この記事では西洋美術史の
原始美術から印象派までを
ざっくりと解説していきます。
大まかな流れの学習・確認に
活用してください。
目次
- 1 西洋美術史をざっくりと解説
- 1.1 原始美術(紀元前30000年頃)
- 1.2 メソポタミア美術(紀元前4000年頃)
- 1.3 ギリシャ美術(紀元前1000年頃)
- 1.4 ローマ美術(紀元前27年頃~)
- 1.5 初期キリスト美術(2世紀末~)
- 1.6 ビザンティン美術(4世紀末~)
- 1.7 プロトルネサンス(13~14世紀)
- 1.8 初期ルネサンス(15世紀)
- 1.9 盛期ルネサンス(1500~1530年)
- 1.10 マニエリスム(16世紀半ば~)
- 1.11 バロック美術(16世紀末~)
- 1.12 ロココ美術(1730年頃~)
- 1.13 新古典主義(18世紀中頃~)
- 1.14 ロマン主義(18世紀後半~)
- 1.15 写実主義(1830年頃~)
- 1.16 印象派(1860年~)
- 2 まとめ
西洋美術史をざっくりと解説

この記事では☆がついている
時代を解説していきます。
- 原始・古代美術(B.C.30000~)
☆原始・古代・エーゲ海美術
☆ギリシャ美術
☆ローマ美術 - 中世美術(2世紀~)
☆初期キリスト教美術
☆ビザンティン美術
初期中世美術
ロマネスク
ゴシック - ルネサンス(13、14世紀~)
☆プロトルネサンス
☆初期ルネサンス
☆盛期ルネサンス
盛期ルネサンス後半(ミケランジェロ)
ヴェネツィア美術
北方ルネサンス①
北方ルネサンス②(ドイツ)
☆マニエリスム - バロック・ロココ(16世紀~)
☆初期バロック
盛期バロック(イタリア)
スペイン・バロック
フランス・バロック
フランドル/オランダ・バロック
☆ロココ - 新古典主義/ロマン主義(18世紀~)
☆新古典主義
☆ロマン主義 - 写実主義/ラファエロ前派(19世紀~)
☆写実主義
ラファエロ前派 - 近代美術(19世紀中頃~)
☆印象派
ポスト印象派
象徴主義
原始美術(紀元前30000年頃)

現存する最古級の絵は
ショーヴェ洞窟の壁画といわれています。
狩猟の時代に、
獲物が捕れることを祈って描かれました。
原始美術の特徴は、
祈りや願いを表現している点です。
メソポタミア美術(紀元前4000年頃)

人類は集団を作り、文明を生みます。
そして文明は他国との争いをも
生み出しました。
↑はメソポタミア文明で生まれた
ナラム・シンの石碑で、
戦争勝利を祝った記念碑です。
この頃から美術は
権力を誇示するツールにもなりました。
- 年代
→紀元前4000年頃 - 場所
→メソポタミア(現在のイラク) - 作られたもの
→彫刻や石像、大型建造物など - 特徴
→権力を誇示するためのもの
ギリシャ美術(紀元前1000年頃)

エーゲ海一帯で生まれたギリシャ文明。
人々は神の存在を信じ、
それはギリシャ神話として
現在まで語り継がれています。
神は人間の姿をしているという思想のもと、
理想的な人間の姿が表現されました。

↑の作品もヴィーナスという愛の女神を
人間の形で表現しています。
また、ギリシャ彫刻で大切なのは
コントラポストという方法を使って
作品に躍動感を与えたことです。
- 年代
→紀元前1000年頃 - 場所
→エーゲ海一帯 - 作られたもの
→彫刻や大型神殿など - 特徴
→神を表現した(理想的な人物像)
ローマ美術(紀元前27年頃~)

