空間としての
広場や街路が構想され、
演劇性が溢れる永遠の都が生み出されました。
イタリア・盛期バロック美術は
そんなカトリック教の権威を表現し、
豪華絢爛で装飾的な表現が特徴的です。
イタリア・盛期バロックの特徴
1630年以降の盛期バロック美術は
2つの大きな流れがあります。
1つは、
絵画・彫刻、建築の融合へと向かう
ダイナミックな様式を示す流れ。
総合芸術とも呼ばれています。
この路線の代表として、
- ピエトロ・ダ・コルトーナ
- アンドレア・ボッツォ
- ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ
などがいます。
2つ目に、
古典主義的様式へと向かう流れです。
この路線の代表として、
- ニコラ・プッサン(フランス)
- アンドレア・サッキ
などがいます。
順に解説していきます。
ピエトロ・ダ・コルトーナ
ローマのバルベリーニ宮殿には
コルトーナの壮大な天井装飾があります。
漆喰装飾でできた四隅の柱とその上の
4辺によって5区画に分けられた今作は、
建築的境界を曖昧にする効果があります。
従来のクワドラトゥーラでは
限定された空間を広げようとする
錯覚効果を探求していました。
しかしそこには鑑賞者の空間と画中空間を
連続させるという課題が残っていました。
盛期バロックでは今作のような
漆喰装飾とフレスコ画が一体となった、
よい高度なイリュージョンが確立しました。
- 生きた年代
→1596~1669年 - 代表作
→神の知の勝利など - なにをした人?
→盛期バロックを代表する画家で、バルベリーニ宮殿の天井装飾をしたことで有名
アンドレア・ボッツォ
コルトーナが描いたような天井画は、
その後更に盛り上がりを見せていきます。
↑はアンドレア・ボッツォが手掛けた
「聖イグナティウス・デ・ロヨラの栄光」
という作品で、ローマにある
サンティニャーツィオ聖堂の天井装飾です。
作中端の円蓋部分は角度によって、
あたかも聖堂空間と連続している
かのように見えます。
このようなバロック建築特有の、
描かれた対象が建築物の境界を越えて
はるか上空へ続くような視覚的効果を
イリュージョニズムと呼んだりします。
- 生きた年代
→1642~1709年 - 代表作
→聖イグナティウス・デ・ロヨラの栄光など - なにをした人?
→コルトーナ同様、壮大な天井装飾で有名な画家、建築家
ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ
バロック彫刻の立役者となった
ジャン・ロレンツォ・ベルニーニは、
彫刻と建築を融合させ、
演劇的で神秘的な空間を作った芸術家です。
「聖女テレサの法悦」は、
スペイン出身の16世紀の修道女、
聖女テレサの前に天使が現れて
矢で心臓を貫くという幻視体験が
造形されています。
この聖女テレサの法悦は、
当時カトリック教が特に力を入れた
テーマの1つでもあります。
- 生きた年代
→1598~1680年 - 代表作
→聖女テレサの法悦など - なにをした人?
→バロック時代を代表する彫刻家、建築家。サン・ピエトロ広場など、ローマにある多くの彫刻や建築に携わった巨匠
アンドレア・サッキ
アンドレア・サッキは
コルトーナと同時期の画家であり、
彼と競い合った人物です。
サッキの作品はコルトーナのような
イリュージョンに富んだものではなく、
古典主義的なものです。
↑の作品もコルトーナの天井画同様、
バルベリーニ宮殿に描かれています。
- 生きた年代
→1599~1661年 - 代表作
→神の知恵の寓意など - なにをした人?
→ピエトロ・ダ・コルトーナと同時代の画家で、イリュージョンを抑えた古典主義的作品でコルトーナと競い合った
まとめ
✓イタリアの盛期バロックでは
カトリック教の権威を示す
ダイナミックな作品が制作された
✓建築空間と画中空間を曖昧にした、
イリュージョニズムが確立した
✓ベルニーニは彫刻と建築を融合させ、
神秘的な空間を作った巨匠
次回はスペイン・バロックを解説します。
→カトリック教の権威を表現
→ダイナミックで装飾的
→総合芸術へと向かう流れ
→古典主義的な流れ
→建築空間と画中空間を曖昧に
→天空へと伸びるような表現