第2次世界大戦後のアメリカ美術は
主に抽象表現主義という動向に
代表されます。
抽象表現主義の大まかな特徴は
- 巨大なキャンバス
- 画面に中心がない均一平面
- 絵は芸術家の描画行為の痕跡と考える
などがあります。
まずはこの時代の作品の
画像を確認していきましょう。
・第2次世界大戦⇒1939年~
⇩
・抽象表現主義⇒1946年~
⇩
・ネオ・ダダ⇒1950年代後半~
抽象表現主義の特徴
抽象表現主義の画家たちは
ダダやシュルレアリスムのように
ある特定の主義や様式をもっていた
わけではありません。
しかし少なからず共通点はあり、
その共通点は
- 等身大以上のキャンバスを使った
- 無意識や象徴に関心があった
ことなどがあげられます。
また、この動向を代表する芸術家に
- ジャクソン・ポロック
- マーク・ロスコ
- バーネット・ニューマン
などがいます。
ジャクソン・ポロック
ジャクソン・ポロックは
アクションペインティングという
特殊な技法を使った芸術家です。
ポロックは「なにか」を描くのではなく、
自分の感情や内面をキャンバスにぶつけて、
「結果としてできたもの」を作品としました。
シュルレアリスムのような、
ある種の無意識の探求ともいえます。
近現代のアメリカ美術はヨーロッパに比べて
歴史も浅く、伝統もありませんでしたが、
だからこそ新様式が発展したともいえます。
ポロックは絵画について
次のような言葉を残しています。
絵画とは存在の様態であり、
自己を発見することなのです。
すべてのすぐれた画家は彼自身を
描くのです。
- 生きた年代
→1912~1956年 - 代表作
→Number 31など - なにをした人?
→戦後のアメリカで最も偉大な功績を残した芸術家ともいわれている。アクションペインティングという技法を用いた
バーネット・ニューマン
バーネット・ニューマンは
カラーフィールド・ペインティングの
代表的芸術家です。
カラーフィールド・ペインティングとは
「何が描かれているか分かるもの」を
描いたりはせず、色の少ない大きな色彩の
面で塗りこめるという特徴があります。
ニューマンは非キリスト教や
ネイティブ・アメリカンなどの
文化への関心を経て、
やがて感情や理性を超越するものとしての
「崇高」という命題を獲得したといいます。
- 生きた年代
→1905~1970年 - 代表作
→ワンメント6など - なにをした人?
→抽象表現主義とカラーフィールド・ペインティングの代表的存在
モーリス・ルイス
モーリス・ルイスは
ステイニングと呼ばれる、
下地の施されていないキャンバスに
薄く溶いた絵具を流し込む技法を
展開させた芸術家です。
バーネット・ニューマンの
カラーフィールド・ペインティングの
傾向を受け継いだとも考えられており、
それらの世代の芸術家たちを
ポスト・ペインタリー・アブストラクション
と総称しています。
- 生きた年代
→1912~1962年 - 代表作
→Alpha-Phiなど - なにをした人?
→ポスト・ペインタリー・アブストラクションの代表的な1人
ヨーロッパでの抽象
ルーチョ・フォンタナは
イタリアでの戦後抽象美術を
牽引した人物です。
彫刻家・画家であるフォンタナは
1946年に「白の宣言」を発表して
空間主義という概念を導入します。
そこでは新技術の導入や素材からの解放、
絵画と彫刻の境を取り払うなどの
試みが行われました。
↑は58年頃から開始された
「キャンバスを切り裂くシリーズ」で、
最も革命的な表現かつ偶像破壊的表現
であったとされています。
- 生きた年代
→1899~1968年 - 代表作
→キャンバスを切り裂くシリーズなど - なにをした人?
→戦後のイタリア抽象美術を牽引した人物
イヴ・クライン
フランスのイヴ・クラインは
単色の作品を制作する、
モノクロニズムを代表する芸術家です。
彼は特に青色に惹かれ、
宇宙の神秘的なエネルギーに通じる
最も非物質的で抽象的な色
として重要視しました。
1957年には黄金よりも高貴な青として
インターナショナル・クライン・ブルー
通称IKBと呼ばれる深い青色で
特許を取得しました。
彼はその他にもパフォーマンスや
写真作品を残しています。
- 生きた年代
→1928~1962年 - 代表作
→モノクローム絵画など - なにをした人?
→モノクロニズムを代表するフランスの芸術家。パフォーマンスや合成写真でも有名
まとめ
✓戦後のアメリカでは
抽象表現主義が興った
✓抽象表現主義の特徴は
巨大かつ均一平面的で、
具体的ななにかを描いていないこと
✓戦後のヨーロッパでは
フォンタナやイヴ・クラインが
抽象作品を発表した
→ある特定の主義や様式を
もっていたわけではない
→アクション・ペインティング
→カラーフィールド・ペインティング
→ルーチョ・フォンタナ、
イヴ・クラインらが活躍