西洋美術史をざっくりと解説

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この記事では西洋美術史の
原始美術から印象派までを
ざっくりと解説していきます。

大まかな流れの学習・確認に
活用してください。




西洋美術史をざっくりと解説

 

School of Athens

この記事では☆がついている
時代を解説していきます。

原始美術(紀元前30000年頃)

 

Decorated cave of Pont d’Arc, known as Grotte Chauvet-Pont d’Arc, Ardèche
ショーヴェ洞窟の壁画(ハイエナ)

現存する最古級の絵は
ショーヴェ洞窟の壁画といわれています。

狩猟の時代に、
獲物が捕れることを祈って描かれました。

原始美術の特徴は、
祈りや願いを表現している点です。

 

原始美術
  1. 年代
    紀元前30000年頃
  2. 場所
    ヨーロッパや東南アジア
  3. 作られたもの
    洞窟の壁画や遺跡など
  4. 特徴
    祈りや願いを表現

メソポタミア美術(紀元前4000年頃)

 

Naram Sin
ナラム・シンの石碑

人類は集団を作り、文明を生みます。
そして文明は他国との争いをも
生み出しました。

↑はメソポタミア文明で生まれた
ナラム・シンの石碑で、
戦争勝利を祝った記念碑です。

この頃から美術は
権力を誇示するツールにもなりました。

 

メソポタミア美術
  1. 年代
    紀元前4000年頃
  2. 場所
    メソポタミア(現在のイラク)
  3. 作られたもの
    彫刻や石像、大型建造物など
  4. 特徴
    権力を誇示するためのもの
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ギリシャ美術(紀元前1000年頃)

 

the Parthenon
パルテノン神殿

エーゲ海一帯で生まれたギリシャ文明。
人々は神の存在を信じ、
それはギリシャ神話として
現在まで語り継がれています。

神は人間の姿をしているという思想のもと、
理想的な人間の姿が表現されました。

 

Venus de Milo
ミロのヴィーナス

↑の作品もヴィーナスという愛の女神を
人間の形で表現しています。

また、ギリシャ彫刻で大切なのは
コントラポストという方法を使って
作品に躍動感を与えたことです。

 

ギリシャ美術
  1. 年代
    紀元前1000年頃
  2. 場所
    エーゲ海一帯
  3. 作られたもの
    彫刻や大型神殿など
  4. 特徴
    神を表現した(理想的な人物像)
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ローマ美術(紀元前27年頃~)

 

Augustus of Prima Porta
プリマ・ポルタのアウグストゥス

紀元前27年頃に誕生したローマ帝国は
地中海一帯を支配しました。

当初ローマ人はギリシャ美術に魅了され、
ギリシャ美術をマネした作品である
ローマン・コピーを大量に制作しました。

しかし帝政が末期になってくると、
ギリシャ美術の神話的な表現は衰退し、
かわりに権力者を誇示するような美術
栄えていきます。

 

Constantine I
コンスタンティヌス1世

それまでの彫刻と違うのは
人物がより写実的になり、
精神性などを強調するために
デフォルメされている点です。

↑の皇帝の頭像も、
目が大きくデフォルメされています。

 

ローマ美術
  1. 年代
    紀元前27年頃~
  2. 場所
    ローマ帝国(地中海一帯)
  3. 作られたもの
    彫刻や神殿、大型建造物など
  4. 特徴
    誇示するためにデフォルメした
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初期キリスト美術(2世紀末~)

 

symbol of jesus

キリスト教の美術は
西暦200年頃から始まります。

ローマ帝国が統治する時代、
キリスト教はまだ容認されておらず
迫害を受けていました。

そんな中、信者たちは
弾圧者たちの目を誤魔化すために
あえてキリストを間接的に描きました。

 

the Good Shepherd
善き羊飼い

↑の善き羊飼いは、
羊飼いに扮したキリストが羊(信者達)を
導いている場面が描かれています。

その後キリスト教は313年に容認され、
394年に国教化されます。

 

Basilica of Santa Costanza
サンタ・コスタンツァ聖堂

キリスト教が容認されると、
教会建築が盛んになっていきました。

 

Basilica di Santa Pudenziana
サンタ・プデンツィアーナ聖堂のアプシス

また、教会建築に伴い内部を装飾する
モザイクや壁画も多く制作されました。

 

