今回はゴシックからルネサンスへ
移行する時代の美術を解説します。
平面的な作品から少しずつ脱して、
3次元的、人間性の増した作品が
生まれ出すのが特徴です。
まずはこの時代の作品の
画像を確認していきましょう。
プロトルネサンス美術の特徴
イタリアでは11世紀頃から
各地で都市国家が独立し始めました。
ピサやフィレンツェ、シエナなどです。
14世紀にはフィレンツェが近隣の都市国家を
併合して一大領域国家の首都となります。
そこからルネサンスへと発展するわけですが、
今回はそこに至るまでの軌跡を解説します。
ピエトロ・カヴァリーニ
ローマでは1300年の聖年祭を前に、
初期キリスト教時代にさかのぼる
聖堂の再整備が進められました。
そしてこの事業で古いモザイクや壁画の修復に
あたったのがピエトロ・カヴァッリーニです。
カヴァッリーニは初期キリスト教美術から
古代ローマの伝統を学び、
立体感ある人物やドレイパリー、
空間表現など写実的な画風を追求しました。
そして彼の作品は同時期の
ジョット・ディ・ボンドーネに継承されます。
- 生きた年代
→1250~1330年頃 - 代表作
→最後の審判など - なにをした人?
→古代ローマや初期キリスト教美術を学び、同時代のジョットなどに影響を与えた
チマブーエ
絵画におけるルネサンスの最初の一歩を
踏み出したのがチマブーエです。
↑の作品では体を反らせて、
苦痛にゆがんだキリストが写実的に
表現されています。
チマブーエはフィレンツェで活躍した画家で、
ジョットの師匠とされています。
- 生きた年代
→1240~1302年頃 - 代表作
→荘厳の聖母
→サンタ・トリニタの聖母など - なにをした人?
→写実的な作品を手掛け、ルネサンスへの橋渡しの位置にいる1人
ジョット・ディ・ボンドーネ
神と教会を中心とする中世の時代には
自然や人間性は重視されませんでした。
しかしルネサンスに先駆けて芸術の分野で
人間性を追求したのがフィレンツェ出身の
ジョット・ディ・ボンドーネです。
聖なる世界を象徴的に描いた
中世の伝統に対してジョットは
人間の姿や感覚、3次元的な空間を
捉えようとしました。
そして彼の活動は
フィレンツェ美術の基盤となり、
イタリア各地に伝播していきました。
- 生きた年代
→1267~1337年 - 代表作
→ユダの接吻
→荘厳の聖母など - なにをした人?
→中世の伝統とは違う、人間性や3次元的な空間を表現した。ルネサンスの先駆的存在
フランチェスコ修道会
チマブーエやジョットは
中世の伝統とは違う写実的な絵画を
制作しました。
そしてその背景には13世紀初頭に認可された
フランチェスコ修道会の影響があります。
フランチェスコ修道会は、
キリストの教えを人間的な共感により
理解する宗教革命を推進していました。
宗教の人間化・民衆化のなかで、
美術も抽象的・超越的な表現ではなく
写実的・情動的な表現へと変化したのです。
ドゥッチョ・ディ・ブオニンセーニャ
都市国家の発展に伴って各都市は
競合しながら独自の文化を築いていきます。
中でも商業と金融業で発展したシエナは、
経済面や文化でフィレンツェと競いました。
そのシエナで活躍したのが、
ドゥッチョ・ディ・ブオニンセーニャです。
ドゥッチョのマエスタは
ビザンティンの形式は残しつつも
優美な彩色や装飾性が感じられます。
ドゥッチョもジョット同様、
ルネサンスの橋渡し的存在として
有名な画家です。
- 生きた年代
→1260~1319年 - 代表作
→マエスタなど - なにをした人?
→ビザンティン絵画を基盤としながらも、現実感が増した作品を描いた。シエナ派の祖。
まとめ
✓チマブーエやジョットによって
人間性の増した作品が描かれた
✓写実的な表現の背景には
フランチェスコ修道会の影響があった
✓ドゥッチョはシエナの画家で、
ルネサンスへの橋渡り的存在の1人
次回は初期ルネサンスを解説します。
→13世紀~
→チマブーエやジョットが活躍
→中世の伝統からの脱却
→フランチェスコ修道会の影響