オンラインで対話型鑑賞実施中 ▶

ゴシック美術とは?特徴や代表作を解説【西洋美術史⑧】

thumbnail

 

記事の要約
  1. ゴシック美術
    →都市部で発展した
  2. ゴシック建築の特徴
    →フライングバットレス
    →尖頭アーチ
    →人像円柱
    →ステンドグラス
  3. ステンドグラス
    →聖書の内容を記す
    →民衆に教義する役割

 

12世紀から始まるゴシック美術は
都市社会の中で発展しました。

建築技術の発展と共に形成され始め、
いわゆる「大聖堂時代」を迎えていきます。

まずはこの時代の作品の
画像を確認していきましょう。

Saint-Denis Saint-Denis-construction flying buttress human-figure-cylinder rose-window


美術史年表

ロマネスク⇒10世紀末~

・ゴシック⇒12世紀~

プロト・ルネサンス⇒13世紀~



ゴシック美術の特徴

 

Saint-Denis
サン=ドニ大聖堂

ゴシックとはもともと、
「ゴート族による野蛮な様式」
意味する蔑称でした。

これはゴシックの美術感覚が、
ギリシャ・ローマの美術と大きく異なり、
異質なものであったことを示しています。

また、ゴシック美術は一部の都市
流行したのも特徴的です。

  • ロマネスク
    →西欧全域で栄える(人里離れた場所)
  • ゴシック
    →パリを中心とした都市部で発展

 

Saint-Denis-construction

↑はサン=ドニ大聖堂の内部です。

ゴシック建築がロマネスクと違うのは、
聖堂の壁が薄く、天井が高いことです。

また、そうすることで
ステンドグラスをはめ込むことができ、
明るく豪華な飾り立てが可能になりました。

ゴシック建築の特徴は以下の通りです。

  • フライングバットレス
  • 尖頭アーチ
  • 交差リブヴォールト
  • 人像円柱
  • ステンドグラス

順に解説していきます。

フライングバットレス

 

flying buttress
ノートルダムのフライングバットレス

フライング・バットレスとは、
壁の外側からつっかい棒のような梁で、
壁が外に開くのを防ぐものです。

 

flying buttress
ウルムのフライングバットレス

これにより建物をより薄く、高く
することに繋がりました。

尖頭アーチ、交差リブヴォールト

 

Cross-Rib-vault
ウースター大聖堂

尖頭アーチとは支柱間より直径の
大きな2本の円弧を交差させたものです。

これには空間が伸びていくような
上昇感を与える効果があります。

そこにリブ肋骨をつけて構造を
視覚的に強調したのが
交差リブ・ヴォールトです。

 

cross rib vault

これらにより天井を支える力が
アーチ帰結点の4つに集中します。

そうなることで壁面を薄くして
窓を設けることに繋がりました。

人像円柱

 

tympan
ロマネスク時代のタンパン

モニュメンタルな彫刻は
ロマネスク時代に復活しましたが、
まだその時代のものは
建築的枠組みと不可分なものでした。

 

human-figure-cylinder
シャルトル大聖堂の人像円柱(1155年)

ところがゴシック時代には
建築的枠組みから独立した彫刻
が造られ始めます。

↑は発展初期段階のもので
まだ円柱と一体のような感じですが、
ロマネスク時代の浮彫りとも違う
彫刻作品になっています。

 

Reims Cathedral Sculpture
ランス大聖堂

それから約1世紀後に制作された
ランス大聖堂の彫刻は円柱から独立して
台座の上に立っています。

ギリシャ・ローマ彫刻に倣った
コントラポストの姿勢やドレイパリーの
表現も見て取れます。

ステンドグラス

 

rose-window
ノートルダム大聖堂のバラ窓

数々の技術発展を経て、
設けることができたステンドグラスは、
それまでの壁画に変わる絵画芸術の
中心となりました。

 

stained glass

美しいステンド・グラスには
聖書の内容などが記されており、
文字が読めない民衆に教義するための
重要な役割を担っていました。

また、色ガラスを通して差し込む神秘的な光は
神は光なりきと信じた中世の人々にとって、
信者の心を照らす光でもありました。

 

最後にゴシックとロマネスク、
両方の違いをまとめて確認しましょう。

  • ロマネスク
    →厚い石の壁
    →小さな窓
    →半円アーチ
    →彫刻は建築的枠組みの中
  • ゴシック
    →薄くて高い壁
    →大きな窓(ステンドグラス)
    →尖頭アーチ
    →人像円柱(独立した彫刻)

まとめ

 

Saint-Denis
まとめ

✓ゴシック美術はパリを中心とした
都市部で発展した

✓フライングバットレス、尖頭アーチ、
交差リブヴォールトなどにより教会内を
明るく豪華に装飾することが出来た

✓人像円柱など建築的枠組みから
独立した彫刻も生まれた

✓ステンドグラスは字が読めない民衆に
聖書の内容を伝える役割があった

次回はプロトルネサンス
を解説します。

 

thumbnail