初期キリスト美術
  1. 年代
    2世紀末~
  2. 場所
    ローマ帝国(地中海一帯)
  3. 作られたもの
    カタコンベの絵/
    (容認後は)教会、モザイクなど

  4. 間接的な表現/
    (容認後は)キリストがテーマの壁画
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ビザンティン美術(4世紀末~)

 

Justinianus I
ユスティニアヌス1世のモザイク画

この時代は平面的で
動きの感じられない絵が多いです。

キリスト教が普及し始めると、
「神様を人間が描いていいのか…?」
という神学上の矛盾が指摘され始めて、
平面的な絵が増えていきました。

また、それまで栄えていた彫刻などは
3次元的な表現であることから
ほとんど制作されなくなりました。

 

Agia Sophia Cathedral
アギア・ソフィア大聖堂

一方キリスト教の更なる布教のため、
聖堂建設はどんどん進んでいきました。

キリスト教が強い権力を持ち、
非人間的な圧力が強かった中世は
暗黒の時代とも呼ばれ、
1000年ほど続きました。

 

ビザンティン美術
  1. 年代
    4世紀末~
  2. 場所
    ローマ帝国(ビザンティン帝国)
  3. 作られたもの
    教会、モザイクなど
  4. 特徴
    平面的な絵(彫刻などは破壊)
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プロトルネサンス(13~14世紀)

 

Kiss of Judas by Giotto
ジョット「ユダの接吻」

暗黒時代には神と教会が中心で、
自然や人間性は重要視されませんでした。

しかしルネサンスに先駆けて、
芸術分野で人間性を追求したのが
チマブーエジョットでした。

人物の感情や空間の三次元的な表現は
後世の美術に大きな影響を与えました。

 

プロトルネサンス術
  1. 年代
    13~14世紀
  2. 場所
    イタリア
  3. 作られたもの
    テンペラ・フレスコ画など
  4. 特徴
    人間的な感情、三次元的な空間表現
  5. 有名な芸術家
    チマブーエ、ジョットなど
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初期ルネサンス(15世紀)

 

holy trinity by Masaccio
マザッチョ「聖三位一体」1427年

ルネサンスはイタリアの
フィレンツェから始まります。

遠近法の研究が進み、
画家たちは積極的に絵画に取り入れました。

ルネサンスとはフランス語で
再生を意味しており、
かつてのギリシャ・ローマの文化を
再興しようとする意味が込められています。

かつてのギリシャ・ローマの
古典研究も推し進められ、
人文主義と呼ばれる精神運動が始まります。

人文主義

教会の権威や神中心の非人間的重圧から解放し、人間性の再興を目指した運動のこと

 

David by Donatello
ドナテッロ「ダヴィデ」

再び栄えた彫刻では、
ギリシャ神話をテーマにするなど、
芸術は再び人間らしい表現を可能としました。

 

初期ルネサンス美術
  1. 年代
    15世紀
  2. 場所
    イタリア(フィレンツェ)
  3. 作られたもの
    彫刻やテンペラ・フレスコ画など
  4. 特徴
    ギリシャ・ローマ時代の復興
  5. 有名な芸術家
    マザッチョ、ドナテッロなど
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盛期ルネサンス(1500~1530年)

 

Last Supper
ダヴィンチ「最後の晩餐」

ルネサンスの3大巨匠が活躍した時代を
盛期ルネサンスと呼びます。

この頃の芸術の中心は
フィレンツェからローマへと
移りました。

遠近法はさらに発展を遂げ、
スフマート空気遠近法と合わせて
更にリアルな表現が可能となりました。

 

Our Lady of the Belvedere
ラファエロ「ベルヴェデーレの聖母」
David by Michelangelo
ミケランジェロ「ダヴィデ」

3大巨匠の活躍により画家や彫刻家は
芸術家という地位を確立しました。

 

盛期ルネサンス美術
  1. 年代
    1500~1530年
  2. 場所
    イタリア(ローマ)
  3. 作られたもの
    彫刻やテンペラ・フレスコ画など
  4. 特徴
    卓越した技術により、画家や彫刻家は芸術家の地位まで高められた
  5. 有名な芸術家
    ダヴィンチ、ラファエロ、ミケランジェロなど
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マニエリスム(16世紀半ば~)

