あなたが青く見えるなら
りんごもうさぎの体も
青くていいんだよ
森まる
この記事では講談社出版の
『ブルーピリオド第1巻』を紹介、徒然と感想を述べたいと思います。
ブルーピリオド 第1巻

第1巻を読んだのはもうかなり前ですが、
読み返してみるとやっぱ面白いなぁと
感じたので感想を記事にしたいと思いました。
(発売日は2017年12月22日)
第1巻のあらすじを簡潔にすると
以下の通りです。
- あるところに高校二年生の主人公、矢口八虎がいました
- ある日、選択授業の美術で「私の好きな風景」を描く課題が出される
- あることをキッカケに美術教員・部員と接触する八虎
- そんな出会いや授業の課題を通して「絵を描く」楽しさに気付く
- 進路選択の時期、それまでの自分の考えと今の自分の本心との間に揺れる八虎…
私の中での第1巻のテーマは、
好きなことに向き合う葛藤(序章)
でしょうか。
序章と付け加えたのは、
主人公の八虎がそれまで考えもしてなかった
「自分にとって楽しいと思えること」
に気付いた段階だからです。
好きなことに向き合い続けることの
葛藤などは今後に描かれる内容ですね。
さて、ここからは私の中での
ポイントを述べていきたいと思います。
矢口八虎について
引用:ブルーピリオド 1 kindle版 No. 3/228
まず主人公の八虎について。
八虎は不良グループと仲が良く、
一緒によく遊んでいるものの
勉強もできて成績優秀な生徒です。
高校生なりに社会から求められるのは
どういった人物なのか、
どのように立ち居振舞えば
(社会の中で)生きていきやすいかを
意識し、実践できる人物です。
そういった意味では、
センスもあって器用な学生といった
ところでしょうか。
現実世界にいればそれなりに
モテそうだなぁと思ったりするのですが、
本作品では恋愛要素が薄く、
八虎が女子にモテるといった描写も
描かれていません。
この辺は漫画にとって不要なテーマを
排除しているのでしょうかね。
引用:ブルーピリオド 1 kindle版 No. 37/228
美術・アートに詳しくない人にとって、
「美術=役に立たないもの」
「美術=一部のセンスのある人のもの」
と思っている人は少なくありません。
また、美術に限らず
自分の好きなことに没頭することと、
社会通念や社会的評価を意識することを
対に感じる人もいるはずです。
その辺のすごくリアルな葛藤や疑問を
八虎が代弁してくれるのは
すごく共感できますし、考えさせられます。
引用:ブルーピリオド 1 kindle版 No. 87/228
八虎の母親もリアルな感じ。
美術に理解があったり、
美大に進むことを了解してくれる
親も多くはないですよね。きっと。
母親はまだ上の場面では
「国立しか無理だから」って意味で
喋っているのですが。
(八虎の第一志望は国立美大になります)
引用:ブルーピリオド 1 kindle版 No. 33/228
美術に出会うまでの八虎って
社会的に無難な生き方とか
社会的に失敗のない人生みたいなのを
選択してきたと思うんです。
そう。失敗のない生き方。
人生や幸せに対する価値観なんて
人それぞれなのでこの点は
賛否両論わかれるところですが、
個人的にブルーピリオドの第1巻が
魅力的なのはこの人生の選択というか
人生観について考えさせられる点です。
そしてきっと多くの社会人読者(私も)が
失敗のない人生に舵をきったでしょう。
自分なりの安定や無難ルートを
とったことでしょう。
マジョリティとマイノリティ。
好きなことに向き合う葛藤、
そして憧れのようなものを
私はこの漫画から感じます。
引用:ブルーピリオド 1 kindle版 No. 93/228
学生の頃にこの漫画を読んでいたら
また違う感じ方だったのでしょうかね。
ひとまず最初のポイント、
主人公の矢口八虎についてでした。
社会通念や社会のレールみたいなものを意識している八虎のキャラ設定だからこそ、社会と美術の関係や好きなことに向き合う葛藤に共感、考えることができる
美術教員・部員との出会い
引用:ブルーピリオド 1 kindle版 No. 51/228
2つ目のポイントは
美術教員・部員との出会いです
私は第1巻での美術教員・部員は
