このシリーズでは1つの作品に
隠された時代背景や解釈、
メッセージ性を読み解いていきます。
第5回目はフラ・アンジェリコの
「最後の審判」です。
絵画を通して得た知見が
あなたの心のビタミンになれば
幸いです。
最後の審判を解説
題名
最後の審判
制作者
フラ・アンジェリコ
制作年
1432~1435年
美術史では
初期ルネサンス
寸法
105cm×210cm
種類
木材にテンペラ
所蔵
サン・マルコ美術館
今作は修道士画家、
フラ・アンジェリコによって
1432~1435年に描かれました。
最後の審判はユダヤ教、キリスト教、
イスラム教の3宗教が唱えている
人類最後の日のことです。
キリスト教ではこの最後の日に、
再臨した主イエスが、
あらゆる死者を蘇らせ、裁きを行い、
永遠の命を与えられるもの(天国)と
地獄に落とされるものとを振り分ける
としています。
中央上空に浮かんでいるのがイエスで、
大勢の天使たちに囲まれています。
左側で白い衣を着ているのがマリア、
右側で合掌しているのが聖ヨハネです。
下には蓋が外れている墓があります。
これは死者が蘇ったことを意味します。
天国と地獄
左側には天国に選ばれた人々がいます。
抱き合って喜んだり、祈ったり、
輪を作って歓喜のダンスをする
人々もいます。
奥には2人の人物が光る門の中に
入っていく場面が描かれています。
きっとあの先に天国があるのでしょう。
一方の右側には地獄に落とされる
人々が描かれています。
その中には聖職者っぽい人もいます。
いつの時代も偽善者がいることを
示しているようです。
地獄では鍋で煮られている人や
鬼に食べられている人、
拷問を受けている人など、
責め苦を受けている人々が
描かれています。
キリスト教での右
ところで最後の審判といえば
システィーナ礼拝堂の天井画として
ミケランジェロが描いた作品も有名ですね。
これらには実はある共通点があります。
それはキリストの右が天国で、
キリストの左が地獄であるということ。
フラ・アンジェリコの作品も、
ミケランジェロの作品も
同じような構図になっています。
これは画家が決めているのではなく、
厳密な決まりがあるのです。
右は英語でRight。
これには右だけでなく、
正しいという意味もあります。
聖書では「神の右」という
表現が多用されており、
神を信じる者は常に右側にいる
とされています。
よってキリスト教文化圏では、
右は左よりも上位なのです。
今品中でもイエスは右手を少し挙げていて、
手のひらは上を向けています。
反対に左手は下にあり、
手のひらは地の方を向けています。
ここにも右が天国、左を地獄とする
メッセージが隠されていますね。
他にも頻出のテーマに受胎告知がありますが、
右にキリストを身籠ったマリアを描くことで、
マリアの方が上位であると示しています。
日本ではあまり馴染みがありませんが、
右と左には相当の格差があるようです。
メッセージ性
ここでもう一度
最後の審判を見てみましょう。
中央のイエスを中心に
左右で全く異なる世界観が
描かれています。
天国に行くものたちは
喜びに満ち溢れ、
地獄に落ちる人々には
一切の情け容赦もありません。
ここからあなたは
どんなことを感じますか?
是非、あなたなりのメッセージを
受け取ってください。
まとめ
✓人類最後の日に行われる最後の審判
✓イエスによって天国か地獄かが決まる
✓キリスト文化圏では右は左よりも上位
最後に画家のアンジェリコについて。
15世紀のフィレンツェで活躍した彼は
「天使のような修道士」の異名をもつ
宗教画家でした。
1455年に亡くなりますが、
それから500年以上経った1982年に
ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世によって
福音(ベアト)に列せられ、
ベアト・アンジェリコという名前で
呼ばれるようになります。
ベアトとは聖人の手前の存在を指します。
彼の評判と作品が年百年も後世に
継がれたからからこその功績でしょう。
最後まで読んで頂き、
ありがとうございました。
→人類最後の日のこと
→死者は蘇る
→神の右