 

受胎告知
エル・グレコ「受胎告知」

16世紀のイタリアは宗教革命や戦争など、
社会的・宗教的にも不安定な時代に入ります。

そんな時代には
ルネサンスのような安定した構図ではなく、
不安感や緊張の伴う作品
作られるようになりました。

 

ヘレネーの陵辱
プリマティッチオ「ヘレネーの陵辱」

マニエリスムとはイタリア語で
様式や手法を意味するマニエラという
言葉からきています。

自然な比率を無視した極端な長身化や
遠近法の拡張、冷たく鮮やかな色調と
いった特徴があります。

 

マニエリスム美術
  1. 年代
    1530年頃~1600年頃まで
  2. 場所
    イタリア全域
  3. 作られたもの
    絵画や彫刻
  4. 特徴
    極端な長身化や冷たく鮮やかな色調など
  5. 有名な芸術家
    エル・グレコ、ジュリオ・ロマーノなど
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バロック美術(16世紀末~)

 

聖マタイの召命
カラヴァッジョ「聖マタイの召命」

バロックはポルトガル語で
歪んだ真珠を意味するバロコが
語源となっています。

この時代は宗教革命が起こり、
カトリックからプロテスタントという
一派が分裂しました。

 

「聖ベルナルドゥスを抱擁するキリスト」
リバルタ「聖ベルナルドゥスを抱擁するキリスト」

カトリックでは信者獲得のために、
マニエリスムのような難解で
技巧を凝らした表現ではなく、

  1. わかりやすく単純で
  2. 感情に訴えかけるような
  3. 宗教性や真実らしさが宿る

宗教画が求められました。

それらは主に絵画の中で、
ダイナミックな構図明暗の強調
としてあらわれました。

 

バロック美術
  1. 年代
    16世紀末から18世紀初頭
  2. 場所
    ヨーロッパの大部分
  3. 作られたもの
    絵画、彫刻、建築
  4. 特徴
    ダイナミックな構図や明暗の強調など
  5. 有名な芸術家
    カラヴァッジョ、ルーベンス、カラッチなど
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ロココ美術(1730年頃~)

 

シテール島への巡礼
アントワーヌ=ヴァトー「シテール島への巡礼」

ロココとは小石や貝殻をちりばめた装飾
意味するロカイユが語源になっています。

フランスではルイ14世が亡くなり、
フィリップ2世が摂政となると、
時代は享楽的な貴族文化へと
変化していきました。

 

ブランコ
フラゴナール「ブランコ」

貴族と上流市民によるサロンの文化から
生まれたロココ美術は、
装飾的かつ曲線的
優雅な美しさが特徴です。

 

ロココ美術
  1. 年代
    1730年頃~1770年頃
  2. 場所
    フランスからヨーロッパ各国へ
  3. 作られたもの
    絵画、室内装飾、家具、建築など
  4. 特徴
    装飾的で曲線的、優雅な美しさ
  5. 有名な芸術家
    ヴァトー、フラゴナールなど
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新古典主義(18世紀中頃~)

 

ホラティウス兄弟の誓い
ダヴィッド「ホラティウス兄弟の誓い」

18世紀後半にフランス革命が起こると
それまでの絶対王政と封建制度が
崩壊しました。

それにより享楽的なロココ美術は衰退し、
ギリシャ・ローマを古典として
復興を目指した新古典主義が
新たな芸術思潮となりました。

 

ホメロス礼賛
アングル「ホメロス礼賛」

新古典主義の特徴は、
直線的で左右対称など幾何学的で
秩序だった造形や構図です。

 

新古典主義
  1. 年代
    18世紀中頃から19世紀初頭
  2. 場所
    ローマからヨーロッパ各国へ
  3. 作られたもの
    絵画、彫刻、建築など
  4. 特徴
    直線的、左右対称、幾何学的
  5. 有名な芸術家
    ダヴィッド、アングルなど
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ロマン主義(18世紀後半~)

 

民衆を導く自由の女神
ドラクロワ「民衆を導く自由の女神」

ナポレオンの敗北と共に
新古典主義が衰退してきた頃、
また新たにロマン主義という
芸術思潮がでてきます。

ロマン主義の特徴は
動きを出した筆致や動的な構図
歴史上の出来事をテーマにするのではなく
今(時事的な出来事)を描いたことです。

 