八虎にとって「自分の心に従う考え方」を
提示してくれた存在だと思っています。
繰り返しになりますがそれまでの
八虎は自分の本心というより、
常に周囲と無難な関わりを意識して
生きてきています。
言い換えるならば、自分よりも他人目線。
自分で人生選択をしているようで
誰かの選択に乗っかっただけのような
選択だったわけです。
その点、美術部にいる人は
八虎より「自分目線」を大切に
している人たちです。
引用:ブルーピリオド 1 kindle版 No. 135/228
八虎にとっては自分目線で物事を
考えることはあまり経験のない
ことだったでしょう。
ですので八虎にとって
美術部の人との出会いは
大きなターニングポイントになります。
引用:ブルーピリオド 1 kindle版 No. 91/228
これは八虎がいない時の
不良仲間達の会話。
自分目線ではない、
どこか無気力ともいえる
八虎の生き方をなんとなく友人も
感じていたんですね。
この辺の不良仲間達も含めた
キャラ設定もリアルな感じがしてます。
これまた個人的ですが、
私の感じたキャラ設定(タイプ)の
大きな括りは以下の通り↓
- 矢口八虎
→自分目線より他人目線の生き方 - 美術部の人達
→(八虎と比較して)他人目線より自分目線 - 不良仲間達(各々違いはある)
→そんなこと深く考えないでいれる生き方
ここまで自分目線、他人目線といった
ワードを多用していますが
現実的には不良仲間のように
そこまで深く考えないで生きている人も
たくさんいますよね。
ここもリアルだなと思います。
そしてそんな人から学ぶ・感じる
こともたくさんありますよね。
第1巻以降、
この不良仲間との関わり方にも
変化があるので、面白いです。
自分目線・他人目線という生き方(価値観)の違いが美術部の人との間で存在し、そこの対比や影響を感じられる部分が良い
ベストシーン
引用:ブルーピリオド 1 kindle版 No. 85/228
最後に、私が選ぶ第1巻の
ベストシーンですが、
やはり美術の顧問、佐伯先生との
ワンシーンです。
それまでの自分と違う価値観や生き方に
衝撃と戸惑いを覚える八虎が、
佐伯先生に美大に行く(自分目線で生きる)
ことのメリットを問います。
引用:ブルーピリオド 1 kindle版 No. 105/228
佐伯先生はそこで
そもそも普通の大学なら
食べていける保証がどこにあるのか、
そもそも自由業を選択するなら
どの職種にもリスクがあることなどを
八虎に語り掛けます。
この辺の話は、
特に現代の仕事の本質というか、
VUCAと呼ばれる先行き不透明な
状況に対しても大切な考え方
ですよね。
要は昔と違って、
これをやれば一生安泰みたいな
仕事や生き方なんてものは
存在しておらず、だからこそ
自分目線で生きていくほうが大事
なんじゃないの?
という読者への問いにも感じました。
そしてこの会話の終盤が
私のベストシーンです↓
引用:ブルーピリオド 1 kindle版 No. 109/228
これを初めて読んだときは
30歳手前だったのですが、
すごく胸に刺さった記憶があります。
まさにそれまでの私は
無難に生きていて、失敗じゃないけど
満足もしていない生活でした。
不良仲間のように、
自分の人生について深く考えずに
社会生活を送れる人を羨ましく思っていた
時期でもありました。
そんな状況で読んだこの場面は
私自身も自分目線で生きていくことに
勇気を貰いましたね。
まとめ

✓社会通念と美術の関係、葛藤に共感できる
✓自分目線で生きていく怖さや魅力を考えさせられる
✓美術に詳しくない人ほど読んでほしい一冊
私の中での第1巻のテーマは、
好きなことに向き合う葛藤(序章)
でした。
第1巻には他にも
美大に関する知識や
遠近法など上手に絵を描くための
基礎知識も紹介されています。
また、後半には強烈なメインキャラ
世田介君も登場しますね。
あなたにとっての第1巻は
どのようなものでしたでしょうか。
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✓社会通念と美術との関係
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