紀元前27年頃に誕生したローマ帝国は
地中海一帯を支配しました。
当初ローマ人はギリシャ美術に魅了され、
ギリシャ美術をマネした作品である
ローマン・コピーを大量に制作しました。
しかし帝政が末期になってくると、
ギリシャ美術の神話的な表現は衰退し、
かわりに権力者を誇示するような美術が
栄えていきます。

それまでの彫刻と違うのは
人物がより写実的になり、
精神性などを強調するために
デフォルメされている点です。
↑の皇帝の頭像も、
目が大きくデフォルメされています。
- 年代
→紀元前27年頃~ - 場所
→ローマ帝国(地中海一帯) - 作られたもの
→彫刻や神殿、大型建造物など - 特徴
→誇示するためにデフォルメした
初期キリスト美術(2世紀末~)

キリスト教の美術は
西暦200年頃から始まります。
ローマ帝国が統治する時代、
キリスト教はまだ容認されておらず
迫害を受けていました。
そんな中、信者たちは
弾圧者たちの目を誤魔化すために
あえてキリストを間接的に描きました。

↑の善き羊飼いは、
羊飼いに扮したキリストが羊(信者達)を
導いている場面が描かれています。
その後キリスト教は313年に容認され、
394年に国教化されます。

キリスト教が容認されると、
教会建築が盛んになっていきました。

また、教会建築に伴い内部を装飾する
モザイクや壁画も多く制作されました。
- 年代
→2世紀末~ - 場所
→ローマ帝国(地中海一帯) - 作られたもの
→カタコンベの絵/
(容認後は)教会、モザイクなど - 特
→間接的な表現/
(容認後は)キリストがテーマの壁画
ビザンティン美術(4世紀末~)

この時代は平面的で
動きの感じられない絵が多いです。
キリスト教が普及し始めると、
「神様を人間が描いていいのか…?」
という神学上の矛盾が指摘され始めて、
平面的な絵が増えていきました。
また、それまで栄えていた彫刻などは
3次元的な表現であることから
ほとんど制作されなくなりました。

一方キリスト教の更なる布教のため、
聖堂建設はどんどん進んでいきました。
キリスト教が強い権力を持ち、
非人間的な圧力が強かった中世は
暗黒の時代とも呼ばれ、
1000年ほど続きました。
- 年代
→4世紀末~ - 場所
→東ローマ帝国(ビザンティン帝国) - 作られたもの
→教会、モザイクなど - 特徴
→平面的な絵(彫刻などは破壊)
プロトルネサンス(13~14世紀)

暗黒時代には神と教会が中心で、
自然や人間性は重要視されませんでした。
しかしルネサンスに先駆けて、
芸術分野で人間性を追求したのが
チマブーエやジョットでした。
人物の感情や空間の三次元的な表現は
後世の美術に大きな影響を与えました。
- 年代
→13~14世紀 - 場所
→イタリア - 作られたもの
→テンペラ・フレスコ画など - 特徴
→人間的な感情、三次元的な空間表現 - 有名な芸術家
→チマブーエ、ジョットなど
初期ルネサンス(15世紀)

ルネサンスはイタリアの
フィレンツェから始まります。
遠近法の研究が進み、
画家たちは積極的に絵画に取り入れました。
ルネサンスとはフランス語で
再生を意味しており、
かつてのギリシャ・ローマの文化を
再興しようとする意味が込められています。
かつてのギリシャ・ローマの
古典研究も推し進められ、
人文主義と呼ばれる精神運動が始まります。
教会の権威や神中心の非人間的重圧から解放し、人間性の再興を目指した運動のこと

再び栄えた彫刻では、
ギリシャ神話をテーマにするなど、
芸術は再び人間らしい表現を可能としました。
- 年代
→15世紀 - 場所
→イタリア(フィレンツェ) - 作られたもの
→彫刻やテンペラ・フレスコ画など - 特徴
→ギリシャ・ローマ時代の復興 - 有名な芸術家
→マザッチョ、ドナテッロなど
盛期ルネサンス(1500~1530年)

