このシリーズでは1つの作品に
隠された時代背景や解釈、
メッセージ性を読み解いていきます。
第10回目はカラヴァッジョの
「ホロフェルネスの首を斬るユディト」です。
また、第10回目は特別編として
ゲームに登場する絵画として
紹介・解説していきます。
BIOHAZARDに登場する絵画
今回の作品はカプコンの
超人気シリーズBIOHAZARDより
「biohazard HD REMASTER」に
登場しています。
それがコチラの作品です↓
題名
ホロフェルネスの首を斬るユディト
制作者
ミケランジェロ・メリージ・
ダ・カラヴァッジョ
制作年
1598~1599年
美術史では
初期バロック
寸法
145cm×195cm
種類
油彩
所蔵
国立古典絵画館
バロック美術の先駆者であり、
聖マタイの召命を描いたことでも
有名なカラヴァッジョの作品です。
絵画が登場するシーン
今回の作品が登場するのは
洋館2階の暖炉のある部屋の、
兜のカギを使って入る部屋にあります。
石像と両端から壁が迫ってくる部屋です。
別角度からだとわかりやすいですね。
左側の壁にしっかり絵が掛かっています。
少し画質が悪いですが、
ホロフェルネスの首を斬るユディトです。
(左右は反転していますね)
ホロフェルネスの首を斬るユディト
では、今作は一体どのような
場面を描いたものなのでしょうか。
これは聖書の物語の一場面であり、
第二正典ユーディット記には
ユーディットがアッシリアの将軍である
ホロフェルネスを誘惑し、酔わせ、
剣を取って殺して自身の民に
奉仕したとあります。
ベッドに近づくと、
彼女は彼の頭の毛をつかんだ
また、旧約聖書のユディト記には
ベトリアという町が将軍ホロフェルネスの
率いるアッシリア軍に包囲された際、
町にいた未亡人のユディトという
女性が敵の陣営に乗り込み、
ホロフェルネスを誘惑し、
酔いつぶれた将軍の首を剣で切断した。
という一節があります。
カラヴァッジョはそんな物語の
最も衝撃的なシーンを絵にしました。
ちなみにユディトの右にいる老婆は
彼女の女中のアブラです。
アルテミジアによる同名作品
カラヴァッジョが描いた今作は
後にアルテミジアという
女性画家によっても描かれており、
こちらの作品も有名です。
というのもカラヴァッジョ作よりも
荒々しく、残虐性が増している印象で、
これは画家自身の心情が込められている
と考えられているからです。
彼女は画家としての才能に溢れていましたが、
女性であるがゆえに美術のアカデミズムと
接触することが叶いませんでした。
1612年(一説には1611年)、
彼女の父はアゴスティーノ・タッシとともに、
ローマのとある装飾の仕事に取り掛かります。
父親はアルテミジアにトスカーナ派の
技法を身につけさせるため、
私的にタッシを教師として雇いましたが、
タッシは彼女に虚偽の結婚を
約束した上で性的関係をもちます。
それに激怒した父親はタッシを
強姦者として教会に訴えます。
ところが彼女はその裁判において、
身体検査や取り調べとして
指をいためつける拷問をされるなど、
いわゆるセカンド・レイプを
公からうけることになってしまいました。
最終的にタッシは無罪放免となり、
彼女には売春婦やだらしない女
というレッテルが貼られてしまいます。
アルテミジアが描いた作品には
男性社会に対する彼女の心理が、
ユダヤの女性英雄の姿を借りて
表現されているという見方もあります。
メッセージ性
ゲーム内の内装にも採用された、
衝撃的な場面を描いた今作。
そこには知られざる、
更に衝撃的なエピソードも
隠されていました。
ホロフェルネスの首を斬るユディト。
あなたの目には
今作がどのように写るでしょうか。
是非、あなたなりのメッセージを
受け取ってください。
まとめ
✓未亡人のユディトがホロフェルネスを
誘惑し、酔わせ、斬首する衝撃的場面
✓アルテミジアの作品には男性社会に
対する心理が込められているかも
✓BIOHAZARDにはなぜ今作が…?
カラヴァッジョが描いた今作は
X線検査によりホロフェルネスの
頭部の位置を胴体からわずかに離し、
右に動かしたことが明らかになっています。
3人の人物の顔は画家が感情表現を
習得したことを示しており、
ユデットの表情は決意と嫌悪感が
混ざったものとされています。
最後まで読んで頂き、
ありがとうございました。
→画家の心情が込められている