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受胎告知とは?【基本を解説】

 

記事の要約
  1. 受胎告知に登場するのは
    →大天使ガブリエルとマリア
  2. 受胎告知の基本
    →左にガブリエル、右にマリア
  3. 様々なバリエーション
    →テーマは同じでも場面が違う

 

宗教画で頻出するテーマに
受胎告知じゅたいこくちがあります。

新約聖書に書かれている話の1つで、
数多くの画家が描いている
とても重要な場面です。

そこでこの記事では、
受胎告知の基本について
解説していきます。




受胎告知とは?

 

Annunciation
ダヴィンチ「受胎告知」1475‐1485年

受胎告知は新約聖書の1つである、
ルカによる福音書に記されています。

内容は、ナザレにいたマリアの前に
大天使ガブリエルが現れて
キリストを妊娠したことを告げる
というものです。

ちなみにこの時、マリアはまだ処女であり
ヨセフという婚約者もいる状況でした。

ですのでマリアにしてみれば
「本当にありえない」告知なのですが、
描かれ方に多くのバリエーションがあり、
いろんな作品を見比べても面白いです。

まずは受胎告知の描かれ方の基本を
おさえていきましょう。

受胎告知の描かれ方の基本

 

Annunciation by Angelico
フラ・アンジェリコ「受胎告知」1437‐1446年

まず、受胎告知に必ず登場するのが

  • 大天使ガブリエル
  • マリア

です。

大天使というのは天使の階級の1つで、
神と人間との連絡係を務める天使です。

 

Gabriel

天使なので必ず羽が生えた姿で描かれます。

 

Virgin Mary

マリアの方は赤い服に青のマントを
纏っていることが多いです。

理由として、
赤→神の慈愛
青→天の真実
を意味しているからです。

 

Annunciation
ボッティチェリ「チェステッロの受胎告知」1489年

また、必ずではないけど
多く登場するのが

  • 白い百合
  • 鳩(精霊)

です。

 

白い百合の花は
マリアの無垢の象徴とされています。

 

Annunciation
ムリーリョ「受胎告知」1650年

鳩(精霊)はマリアが
精霊の力によって身籠ったことを
示しています。

左と右について

 

Annunciation
マルティーニ「受胎告知(一部)」1333年

受胎告知には構図にも
重要なポイントがあります。

それは左に大天使ガブリエル、
右にマリアが描かれていることです。

その理由にはいくつかあり、

  • キリスト圏では右が上位
  • 左から右へ視線移動

これらが有力かなと考えています。

 

キリスト圏では右が上位

 

まずこちらに関してですが、
英語で右はright。
rightには正しいという意味もあります。

 

last judgment

宗教画に頻出の別テーマに
最後の審判があります。

ここでは上正面にいるキリストからみて
右を天国(鑑賞者からみて左)、
左を地獄(鑑賞者からみて右)としています。

これは他の作品にも共通しており、
やはりキリスト圏では右を上位とする
考え方があるようです。

つまり受胎告知では、
大天使ガブリエルよりも
キリストを身籠ったマリアの方が
上位としています。

最後の審判を解説

 

左から右へ視線移動

 

もう1つ考えられる理由に
横書き文化圏では左→右へ
文字を書くことから、
左から右へ視線移動する作品が多いと
いうものです。

 

実際、ガブリエルがマリアに
掛けた言葉が描かれている作品もあり、
こういう場合は左にガブリエルを配した方が
見やすくなりますね。

 

Annunciation
エル・グレコ「受胎告知」16世紀末

ちなみに数は少ないですが、
左右が逆に描かれた作品もあります。

様々なバリエーション

 

ここからはパターン別に
いろんな受胎告知を見ていきましょう。

  • マリアが気付いていないパターン
  • 天使の登場に驚きパターン
  • 天使の告知に驚きパターン
  • 告知を受け入れたパターン

 

マリアが気付いていないパターン

 

Mérode Altarpiece
カンピン「メロード祭壇画」1427年

↑の中央パネルが受胎告知です。

この作品のマリアは読書に夢中で
ガブリエルの存在に気付いていません。

 

Annunciation
ヤン・デ・ビア「受胎告知」1520年頃

こちらの作品のガブリエルは
宙に浮いている状態で描かれています。
マリアはまだ気付いていない様です。

 

天使の登場に驚きパターン

 

Annunciation
ティントレット「受胎告知」1582‐1587年

次は天使の登場に驚きパターンです。

↑の作品のガブリエルは
かなり勢いのある登場です。
マリアはとても驚いていますね。

 

天使の告知に驚きパターン

 

Annunciation

天使の告知に驚きパターンでは
マリアの表情や身振りに注目です。

神の子(キリスト)を身籠ったなんて
驚くに決まってますよね。

 

Annunciation

ちなみに、
この時代の女性の浮気は姦淫という
死刑に値する重罪でした。

ヨセフという婚約者がいながら
子を身籠ったなんて世間に出回ったら…

いろんな葛藤がマリアにあったでしょう。

 

告知を受け入れたパターン

 

Annunciation

最後は告知を受け入れたパターンです。

手を胸の前で組むポーズは

  • 神への敬虔を示唆するポーズ
  • 心臓と十字架の両方にかけて正直を誓う
  • 祈祷、礼拝のポーズ

などと言われており、
ガブリエルと無言の会話を
しているとされています。

 

Annunciation
フラ・アンジェリコ「コルトーナの受胎告知」1433年

突然のガブリエルの告知に
戸惑いや不安もあったマリアですが、
最後は神の言葉を受け入れるのでした。

まとめ

 

Annunciation
まとめ

大天使ガブリエルがマリアにキリストの妊娠を告げる場面

描かれ方にはルールがある(羽や洋服の色など)

作中のマリアの表情や身振りで状況が違う

今回の記事に掲載した多くが
ルネサンス前後の作品ですが、
近代以降は宗教観が変わっていくのもあり、
受胎告知の描かれ方もまた大きく変わります。

 

受胎告知
ロセッティ「受胎告知」1850年
Annunciation
フェルナン・レジェ「受胎告知」

宗教画のテーマ1つとっても
画家や時代で描かれ方が大きく異なるのは
すごく面白いですね。

最後まで読んで頂き、
ありがとうございました。