ルネサンスの3大巨匠が活躍した時代を
盛期ルネサンスと呼びます。
この頃の芸術の中心は
フィレンツェからローマへと
移りました。
遠近法はさらに発展を遂げ、
スフマートや空気遠近法と合わせて
更にリアルな表現が可能となりました。


3大巨匠の活躍により画家や彫刻家は
芸術家という地位を確立しました。
- 年代
→1500~1530年 - 場所
→イタリア(ローマ) - 作られたもの
→彫刻やテンペラ・フレスコ画など - 特徴
→卓越した技術により、画家や彫刻家は芸術家の地位まで高められた - 有名な芸術家
→ダヴィンチ、ラファエロ、ミケランジェロなど
マニエリスム(16世紀半ば~)

16世紀のイタリアは宗教革命や戦争など、
社会的・宗教的にも不安定な時代に入ります。
そんな時代には
ルネサンスのような安定した構図ではなく、
不安感や緊張の伴う作品が
作られるようになりました。

マニエリスムとはイタリア語で
様式や手法を意味するマニエラという
言葉からきています。
自然な比率を無視した極端な長身化や
遠近法の拡張、冷たく鮮やかな色調と
いった特徴があります。
- 年代
→1530年頃~1600年頃まで - 場所
→イタリア全域 - 作られたもの
→絵画や彫刻 - 特徴
→極端な長身化や冷たく鮮やかな色調など - 有名な芸術家
→エル・グレコ、ジュリオ・ロマーノなど
バロック美術(16世紀末~)

バロックはポルトガル語で
歪んだ真珠を意味するバロコが
語源となっています。
この時代は宗教革命が起こり、
カトリックからプロテスタントという
一派が分裂しました。

カトリックでは信者獲得のために、
マニエリスムのような難解で
技巧を凝らした表現ではなく、
- わかりやすく単純で
- 感情に訴えかけるような
- 宗教性や真実らしさが宿る
宗教画が求められました。
それらは主に絵画の中で、
ダイナミックな構図や明暗の強調
としてあらわれました。
- 年代
→16世紀末から18世紀初頭 - 場所
→ヨーロッパの大部分 - 作られたもの
→絵画、彫刻、建築 - 特徴
→ダイナミックな構図や明暗の強調など - 有名な芸術家
→カラヴァッジョ、ルーベンス、カラッチなど
ロココ美術(1730年頃~)

ロココとは小石や貝殻をちりばめた装飾を
意味するロカイユが語源になっています。
フランスではルイ14世が亡くなり、
フィリップ2世が摂政となると、
時代は享楽的な貴族文化へと
変化していきました。

貴族と上流市民によるサロンの文化から
生まれたロココ美術は、
装飾的かつ曲線的で
優雅な美しさが特徴です。
- 年代
→1730年頃~1770年頃 - 場所
→フランスからヨーロッパ各国へ - 作られたもの
→絵画、室内装飾、家具、建築など - 特徴
→装飾的で曲線的、優雅な美しさ - 有名な芸術家
→ヴァトー、フラゴナールなど
新古典主義(18世紀中頃~)

18世紀後半にフランス革命が起こると
それまでの絶対王政と封建制度が
崩壊しました。
それにより享楽的なロココ美術は衰退し、
ギリシャ・ローマを古典として
復興を目指した新古典主義が
新たな芸術思潮となりました。

新古典主義の特徴は、
直線的で左右対称など幾何学的で
秩序だった造形や構図です。
- 年代
→18世紀中頃から19世紀初頭 - 場所
→ローマからヨーロッパ各国へ - 作られたもの
→絵画、彫刻、建築など - 特徴
→直線的、左右対称、幾何学的 - 有名な芸術家
→ダヴィッド、アングルなど
ロマン主義(18世紀後半~)

ナポレオンの敗北と共に
新古典主義が衰退してきた頃、
また新たにロマン主義という
芸術思潮がでてきます。
ロマン主義の特徴は
動きを出した筆致や動的な構図、
歴史上の出来事をテーマにするのではなく
今(時事的な出来事)を描いたことです。