乾草車
コンスタブル「乾草車」

また、この時代は風景画が
生まれたことも特徴的です。

実はそれまでの風景は
理想化して描かれることが普通で
見たままを描くことはありませんでした。

それまで絵画の主流であった
宗教画や神話画ではなく、
風景画などの異なるジャンルが
台頭してきた時代ともいえます。

 

ロマン主義
  1. 年代
    18世紀末から19世紀前半
  2. 場所
    ヨーロッパ各国
  3. 作られたもの
    絵画など
  4. 特徴
    動きのある筆致や構図など
  5. 有名な芸術家
    ドラクロワ、ターナーなど
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写実主義(1830年頃~)

 

落穂拾い
ミレー「落穂拾い」

19世紀中頃になると、
現実をあるがままに描くことを重視した
写実主義の画家達が誕生します。

その背景には
イギリスから始まった産業革命があり、
経営者と労働者の間に貧富の差が生まれ、
公害などの新しい問題がありました。

 

石割人夫
クールベ「石割人夫」

写実主義で有名な画家、
ギュスターヴ・クールベは
労働者や農民の生活に強い関心を示し、
産業革命の裏で苦しむ人々を描くことで
社会的な抗議を唱えました。

 

写実主義
  1. 年代
    19世紀中頃~
  2. 場所
    フランスやイギリス、ロシアなど
  3. 作られたもの
    絵画など
  4. 特徴
    見たまんまを誇張せずに描く
  5. 有名な芸術家
    クールベ、ミレーなど
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印象派(1860年~)

 

印象・日の出
モネ「印象・日の出」

印象派とは19世紀の後半に
フランスで発した芸術運動、
もしくはその運動を推進した
グループのことをいいます。

この時代はパリの大改造が行われ、
パリは近代都市へと生まれ変わりました。

 

エトワール凱旋門界隈

印象派の画家達はそんな賑やかで
活気に満ちたパリの姿を屋外で
鮮明に描こうと試みました。

印象派の特徴は以下のものがあります。

  1. 近代都市パリの風俗画や風景画を描いた
  2. 屋外で絵を制作した
  3. パレット上で混色しない
    筆触分割の技法を用いた
  4. 1874年からグループ展を開催した

 

ラ・ジャポネーズ
モネ「ラ・ジャポネーズ」

また、この時代は5回にわたって
万国博覧会がパリで開催され
日本美術がヨーロッパに大きな影響を与え、
ジャポニズムと呼ばれる日本ブームが
起こったことでも有名です。

 

印象派
  1. 年代
    19世紀後半~
  2. 場所
    主にフランス
  3. 作られたもの
    絵画など
  4. 特徴
    パリの風景画などを筆触分割法で描いた
  5. 有名な芸術家
    モネ、ルノワールなど
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まとめ

 

まとめ

原始美術(紀元前30000年~)
→生活から生まれた美術。祈りを形に。

メソポタミア美術(紀元前4000年~)
→文明が生まれ、権力者を誇示する美術

ギリシャ美術(紀元前1000年~)
→理想的な人間を表現。彫刻が多い

ローマ美術(紀元前27年頃~)
→彫刻は写実的で、デフォルメされた

初期キリスト美術(2世紀末~)
→迫害を避けるため間接的な表現を使用

ビザンティン美術(4世紀末~)
→キリスト教の権威が強い。平面的な絵

草創期ルネサンス(13~14世紀)
→人間味ある表情や3次元的な空間表現が生まれる

初期ルネサンス(15世紀)
→遠近法発見。ギリシャ・ローマの復興

盛期ルネサンス(1500~1530年)
→3大巨匠の時代。画家は芸術家の領域へ

マニエリスム(16世紀半ば~)
→極端な長身化や冷たく鮮やかな色調

バロック(16世紀末~)
→ダイナミックな構図や明暗の強調

ロココ(1730年~)
→装飾的で曲線的、優雅な美しさ

新古典主義(18世紀中頃~)
→直線的で左右対称、秩序だった構図

ロマン主義(18世紀後半~)
→動的な筆致、時事ネタをテーマに

写実主義(1830年~)
→見たまんまを誇張せずに表現

印象派(1860年~)
→パリの風景を筆触分割で鮮やかに表現