また、この時代は風景画が
生まれたことも特徴的です。
実はそれまでの風景は
理想化して描かれることが普通で
見たままを描くことはありませんでした。
それまで絵画の主流であった
宗教画や神話画ではなく、
風景画などの異なるジャンルが
台頭してきた時代ともいえます。
- 年代
→18世紀末から19世紀前半 - 場所
→ヨーロッパ各国 - 作られたもの
→絵画など - 特徴
→動きのある筆致や構図など - 有名な芸術家
→ドラクロワ、ターナーなど
写実主義(1830年頃~)

19世紀中頃になると、
現実をあるがままに描くことを重視した
写実主義の画家達が誕生します。
その背景には
イギリスから始まった産業革命があり、
経営者と労働者の間に貧富の差が生まれ、
公害などの新しい問題がありました。

写実主義で有名な画家、
ギュスターヴ・クールベは
労働者や農民の生活に強い関心を示し、
産業革命の裏で苦しむ人々を描くことで
社会的な抗議を唱えました。
- 年代
→19世紀中頃~ - 場所
→フランスやイギリス、ロシアなど - 作られたもの
→絵画など - 特徴
→見たまんまを誇張せずに描く - 有名な芸術家
→クールベ、ミレーなど
印象派(1860年~)

印象派とは19世紀の後半に
フランスで発した芸術運動、
もしくはその運動を推進した
グループのことをいいます。
この時代はパリの大改造が行われ、
パリは近代都市へと生まれ変わりました。

印象派の画家達はそんな賑やかで
活気に満ちたパリの姿を屋外で
鮮明に描こうと試みました。
印象派の特徴は以下のものがあります。
- 近代都市パリの風俗画や風景画を描いた
- 屋外で絵を制作した
- パレット上で混色しない
筆触分割の技法を用いた - 1874年からグループ展を開催した

また、この時代は5回にわたって
万国博覧会がパリで開催され
日本美術がヨーロッパに大きな影響を与え、
ジャポニズムと呼ばれる日本ブームが
起こったことでも有名です。
- 年代
→19世紀後半~ - 場所
→主にフランス - 作られたもの
→絵画など - 特徴
→パリの風景画などを筆触分割法で描いた - 有名な芸術家
→モネ、ルノワールなど
まとめ

原始美術(紀元前30000年~)
→生活から生まれた美術。祈りを形に。
メソポタミア美術(紀元前4000年~)
→文明が生まれ、権力者を誇示する美術
ギリシャ美術(紀元前1000年~)
→理想的な人間を表現。彫刻が多い
ローマ美術(紀元前27年頃~)
→彫刻は写実的で、デフォルメされた
初期キリスト美術(2世紀末~)
→迫害を避けるため間接的な表現を使用
ビザンティン美術(4世紀末~)
→キリスト教の権威が強い。平面的な絵
草創期ルネサンス(13~14世紀)
→人間味ある表情や3次元的な空間表現が生まれる
初期ルネサンス(15世紀)
→遠近法発見。ギリシャ・ローマの復興
盛期ルネサンス(1500~1530年)
→3大巨匠の時代。画家は芸術家の領域へ
マニエリスム(16世紀半ば~)
→極端な長身化や冷たく鮮やかな色調
バロック(16世紀末~)
→ダイナミックな構図や明暗の強調
ロココ(1730年~)
→装飾的で曲線的、優雅な美しさ
新古典主義(18世紀中頃~)
→直線的で左右対称、秩序だった構図
ロマン主義(18世紀後半~)
→動的な筆致、時事ネタをテーマに
写実主義(1830年~)
→見たまんまを誇張せずに表現
印象派(1860年~)
→パリの風景を筆触分割で鮮やかに表現
→紀元前30000年頃
→ヨーロッパや東南アジア
→洞窟の壁画や遺跡など
→祈りや願いを表現